出会い
「ここは…どこ…?」
目が覚めると、知らない土地にいた
見渡す限り青々とした草原
その中に私はいた
「確か…私は…」
そう、私は『死んだはず』だ
小さい頃から病院で過ごす毎日、外で遊ぶことなんて許されなかった、やることと言えば勉強ぐらいで、友達もいない
そんな人生が19年も続いてようやく、『死』と言う形で終わりを迎えられた
はずだった
「段々思い出してきた…」
明るく暖かい場所で目を覚ました私は、ここが天国なのかと思っていた
実際目の前に綺麗な女性がいたら誰だってそう思う
「目が覚めましたか?」
「あ、はい…ここは天国ですか?」
「いいえ、違います。ここは女神の間、様々な人を異世界へと送る場所です」
「???」
理解が出来なかった
異世界?女神?小説の中でしか存在しない物があると?
「ですが、色んな方々が様々な異世界を救っているせいか、危機が迫っている世界が無いのです。ですので、貴女には貴女の望む物を与え、貴女の望みが叶う世界に送ろうと思います」
私の事など意に介さず、女神は続けた
「どうです?健康的な体なんて、欲しくないですか?」
「確かに欲しいけど…いきなり異世界だとか言われても、何をしたいのか分からないし…そもそも私の望みなんて、あの病室から抜け出して、外を見てみたい、ぐらいだし」
「では、歴史はありますが、地図がなく、自由に旅が出来る世界なんてどうでしょう?」
…夢を思い出した、青々とした草原をただただ走り回る夢を
「いいかも」
ボソリと呟いてみた、自分でもなんて言ったのか分からないぐらいの小さい声、それでも、女神には十分聴こえてたらしい
「では、決まりですね。多少脳が揺れますが安心してください、すぐに収まりますので」
「え、待って、まだ心の準備が」
……思い出して、少し目眩がした
正直まだ、信じきれてない
異世界だの、女神だの、いきなり信じられる方が頭がおかしいんだ
「でも、体が軽い」
自分の体だ、どういう状態なのか、自分が1番理解している
小さい頃から蝕んできた病はもうない、今の私は、歳頃の女の子と同じ体だ
「でも、これからどうしよう」
途方に暮れる
右も左も分からない世界で、どうしろと言うのだ
「でも、このまま風に吹かれながら寝そべってるのも良いかも」
夢にまで見た光景、シチュエーション、こればっかりは感謝せねばなるまい
そんな事を思っていると頭の方から声が聞こえた
「そんな所で寝てると風邪引いちゃうよ?」
声の方に目を向ける
そこに居たのは、黒いローブに身を包み、小さな鞄を背負い、瑠璃色の瞳とキラキラ輝く太陽のような髪をなびかせていた少女がいた
これが私と旅人の魔女『クィーン』との出会い