オレの来世は黒歴史忍者っ!!
どうか緩い感じで読んでください。
オレは地球の日本という国にいたどこにでもいるような、平々凡々な人生を歩んでいた一人のサラリーマンだった────そうあの日が来るまでは・・・
それは、一瞬の出来事だった
オレは、いつものように仕事が終わり家路についていた
ところが、信号を渡っているとトラックが横からオレに向かって突っ込んできた
───キッキィィィ!!!!ドンッ!───
その時、運悪く耳にイヤホンをしながら爆音でスマホゲームをやり込んでいた
もちろんトラックが自分に突っ込んだことには空中に投げ飛ばされてから気づくことになった
そして、瞬時にオレは悟ったのだ
『あっ、これオレ死んだわ・・・・』
そこで、オレの回想は終わり今に至る
「えー、こんにちは、初めまして!私はあなたたちが言うところの神ですっ!ようこそ死後の世界へ!」
『なんか、オレの前に超絶イタイ感じの奴がいるんだけど・・・』
「あ、今あなた私のことイタイ奴だと思ったでしょっ!もう~、激オコぷんぷん丸だぞっ~!」
そう言って自称神は自身の頭に両拳をあてて怒りを表現していた
『美人な神様(笑)なのにもったいないな~』
オレは心の中で神とやらの反応を評価した
「とりあえず、ジャンピング土下座しまっす!」
そう宣言した後、本当にキレイなジャンピング土下座をかましてくれた
「今回は誠にすみませんでしたぁぁ!!実は、私の不手際で回収するはずの魂と誤ってあなたの魂を回収してしまいましたっ!」
この時点でオレは最初に自称神が言っていたことを思い出した
「・・・・・・・」
オレはそこで初めて自分が人生を強制終了させられたことを実感した
しょぼんと沈んだ気持ちのオレとは対照的に自称神は元気に言葉を続けた
「な・の・で、あなたには転生していただきまっす!」
「えっ・・・?」
その言葉に間抜けな声と顔をしたオレは一瞬理解できなかった
『てんせい?天声?転生ィィィ!?まじで!?あの巷で有名な!?』
オレはいわゆる隠れオタクで、転生ものもよく読んだが、実際に自分の身に起こればそれとは信じることができなかった
心の中で歓喜の嵐が吹き荒れていたがそんなことはお構いなしに神様─本物だと今認識した─は更なる情報を提示した
「それで、こちらの手違いではありますが、残念ながら地球に転生は無理なんですぅ~。そこでなんですが、何か希望の世界とかってありますかぁ~?」
そう聞かれ、オレは一も二もなく即答した
「剣と魔法の世界がいいですっ!」
そう言うと神様は立ち上がり、アルカイックスマイルになった
「ふっ、最近多いんですよね~、その要望・・・まあ、いいでしょう!それでは次にスキルですね!何がいいですか?」
一瞬イタイ神様が不穏な気配を纏ったように見えたが、それは幻覚だったらしい・・・
『スキルか・・・うーん・・・・・・あっ、そうだ!あれがいい!』
思い付いた瞬間ニヤリと思わず笑ってしまった
それを見て神様も何かを感じとったのか、焦ったような表情をした
「何ですか、その笑顔・・・ヤバイやつはやめてくださいね?偉大なる神にもできることとできないことがあるんですからぁ」
「いや、簡単だ。なんせオレが望むスキルは─────」
「あいつが出たぞっ!黒の破壊者だっ!全員一旦退避~!!」
屋敷を警備していた兵士がそう高らかに叫んだ
「ハハハハ~!今日もお前たちに悪夢を見せてやろう!!」
「やっ、やめてくれ~!こっちに来るなっ!!ぐふぅっ!」
そう叫びながら気絶し、最後の一人が倒れた
そして、残ったのは丸々と肥えた腹をタプタプさせながら部屋の隅っこで怯えている領主一人だった
「なーに、今回はお前が税金をちょろまかしてるとか、婚約者のいる娘に手を出してキズものにしたとかそういった事をこの世に晒すわけじゃない。ただ、お前が社会的に死ぬだけだ。それじゃあ、行ってみよう!スキル発動!!」
