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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第一章 テイマー、もふもふフェンリルと出会う
19/90

18 軽食メニューを考えよう

 初日にお客として来てくれたグリーズたちを見ると、この世界では本当にもふもふとの触れ合いがないようだ。

 そこで太一は考えた。


「軽食を用意して、もっと長時間のんびりしてもらえばいいんじゃないか……?」


 と。


 今日ももふもふカフェを開店したが、まだお客さんは来ていない。ということで、太一はキッチンで自分に何ができるだろうかと考えることにした。


 以前は食堂をしていた場所なので、設備は十分。

 ただ、問題は……太一に料理の腕があまりないということだろうか。


「うーん、仕事が忙しかったせいで、飯はカップラーメンかコンビニだったからなぁ……」


 自分で自炊をする時間なんてなかったし、あるなら一分でも長く寝ていたかった。


「あ、TKGならいけるんじゃないか? 最近は専門店だってできたくらいだったし」


 しかし、この世界の人たちは米に生卵をかけて食べたりするだろうか? よくよく考えると、太一はこの世界に来てから米を口にしていない。

 もしかしたら、この地域は米が主流ではないのかもしれないな……と、考える。


 ほかに手軽に作れるものといえば、サンドイッチなどだろうか。

 さすがにパンを焼いて野菜を挟むくらいであれば、太一でも問題なく作ることは可能だ。


「あ、それか買い物スキルでレトルトを購入するのもありか」


 これは太一が社畜時代にとてもお世話になっていたもので、美味しいパスタやカレーなど、いろいろおすすめしたいものがある。

 しかしカフェの軽食といえば、オムライスやナポリタンでは? と、考えてしまう。単に自分が好きということもあるが。


「でも、オムライスは難易度が高すぎるよな……」


 とてもではないが、ふわとろ仕上げにできる気がしない。


「とりあえず、何かいい食材がないか明日の朝にでも街に行ってみるか……」



 ***


 そして翌日、太一はルークと一緒に朝の市場へやってきた。ベリーラビットたちは店でいい子にお留守番だ。


 市場は街の南西にあり、店から街の南門を抜ければ比較的すぐに行くことができる。

 採れたての野菜や卵が多く並び、肉や川魚も並んでいる。焼き立てのパンや食べ物の屋台も出ていて、朝食をとっている人もいるみたいだ。

 しかし残念ながら、米を売っている店はない。


(お米はお使いスキルを使って、神様にお願いしよう)


 野菜や肉などは、大量に必要という訳でもないので、毎朝ここで仕入れれば問題ないだろう。


『タイチ、腹が減った。あそこで肉焼きを買おう』

「え!? まあ、俺も減ってるし……買うか」


 ということで、二本ずつ肉焼きを買ってすぐ横のベンチに座って食べる。

 太一が一口かぶりつくと、中からじゅわあっと肉汁が溢れ出た。とても柔らかい肉で、口の中で溶けてしまいそうだ。


「ん~! うまい!」

『こら太一! 俺にも食わせろ』

「もちろん」


 太一が肉焼きをルークの前に持って行くと、美味しそうにかぶりついた。上手に肉から串を外し、頬ばっている。


『んむ、まあまあだな!』

「まあまあなのか……」


(普通に美味いと思うけど、ルークは美食家なのか?)


『お前が作った飯の方が上手いからな! またドラゴンステーキも作ってくれ』

「――! わ、わかった」


 いつもツンツンしているルークから不意打ちのように褒められて、太一に動揺が走る。

 しかしそう言ってもらえたのだから、盛大に料理スキルを使ってフルコースを! と、気合が入る。


(あ、どうせ魔法の鞄があるんだから……食材をいろいろ買ってしまっておけばいいんじゃないか?)


 そうすれば、材料を探して四苦八苦することも減るかもしれない。

 太一がそんな計画を立てていると、「可愛いわんちゃんね!」と声をかけられた。


「こんにちは! 私はヒメリ。ねえ、この子はあなたの従魔なの?」


 そう言って話しかけてきたのは、とても可愛い女の子だった。


(高校生くらいの年齢……かな?)


 異世界といわんばかりの、可愛らしいピンクの髪。それを小さなお団子にして、リボンのヘアアクセサリーを付けている。

 服装はローブなので、きっと魔法系の冒険者なのだろう。

 ぱっちりとした黄色の瞳は、太一とルークのことをじっと見つめている。


「うん。俺はテイマーの太一。こっちは相棒のルークだ」

「そうなんだ! よろしくね、タイチ、ルーク。ねえ、触ってみてもいい?」

「ルーク、いいか?」

『……嫌だ』


(おっと……)


 可愛い女の子が触りたいと言っているのに断るとは……! 太一は軽い衝撃を受けつつも、種族が違うせいもあるかもしれないと考える。


(どっちかっていうと、フェンリルの雌にもてた方がルークも嬉しいだろうしな……)


 ちなみに、太一はフェンリルの雌にもてたらめちゃくちゃ嬉しい自信がある。もふもふを堪能できて、最高だ。


 太一とルークのやり取りを見ていたヒメリが、どこか不安そうな顔をする。


「もしかして、触らない方がよさそう?」

「あー……ルークは人に触られるのが苦手みたいで。ごめん」

「うぅん。従魔は気難しい子もいるって、聞いたことがあるから」


 残念だけどあきらめるというヒメリに、太一はそれならばとある提案をする。


「よかったら、俺のやってるもふもふカフェにこない? ルークは無理だけど、ベリーラビットがいるんだ。触れ合えたら、きっと楽しいと思う」

「もふもふカフェ……?」


 ヒメリはぱちくりと目を瞬いた。

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