序章3
夢の中で俺は走馬灯のように小さい時からの記憶が蘇った。
先程の経験もきっと夢なのに夢の中でまた夢を見るとはおかしな話だ。
まぁそんなことはさておき、俺の名前は北乃しずり。幼い時から女の子のような名前が嫌で何度も親に文句を言った経験がある。俺の親友は俺の名前を嫌がってる理由が分からないと言ってたな。確かに今思えば両親が付けてくれた大切な名前なのに本当に親不孝だ。
親友の影響もあってか、小中高ととにかく俺は真面目に勉強に励んだ。同時にドラマの影響もあってあの時はひたすら医者を目指してたんだ。まぁ、結局行けなかったけど。
目当ての医者になれずに妥協して薬学の道に進んだ俺は勉強に身が入らずネトゲ三昧。卒業は出来たけどその後国試で失敗して現在絶賛浪人中だ。まわりが卒業して就職出来ているのに国試落ちで取り残されたときの絶望は未だに忘れられない。高い学費を払ってくれて失敗しても応援してくれている両親には謝っても謝りきれない。
まぁ、結局俺は駄目人間ってわけ。
ふと、
〝人生何が起きるか分からない。今日死ぬかもしれないし100年生きるかもしれない。だから頑張ろう。〟
とずっと仲がよかった親友の言葉を思い出した。その言葉がさっきからずっと脳内で反響し続けている。
とまぁ割と最近の記憶から懐かしい記憶まで思い出したところで目が覚めた。
「ふぁぁ!」
大きく伸びをして体を起こす。
ん?
「え?」
目をぱちくりさせゴシゴシ擦ってみせる。そしてゆっくり瞼を開けてみる。
はい、綺麗な銀世界!
待て待て待て、これさっきの続きかよ!
じゃまた氷作れちゃったりしてと冗談で念じたら・・・作れました。
その瞬間あの言葉が脳裏をよぎる。
「今日死ぬかもしれないし、100年生きるかもしれない。」
呪文のように口に出してみる。まさか・・・と唾を飲み込みほっぺを叩いてみる。なるほど痛いみはある様だ。
(てことは、ここ死後の世界?)
これが夢だとしたら、夢の中で夢を見るし、夢の中で再度目覚めるしで腑に落ちない。
それならここは死後の世界と考えるのが自然なのではないか、と混乱している俺は根拠もないのに何故かそう思って自分を納得させた。
天国か地獄か分からないけど、それを確かめる為にも今は遠くに見えるあの街を目指そう。それに魔術のような力は使えるようだし獣が出たっておそらく問題ないはず。
「そうと決まればさっさと行こう!」
こんな誰もいないところにいても不安が残るばかりだし、ひたすらに街を目指して駆け抜けていった。