「ひぃぃぃっ!それだけはっ!それだけはお許しくださいっ!」
男が懇願していたが、オレは構わず続けた
男からのお願いほど聞く価値はないとオレの中の辞書が告げている
「お前の黒歴史は!・・・・・昔、学園に通っていた頃女子更衣室に忍び込み、好きな女の子の下着を盗んだ挙げ句、あろうことかそれを自分で着用して一人授業中興奮していたなっ!」
「ななななっ、何を言っているんだ!わ、私はそ、そんなことはしていない!!」
そう言うと懇願していた男は開き直り、逆ギレしてきた
しかし、どもっているため否定の言葉を言っているにもかかわらず、まるで肯定しているように聞こえる
「はいはい、そんなこと言ったってネタは上がっているんだぜ、領主様?」
「な、なんだと?」
「なんと!ここにあるのはその時の映像です!その女の子にあんたがこんなことやってましたってこれをプレゼントてもいいのか?確か、その女の子って今は王妃様やってるよな?」
そう言ってオレはその映像を目の前の男に見せてやった
「っ!な、何が望みだ・・・・」
「簡単だよ、お前が犯した罪を洗いざらい世間様にお前自身の言葉で告白することだ」
「なっ・・・・・そ、そんなことできるわけないだろう!」
「じゃあ、これは王妃様に今からお届けしてくるわ、じゃあな!」
そう目の前の男に告げてゆっくりと歩を進めた
3歩目ぐらいで後ろから声がかけられた
「まっ、待ってくれ・・・・わかった、その条件を飲もう・・・・」
「そうか、そうか、そう言ってくれるのを待っていたよ!舞台はそうだな・・・3日後に開催される王宮舞踏会でっ!」
それから、この場を去ろうとしたが、いきなり男が襲ってきた
しかし、オレはそれを予測していたので余裕で返り討ちにした
「まったく、これだから小物は・・・・全員同じことをしやがる」
静かな夜に戻った部屋では一人の男が佇み、独り言を呟くのだった
その時、遠くから警笛の音が聞こえてきたが、構わずにオレは呟き続ける
「それに、誰だよ!あんな名前付けたのは!この格好は忍者だってぇの!・・・まあ、こっちの世界でそれを言うと変な目で見られるから仕方ねぇけど・・・・・はぁ、あいつが来る前に帰ろう」
その呟きは誰の耳にも届かず、一瞬で姿が消えた
その直後、部屋には騎士が雪崩込んできた
「くそっ!また逃げられた」
そう悪態をついたのは騎士達を取りまとめる隊長だった
この時代では珍しい女性の騎士だった
「次こそは必ず捕まえてみせるぞっ!黒の破壊者っ!!」
「ふぅ、今日もいいことしたわ~」
そう呟き黒の破壊者改めクリストファー・ロード・フォレストは自分の屋敷にある部屋に戻ってきた
そこに、オレに声をかける人物がいた
「お帰りなさいませ、坊ちゃま」
「ああ、今戻った。カイル、もうそろそろ坊ちゃまはやめてくれないか?」
「失礼いたしました。しかし、私にとってはいつまででもかわいい坊ちゃまなのですよ」
表情を一切変えずに淡々と言葉を紡ぐ男はおれの屋敷の執事長カイル・アクアだ
こいつは、年齢不詳・経歴不詳・プライベート不詳の謎が多い男だ
ある日、オレがこちらに転生してから3年がたった時ぐらいに親父に連れられ、オレの側付きになった
「今日も無事のご帰宅でようございました。こちら、本日中に見ていただきたい書類となっておりますのでご確認ください。」
「わかった。もう今日は下がっていいぞ。」
オレは書類を受け取り、カイルに業務の終了を告げた
「承知いたしました。何かございましたらお申し付けください。」
「ああ」
カイルが一礼してから出ていくと、椅子の背もたれに寄りかかり、ぼーっとした
「こっちに転生してからもう20年か・・・・」
あの時、オレが希望したスキルは今日も大活躍だった
