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学園06 学園トーナメント開始

 ついにこの日がやってきた。

 今日は学園トーナメントのクラス選抜の日だ。


 クラス選抜は出場選手16名のトーナメント。

 優勝と準優勝のふたりが、次のステージである学年選抜に駒を進めることができる。


「えぃやああーッ!」


 鋭く剣を振る。

 僕は特訓の成果を発揮して、同級生たちをバッタバッタと倒していく。


「な、なんだと!? あのタックがこんなに強かったなんて!?」

「ま、参った! 降参だ! お前には敵わないよ、タック!」


 同級生たちは僕の強さにびっくりしているみたいだ。

 でもこれでも手加減してるんだけどなぁ……。

 逆に僕は彼らの弱さに驚いていた。

 レベルアップした僕からすれば、彼らの振るう剣や魔法なんて、まるで問題にならなかったのだ。


「凄い……。タックって、こんなに強かったのね」


 イーリィがキラキラとした目で僕の活躍を見守っている。


 侯爵令嬢イーリアス・エーイティ。

 優しい彼女は僕たち一年生のアイドル的存在だ。

 そんな彼女に熱い視線を向けられたら、ちょっと恥ずかしくなってしまう。


(よし! いいところを見せるぞ!)


 僕は気合を入れ直して、対戦相手をバッタバッタと倒して回った。




 決勝に進出した。

 相手はあの伯爵家の跡取りオゥグス・ラアキヒだった。

 いつも僕をいじめてくる相手である。


「やっぱり君が、決勝の相手なんだね」

「くくく。雑魚のタックのくせに、決勝まで上がってくるとはなぁ」


 オゥグスは僕を見下してくる。

 やっぱりいけ好かないヤツだ!


(あ、そうだ!)


 鑑定してみよう!


 オゥグス・ラアキヒ

 レベル:11(上限30)

 スキル:杖術、火炎


 なんだ。

 全然大したことがない。

 僕はホッと胸を撫で下ろした。


 レベルアップする前の僕なら到底かなわないし、ほかのヤツらが平均してレベル8くらいだから、たしかにオゥグスは強い。


 でも僕はもっと強い!

 なんてったって、僕はレベル37なんだ。

 スキルだって沢山持ってる。


(ねえ『叡智』。僕がオゥグスに負ける確率はどのくらい?)


《負けません。必ず勝ちます》


 断言されてしまった。

 ちょっとびっくりしてしまったけど、叡智も太鼓判を押してくれている。

 よし、闘うぞ!


「なんだ、なんだ! 黙りこくっちまいやがって!」


 オゥグスの太鼓持ちのネマムが野次を飛ばしてくる。


「ぶるってんじゃねーぞ!」

「さっさと始めろー!」

「はっはー! 公開処刑だー!」


 ネマムに便乗して、ほかのクラスメイトまで野次ってきた。


「お願いタック! 負けてもいいから、無事に試合を終わらせて!」


 やっぱりイーリィだけは優しい。

 クラスのみんなとは大違いだよ。


(よし! イーリィにいいところを見せなくちゃ!)


 僕だってやればできるんだ!




「覚悟はすんだか? ではいくぜ!」


 オゥグスが炎の魔法を飛ばしてきた。


「はッ!」


 僕は飛んできた炎を剣で斬り裂く。


「なにぃッ!?」


 オゥグスは驚いた。

 でもすぐに気を取り直して、何発も炎の魔法を撃ってくる。

 驚いても直ぐに気を引き締め直すなんて、やっぱりオゥグスは戦い慣れている。


「死ねえ! ファイアボール、ファイアボール、ファイアボール、ファイアボール!」


 立て続けに4発ものファイアボールを放ってきた。

 なかなかやってくれる!

 でも僕は冷静に剣を振って、そのことごとくを斬り裂いていく。


「ば、馬鹿なぁッ!?」


 オゥグスが驚いている。


「今度は僕の番だね?」


 近づいて剣を振る。

 彼は手にした杖を振り回して、なんとか僕の攻撃を防いだ。

 でも剣と杖がぶつかった衝撃で、オゥグスは派手に吹っ飛んで尻餅をつく。


「お、お前いつのまにそんなに強くなったんだ!?」

「……僕だって、いつまでもやられてばかりじゃないんだよ?」


 剣をかわして分かった。

 オゥグスでは僕に敵わない。


 あのライトニングウルフとの死闘を思い出して、拍子抜けしてしまう。

 こんなヤツにいじめられていた自分が、バカみたいだ。


 僕に敵わないということが理解できたのか。

 オゥグスが這いつくばって逃げようとする。

 いつも威張り散らしているのに、無様な姿だ。


「こんな……こんな、魔法も使えない村人風情に……この俺さまがッ!!」


 あぁ、そうか。

 まだ彼は僕が魔法を使えることを知らないんだ。


「魔法? 魔法なら使えるよ?」

「ふ、ふん! ハッタリはよせ!」

「ハッタリかどうかは、自分の体で試すといいよ!」


 意識を体の内側にむけた。

 そこから魔力を引っ張りだしてくる。

 イメージして引き出した魔力を雷に変えた。


「いけ! サンダーボルト!」


 指先が痺れるような感覚と一緒に、電撃が解き放たれた。

 ビカビカと明滅しながら、雷撃がオゥグスを襲う。


「あば、あばばばばばばばばばばぁぁああッ!!」


 オゥグスは無様な悲鳴をあげた。

 カエルみたいにお腹を上にしてひっくり返っている。


「ははは! なんだい、その格好!」

「あばばば、許して……。ゆ゛る゛じで……」


 許しを乞うオゥグスの姿を見下ろして、僕はあることに気付いた。

 これ以上やってはいけない。

 ここから先は弱いものイジメだ。

 そんな事をしては、僕はオゥグスと同じになってしまう。


「いいよ! 僕は君と違って優しいからね! 許してあげる!」


 雷撃を止めた。

 オゥグスはビクビクと痙攣して気を失った。


「しょ、勝者! タック!!」


 クラス中がどよめいている。

 僕の真の実力に目を丸くているみたいだ。


 こうして僕はクラス選抜の優勝者になった。


次の更新は明日の8時を予定しています!

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