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異世界もふもふカフェ  作者: ぷにちゃん
第一章 テイマー、もふもふフェンリルと出会う
17/90

16 カフェを開店しました!

『それはもう嫌だ!!』

「だからって、綺麗にしなきゃ駄目だろ」


 朝、太一は裏庭の井戸の前で、ルークと攻防を繰り広げていた。それは体を洗う、洗わない問題だ。

 ルークは森で生活していたこともあってか、石鹸で体を洗われるのを嫌う。太一と出会う前は、度々水浴びをしていたらしいけれど……。


『みっ』

『みみ~』

「お前たちは偉いな~」


 ベリーラビットはルークと違い、大人しくその体を洗わせてくれている。それを見たルークが、『ぐぬぬ……』と唸った。どうやら、ベリーラビットにできて自分にできないことが悔しいらしい。

 ちゃんと洗わせてくれた。


「……今はいいけど、冬になったら水洗いってわけにはいかないよな」


 この世界のお風呂事情は、あまりよろしくない。風呂があるのはお金持ちだけで、庶民は布で体を拭ったりすることが多い。

 かくいう太一も、テイマーギルドの宿泊施設ではお湯と布を借りて汚れを落としていた。


 太一は裏庭を見回し、多少ならスペースを使っても問題ないだろうと判断する。


「離れのお風呂を【創造(物理)】!」


 すると、すぐに小さな小屋ができあがった。


『なんだ、それは?』

『みみ?』

『み~』

「めちゃくちゃいいものだよ」


 ルークたちを引き連れてドアを開けると、簡易脱衣所になっている。浴室に行くと、広めの浴槽が用意されている。その横には、浅めに作られた魔物用の浴槽。

 太一の創造で作ったからなのか、きちんと蛇口も設置されている。


(……どこに繋がってるんだろう?)


 さすがに配管までは想像できなかったが、水……もといお湯はちゃんと出るんだろうか?

 おそるおそる蛇口をひねると、お湯が出てきた。


「仕組みは……いや、考えるのはやめよう」


 きっと猫の神様の力でどうにかなっているに違いない。


『む、お湯が出たのか? 何をするつもりだ』

「これはお風呂だよ。すごく気持ちいいから、入ってみたらどうだ?」

『……水ではなくお湯なのか』


 ルークはどこか興味津々にしているが、今一歩勇気がでないのか足を踏み出せないでいるようだ。

 その横で、なんの問題もないと言わんばかりにベリーラビットたちがお風呂の中に飛び込んでいった。


『みっ!?』

『み~っ!』


 どうやら気持ちよかったようで、一〇匹ともにはしゃいでいるようだ。


『こら! 先輩の俺より先に入るとは何事か!!』


 負けられないと思ったのか、すぐさまルークもお湯の中に飛び込んだ。その意気込みを先ほども見せてほしかったものだ。


『むむっ! これは……はあぁぁ』


 思いのほか気持ちよかったようで、ルークはふにゃりと顔をとろけさせた。いつものキリッとしている孤高のフェンリルはもうどこにもいない。


『なるほど、これはなかなかいいな! やはり、俺のような崇高なるフェンリルに冷たい水など似合わなかったのだ』


 気づけば頭にタオルを載せて、お風呂を堪能している。


「気に入ってくれてよかったよ」

『んむ。お前は変な奴だが、これはなかなかにいいぞ! 毎日俺のために用意しておくように!』

「はいはい」


 どうやら、本当にお気に入りになってしまったようだ。


(井戸で体を洗うのはあんなに拒否してたくせに)


 笑いながら、せっかくだしと太一も隣の湯舟につかることにした。


「はあ、気持ちいい……」


 今はまだ朝の九時頃なので、お風呂に入ったあとにもふもふカフェをオープンする予定だ。

 開店初日なので、上手く行くかはわからないけれど……別に売り上げ目標があるわけではない。のんびり、癒しの空間を作れればそれでいい。そう、太一は思っている。



 ***



「よーし! マシュマロ、お前がベリーラビットたちのリーダーだ。しっかりやってくれよ」

『みっ!』


 太一がお願いすると、マシュマロは嬉しそうに飛び跳ねた。正確な意思疎通はできないけれど、言いたいことはちゃんとわかってくれるらしい。


「お客さんが来たら、一緒に遊んでくれ。もちろん、嫌だったら自分たちの好きなようにしていていいよ」


 もふもふたちは、気まぐれでいい。無理に愛想よくしろなんて、太一は言うつもりはない。


 創造のスキルでカフェのエプロンを作り、いざ開店だ。




 ――と、意気込んだものの……数時間経過したがまったくお客さんがくる気配はない。


(まあ、告知も何もしてないからな……)


 商業ギルドで届け出をしたので、新店舗として知らせがでているだろうが、それくらいだ。

 こんなことなら、軌道に乗ってから……なんて考えず、シャルティにオープン日をちゃんと伝えておけばよかったなと思う。

 太一は猫の神様のおかげで比較的楽にもふもふカフェオープンにこぎつけたが、普通だったらもっと時間がかかる。


「悩んでも仕方ない。ここは郊外だし、ちょっとずつお客さんが増えることに期待しよう!」


 ということで、今日は太一がもふもふされて癒されることにする。

 そして気づく――もしや、これはもふもふカフェを自分が貸し切っていればいいのでは? と。

 そう考えてしまえば、あとはもうただただ楽しい天国だ。


 しかしそれも、終わりを告げる。

 夕方に差し掛かったころ、冒険者のパーティが初めてのお客様としてやってきた。

感想ありがとうございます!

確かに洗ってないなと思って、お風呂つくりました~

フクロウは個人的にはもふもふでいい気がします。ふわふわ~

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