「何ですか、その笑顔・・・ヤバイやつはやめてくださいね?偉大なる神にもできることとできないことがあるんですからぁ」
「いや、簡単だ。なんせオレが望むスキルは、人の恥ずかしい、墓まで持っていきたいというような黒歴史を知るというやつを頼む!」
そう言って、神様はじとっとした目をオレに向けた
「何ですか、その嫌がらせのようなスキルは・・・でも、不可能ではありません。いいでしょう!この可愛くて素晴らしく偉大な私がそのスキルを与えます!」
「はぁ、どうも」
最後までイタイ神様はイタイままだったが、要望は聞いてくれるらしい
「それではっ!良い転生を~!」
すると、オレの意識が段々と薄らいできたが、最後に神様は一言オレに爆弾を投じた
「そうそう、お詫び特典として色々セットにしておきましたので、楽しんでくださいね~!」
『ちょっと待て!なんだその特典って!?この神様が言うと不安だっ!!』
そこでオレの意識は完全に途切れた
転生すると、オレはクィンス王国にある公爵家の嫡男として産まれた
オレの今世での親父は、なんと現国王の弟なんだとか
つまり、オレも王族というわけだ
王族は名前にロードが付く
そして、王位継承権ももれなくついてくる
オレは前世でサラリーマンとして家と会社の往復の日々でゆっくりすることが出来なかった
なので、今回はゆっくり畑でも耕す農民になりたかった
『くそっ、あのイタイ神様もう、略してイタ神だっ!特典ってこう言うことかよ!?余計なことしやがって!しかも嫡男!責任から逃げられねぇ』
そんなこんなで無事に公爵位を継いで今に至る
しかも特典はそれだけでは無かった
魔法の全適性や公爵家だけあって顔はイケメン、文字は習ってもいないのに読めるというチートだった
『オレはのんびりスローライフがしたいんだよ!だから、あのスキルを選んだのに!』
そう、オレのスキル「人生の禁忌」はどんな奴にもある黒歴史を暴き、オレに害をなそうとする奴を排除するために考え付いたものだ
農村などでは地域の人間関係が濃密なため、これを駆使して農村で不当な扱いを受けないようにと思い、これを選んだ
イタ神のせいでオレの幼少期は字が読めないふりをしたり、同年代のやつと同じぐらいの学力をキープし、誘拐されることもしばしばあった
そんな血の滲むような努力と、誘拐犯からの逃亡劇を繰り広げているうちに体力がつき、魔法の才も大いに開花してしまった
最終的にはチートのような存在となってしまい、周りの大人に隠すのが大変だった
そして、極めつけは今のオレの婚約者であるアリシア・バーニングである
彼女は伯爵家の令嬢であるにも関わらず、騎士になり、今ではオレがストレス発散&前世で憧れていたということで始めた正義の忍者─断じて黒の破壊者という名前ではない─を逮捕する部隊の隊長に抜擢されていた
それともうひとつ悩みの種があり、彼女にはオレのスキルが通用しないということだ
それはつまり、黒歴史というものが無いということだ
はじめ、彼女にスキルを使った時、何の映像もオレの中には流れてこず、不思議に思いイタ神特典の一つである「鑑定」を使ってみてもなにもオレのスキルに対抗できるようなスキルが無かった
結果、オレが出した答えは彼女には暴かれて恥ずかしい経験が一切無いことがわかった
「まったく、オレの人生設定盛り過ぎだろ・・・・」
そう呟きながら、オレは頭の中であのイタ神がテヘペロしているのが浮かんだ
「あぁ~!オレはただスローライフしながら憧れの忍者をしたいだけなのにっ!」
その叫びは誰にも届かず、夜の空気に溶けていった────
ここまで読んでいただきありがとうございました!
続きが気になるという声が多ければ連載しようと思います
皆さんも黒歴史の一つや二つあると思います
無い人は大変自分に正直に純粋な人生を送っていますね!
それではまた機会があればお会いしましょう!




