表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/45

学園09 学年代表選抜トーナメント

 今日は学園トーナメント。

 学年別の代表を選抜する試合の日だ。


 今回からは2対2の戦いとなる。

 僕のクラスである一組からは、クラス優勝の僕と、準優勝のオゥグスが代表選手に選ばれた。


「色々あったけど、水に流して頑張ろう」


 僕は握手をしようとオゥグスに手を差し出した。

 けれど彼は僕の手をパシッと払いのける。


「……ちっ、タックのくせに生意気言いやがって」


 オゥグスの態度が悪い。

 クラス選抜でカエルみたいに気絶させられたことを、まだ根に持っているのだろうか。


 でもここはぐっと我慢するしかない。

 なにせトーナメントにはメロの命がかかっているのだから、なんとか彼と協力してやっていくしかないのだ。


 正直オゥグスとのタッグは不安だ。

 それでも絶対に、勝ちぬかなければならない。


「……とにかく、頑張ろうね」

「…………ふん」


 メロの病気のタイムリミットまであと約20日。

 学園全体の決勝トーナメントが行われるのは15日後。


 この機会を逃せば、もう僕にはメロを救う手立てが残されていない。




 一年生トーナメントは、全部で8クラスの争いだ。

 つまり3回勝てば、一年生の代表として次のトーナメントに出場することが出来る。


 僕とオゥグスとのコンビは2回勝ち抜いて、なんとか一年生トーナメントの決勝まで駒を進めていた。

 決勝の相手クラスの選手を鑑定する。


 ワーヅカ

 レベル:18(上限29)

 スキル:剣術、氷結、冷静沈着


 イッカズゥ

 レベル:11(上限21)

 スキル:盾術、回避


 強い。

 特にワーヅカが強敵だ。

 だがこちらの戦力は僕のレベルが37で、オゥグスが12。


(大丈夫。落ち着いてやれば、勝てる!)


「はじめッ!」


 試合が開始された。


「アイスエッジ!」


 早速ワーヅカが氷の魔法を撃ってくる。

 氷の刃で敵を切り裂く強烈な魔法である。

 効果的な奇襲戦法。


 氷の魔法には炎の魔法だ。

 オゥグスならファイアボールを放てる。

 だが試合開始直後の急襲に、注意散漫な彼は反応できていない。

 仕方がないので、反発覚悟で指示を出してやる。


「オゥグス! 迎撃しろ!」

「う、うっせえ! 俺に指図するんじゃねえよ!」


 オゥグスがやっと迎撃に動き出した。

 これでいい。

 彼がワーヅカを抑えている間に、僕は先にイッカズゥを倒してしまおう。

 そうしたら僕とオゥグスの二人掛かりで、強敵のワーヅカを相手取ることが出来る。


「やああああッ!!」


 剣を振ってイッカズゥに飛び掛かった。

 大上段から振り下ろした僕の鋭い剣が、彼に襲い掛かる。


(決まった!)


 だが振り下ろした僕の剣は、スカッと空を切った。

 回避動作に入ると、イッカズゥの動きが目に見えて良くなったのだ。


「なに――ッ!?」


 どうしてかわされた?

 タイミングはバッチリだった筈だ。


「そうか! 『回避』のスキルか!」


 やはりスキルの力は大きい。

 いまのタイミングで僕の攻撃をよけるなんて!


 でもネタが割れればどうということはない。

 次はもっと慎重に、かわされないように攻撃するだけだ。


「次の一撃で、決める!」


 再び僕は剣を構えて、イッカズゥと対峙した。


「ぐわああぁぁッ!!」


 そのとき悲鳴が聞こえてきた。


 僕は背後を振り向く。

 するともうオゥグスが、ワーヅカにやられてしまっていた。

 あっという間だ。

 まったく少しの時間稼ぎも出来ていない。


「オゥグス! 足を引っ張るな!」


 僕は負ける訳にはいかないんだ!




 ワーヅカとイッカズゥが前後を挟みながら、距離を詰めてくる。

 オゥグスがやられて2対1になってしまった。


「へへ……。タック、覚悟はいいか?」

「待て、イッカズゥ。弱いものいじめはするな。……おい、タック。降参するなら許してやるぞ?」


 ワーヅカはきっといい奴なんだろう。

 多分本当に僕の身を心配して忠告をしてきている。

 クラスは違うけど、友達になれるかもしれない。

 けど、彼はひとつ勘違いをしている。


「……弱いものいじめ? それはどっちの話なんだ?」


 今まで僕は相手を怪我させないように、無意識に力をセーブしていた。

 でもこれは負ける訳にはいかない戦いだ。


「ここからは本気でいくぞ! 弱いものいじめをするのは嫌だから、せいぜい(あらが)ってくれ!」


 力を解放する。

 まずは先ほど僕の攻撃をかわしてみせたイッカズゥからだ。


「そら! 今度もかわせるか!」


 さっきと同じように飛び掛かって剣を振る。

 でも本気を出した僕のスピードは、さっきとは大違いだ。


「なッ!?」


 イッカズゥは今度は攻撃をよけられずに、盾で防ごうとした。

 けど僕は力を込めて、盾ごと彼を吹き飛ばす。


「ぎゃぁああーー!!」

「なんだと!? く……ッ、アイスエッジ!!」


 間髪入れずにワーヅカが魔法を放ってきた。

 いい判断だ。

 きっと彼は将来良い戦士になるだろう。

 だから今日の敗北を糧にして、また立ち上がって欲しい。

 そんな想いを込めながら、僕も魔法を放った。


「……サンダーボルト」


 手先から迸った稲妻が、氷の魔法を打ち破った。

 電撃は微塵も勢いを衰えさせずに、彼に襲い掛かる。


「ぐあああぁぁあッ!!」


 直撃た。

 感電した彼は、手から剣をカランと取り落とした。

 ワーヅカが崩れ落ちようとする。


「さ、さすがだ、タック。……俺の、負け……だ」

「うん。でも、君も強かったよ」


 僕は駆け寄って、倒れる前の彼の体を抱きとめた。


「しょ、勝者! 一組!!」


 オゥグスが早々にやられ、たったひとりの戦いになってしまったハンデを跳ね返して、僕は学年別選抜トーナメントを制覇した。


次は18時の投稿を予定しています!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