学園01 神の恩寵
初日は18時、21時、0時の投稿です。
よろしくお願いします。
――ああ、私の愛しいタック。
あなたに……。
あなたに、このスキルを授けます。
私の愛しいタック。
健やかに。
あらゆる幸福があなたに訪れんことを。
目を覚ますとベッドに寝かされていた。
僕の名前はタック。
学園都市ショウ・セッカにある全寮制の魔法学園の生徒だ。
年は12歳。
この学園には裕福な子供が多い。
貴族の子供や大商人の子供が、たくさんいるからだ。
でも僕の実家は村の村長。
村ではえらそうに出来ても、この学園では最底辺である。
あと一応入学は出来たけど、僕は魔法が使えない。
そんな理由で僕は虐めにあっていた。
無視されたり、教科書を隠されたり……。
「おら! やっと気が付いたのか!」
「相変わらずドジでノロマだな、タック!」
虐めっ子どもが近付いてきた。
ラアキヒ伯爵家の跡取り息子オゥグスと、その取り巻きで商人の息子のネマムだ。
「そういえば……」
今日は体育の授業でオゥグスに後ろから魔法を撃たれて、気絶したんだった。
彼はいつもそうやって僕を虐めてくる。
「おいタック! 教師には言うんじゃねーぜ!」
「そうそう! お前が勝手に気絶しただけだからな!」
彼らはそう念を押して部屋を出て行った。
僕は寝かされていたベッドから起き上がって部屋を見回す。
どうやら保健室に寝かされていたようだ。
僕は小さな頃から剣士として育てられた。
魔法系のスキルはなかったけど、剣術のスキルがあったからだ。
スキルには様々なものがある。
例えば『腕力上昇』とか『火炎』とかいう具合だ。
子供たちは12歳になると学園に入学して、生まれ持ったスキルを磨きながら将来の進路を決めたりする。
まぁ学園に通うのはお金がかかるから、家がお金持ちじゃないと無理だけど。
僕の家は村長だからギリギリで通えるレベルだ。
学園は魔法が使えるとエリート扱いされるけど、別にお金さえ払えば魔法が使えなくても入学できる。
魔法が使えない生徒も割といる。
(えっと……ステータス、ステータス)
自分のステータスを確認するために、意識を集中してみた。
ぼやんと脳裏にスキルが浮かんでくる。
名前:タック
レベル:4(上限無限大)
スキル:剣術Lv1、神の恩寵
うん。
いつも通りだ――ッて、え?!
いまなんかあった。
もう一度意識を集中する。
剣術。
うん、ここまではいい。
でも、……『神の恩寵』!?
それにレベル上限が無限大って!?
なんだこれ!
こんなスキル見たことも聞いたこともない!
僕は更に意識を集中してスキルの詳細を調べる。
神の恩寵:
神に愛されたものだけに与えられる、この世界でたったひとつのスキル。
『成長速度16倍』『スキル吸収』『スキル合成』『スキル授与』『スキル進化』『スキルレベル解放』『レベル上限解放』『鑑定』『隠蔽』『叡智』『超幸運』の複合スキル。
目を疑った。
何だろうこれは?
無茶苦茶な壊れスキルじゃないか!
呆然としていると保健室のドアが開いて、女の子が入ってきた。
「大丈夫、タック?」
顔を見せたのはイーリィだった。
相変わらず美少女だ。
エーイティ侯爵家のご令嬢イーリアス・エーイティ。
綺麗な金髪の、超がつくような美少女である。
彼女は腰まで伸ばした髪を、丁寧に編み込んでいる。
その髪がツヤツヤと光を反射して美しい。
美しさと可憐さの両方を併せ持つ少女。
それがイーリアス・エーイティなのである。
イーリィの瞳は吸い込まれそうな碧色だ。
彼女はその瞳で、僕を心配そうに眺めてきた。
「ね? どこも怪我していない?」
「う、うん! 大丈夫だよイーリィ!」
「本当に? また虐められたんでしょう? なんなら私から先生に――」
「ほ、ほんとに大丈夫だから!」
彼女は僕みたいな虐められっ子にも優しい。
見た目も性格も良くて、一年生のアイドル的存在なのだ。
「心配だわ……。ねぇタック。今度の学園トーナメントの代表決定戦も、辞退したほうがいいんじゃないかしら?」
イーリィが心配してくれている。
学園トーナメント。
それは毎年一回の恒例の行事で、誰がこの魔法学園ロ・ナウで一番強いかを決めるトーナメントだ。
もう何日かしたら開催されることになっている。
まずはクラス代表を決めるトーナメントがある。
「うん。最初はそうしようと思ってたんだけど……」
「なら!」
「でも、やっぱり出てみようかなぁって」
僕のクラスにはオゥグスがいる。
あいつはあんな嫌なヤツだけど、実力は本物だ。
うちのクラスの代表はオゥグスになるだろうと言うのが、大方の見解である。
でも……。
僕はさっき見つけたスキルを思い出した。
――『神の恩寵』。
これがあれば何とかなるかもしれない。
「怪我しちゃうわよ、タック!」
「……かもしれないね。でも、試したいことがあるんだ」
僕はイーリィに笑顔を見せた。