学園09 学年代表選抜トーナメント
今日は学園トーナメント。
学年別の代表を選抜する試合の日だ。
今回からは2対2の戦いとなる。
僕のクラスである一組からは、クラス優勝の僕と、準優勝のオゥグスが代表選手に選ばれた。
「色々あったけど、水に流して頑張ろう」
僕は握手をしようとオゥグスに手を差し出した。
けれど彼は僕の手をパシッと払いのける。
「……ちっ、タックのくせに生意気言いやがって」
オゥグスの態度が悪い。
クラス選抜でカエルみたいに気絶させられたことを、まだ根に持っているのだろうか。
でもここはぐっと我慢するしかない。
なにせトーナメントにはメロの命がかかっているのだから、なんとか彼と協力してやっていくしかないのだ。
正直オゥグスとのタッグは不安だ。
それでも絶対に、勝ちぬかなければならない。
「……とにかく、頑張ろうね」
「…………ふん」
メロの病気のタイムリミットまであと約20日。
学園全体の決勝トーナメントが行われるのは15日後。
この機会を逃せば、もう僕にはメロを救う手立てが残されていない。
一年生トーナメントは、全部で8クラスの争いだ。
つまり3回勝てば、一年生の代表として次のトーナメントに出場することが出来る。
僕とオゥグスとのコンビは2回勝ち抜いて、なんとか一年生トーナメントの決勝まで駒を進めていた。
決勝の相手クラスの選手を鑑定する。
ワーヅカ
レベル:18(上限29)
スキル:剣術、氷結、冷静沈着
イッカズゥ
レベル:11(上限21)
スキル:盾術、回避
強い。
特にワーヅカが強敵だ。
だがこちらの戦力は僕のレベルが37で、オゥグスが12。
(大丈夫。落ち着いてやれば、勝てる!)
「はじめッ!」
試合が開始された。
「アイスエッジ!」
早速ワーヅカが氷の魔法を撃ってくる。
氷の刃で敵を切り裂く強烈な魔法である。
効果的な奇襲戦法。
氷の魔法には炎の魔法だ。
オゥグスならファイアボールを放てる。
だが試合開始直後の急襲に、注意散漫な彼は反応できていない。
仕方がないので、反発覚悟で指示を出してやる。
「オゥグス! 迎撃しろ!」
「う、うっせえ! 俺に指図するんじゃねえよ!」
オゥグスがやっと迎撃に動き出した。
これでいい。
彼がワーヅカを抑えている間に、僕は先にイッカズゥを倒してしまおう。
そうしたら僕とオゥグスの二人掛かりで、強敵のワーヅカを相手取ることが出来る。
「やああああッ!!」
剣を振ってイッカズゥに飛び掛かった。
大上段から振り下ろした僕の鋭い剣が、彼に襲い掛かる。
(決まった!)
だが振り下ろした僕の剣は、スカッと空を切った。
回避動作に入ると、イッカズゥの動きが目に見えて良くなったのだ。
「なに――ッ!?」
どうしてかわされた?
タイミングはバッチリだった筈だ。
「そうか! 『回避』のスキルか!」
やはりスキルの力は大きい。
いまのタイミングで僕の攻撃をよけるなんて!
でもネタが割れればどうということはない。
次はもっと慎重に、かわされないように攻撃するだけだ。
「次の一撃で、決める!」
再び僕は剣を構えて、イッカズゥと対峙した。
「ぐわああぁぁッ!!」
そのとき悲鳴が聞こえてきた。
僕は背後を振り向く。
するともうオゥグスが、ワーヅカにやられてしまっていた。
あっという間だ。
まったく少しの時間稼ぎも出来ていない。
「オゥグス! 足を引っ張るな!」
僕は負ける訳にはいかないんだ!
ワーヅカとイッカズゥが前後を挟みながら、距離を詰めてくる。
オゥグスがやられて2対1になってしまった。
「へへ……。タック、覚悟はいいか?」
「待て、イッカズゥ。弱いものいじめはするな。……おい、タック。降参するなら許してやるぞ?」
ワーヅカはきっといい奴なんだろう。
多分本当に僕の身を心配して忠告をしてきている。
クラスは違うけど、友達になれるかもしれない。
けど、彼はひとつ勘違いをしている。
「……弱いものいじめ? それはどっちの話なんだ?」
今まで僕は相手を怪我させないように、無意識に力をセーブしていた。
でもこれは負ける訳にはいかない戦いだ。
「ここからは本気でいくぞ! 弱いものいじめをするのは嫌だから、せいぜい抗ってくれ!」
力を解放する。
まずは先ほど僕の攻撃をかわしてみせたイッカズゥからだ。
「そら! 今度もかわせるか!」
さっきと同じように飛び掛かって剣を振る。
でも本気を出した僕のスピードは、さっきとは大違いだ。
「なッ!?」
イッカズゥは今度は攻撃をよけられずに、盾で防ごうとした。
けど僕は力を込めて、盾ごと彼を吹き飛ばす。
「ぎゃぁああーー!!」
「なんだと!? く……ッ、アイスエッジ!!」
間髪入れずにワーヅカが魔法を放ってきた。
いい判断だ。
きっと彼は将来良い戦士になるだろう。
だから今日の敗北を糧にして、また立ち上がって欲しい。
そんな想いを込めながら、僕も魔法を放った。
「……サンダーボルト」
手先から迸った稲妻が、氷の魔法を打ち破った。
電撃は微塵も勢いを衰えさせずに、彼に襲い掛かる。
「ぐあああぁぁあッ!!」
直撃た。
感電した彼は、手から剣をカランと取り落とした。
ワーヅカが崩れ落ちようとする。
「さ、さすがだ、タック。……俺の、負け……だ」
「うん。でも、君も強かったよ」
僕は駆け寄って、倒れる前の彼の体を抱きとめた。
「しょ、勝者! 一組!!」
オゥグスが早々にやられ、たったひとりの戦いになってしまったハンデを跳ね返して、僕は学年別選抜トーナメントを制覇した。
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