番外編二
今回は、たけるが体験してきたことを描きました。
注意事項:過激な表現、悲壮な表現などの悲しい事が書かれています。苦手な方はブラウザバックをおすすめします。
番外編二
〜たける視点〜
━━━きよみから告白された日の夜...
相変わらず、たけるはゲームをしていた。
しかし、その顔は少し赤くなっていた。
(...はぁ、まさかコクられるとは...ってか俺、めっちゃハズい事言っちまった...まあ、あの子がキレイだっていうのは本当だと思う)
今のたけるの中では、ゲーム三割、きよみ七割と言った所だろうか。
そういったところで、たけるはゲームをやめ、ベッドに横になり、目をつぶって何か考え始めた。
(今日は、あの子から出かけようと誘われたんだよな。暇だったから応じた訳だけど、着いたのはサイターマランドだった。俺は初めて来たから嬉しかった。色んなとこで遊んだ後、観覧車に乗ろう、とあの子が言ったから乗ったわけだ。観覧車が登って行くにつれ、気持ちも登るように高まって言って、あの子がキレイ、という言葉に、君の方がキレイだよ、という言葉で返してしまった。しかし、それが原動力になっちゃったんだろうか、コクられたのは。)
きよみからの告白を経たたけるにとって、きよみの存在は大きくなっていた。
(...いいのか...?ねぇ...お父さん?...お母さん?)
たけるは、ベッドの横にある机の上に置いてある、三十代前半くらいの男性と同年代の女性と幼い少年の写った写真を手に取り、そう話しかけた。
男性はたけるの父、女性はたけるの母、少年はたけるであった。
━━━四年前(たける、なろう小学校 六年)
...ワァァァァ
(今日は待ちに待った卒業式!これを終わらせたら、そのまま皆と一緒になろう中学校へと入学!...でも、受験をして、私立中に行く人もいるけど...その人たちを除けば、全員ってことだから...そういうことにしておこう。)
今日は、卒業式ということで、様々な保護者や来賓がいるため、たけるは少し緊張していた。その保護者の中にたけるの両親もいた。
六年全員への証書授与を終え、卒業式は終了した。
それから、たけるたちは、自分の教室に戻り、小学校生活最後の学級活動(通称学活)をした。
「それでは...みなさん、卒業おめでとうございます!!...先生は...グス...みんなが卒業できたことが、とても嬉しいです!...」
たけるのクラスの女性担任は、生徒たちに卒業の祝い言葉を贈り、涙を零した。
その表情は、生徒の卒業が嬉しいが、生徒との別れが惜しい、という複雑な気持ちが交錯しているようだった。
それから、クラス全員の卒業証書を一人、ひとりへと、配っていった。
「それでは、みなさん。中学校生活を...楽しんで!!」
「「「はい!!」」」
そして、クラスは『一旦』解散となった。
学級活動が終わり、たけると両親は合流した。
「たける、卒業おめでとう!」
「おめでとう!」
たけるの父、続いて母という順でたけるの卒業を祝った。
「お父さん、お母さんありがとう!」
たけるは、嬉しさのあまり、笑顔で答えた。
たけると両親は、たけるの小学校生活を振り返りながら帰路へ着きはじめた。
「一年のときは、たけるが学校で迷子になって、六年生の子に教室へ連れて行って貰ったのを覚えてる?」
「うん\\\」
まず、たけるの父が、たけるの一年のころの思い出を言い、たけるは照れながら返した。
「二年生のとき、一年生のお世話を良くしてたよね...あの姿は頼もしかったわ...」
「そうだね、あの姿はお父さんも誇れたよ」
次に、たけるの母がたけるの二年のころの思い出を自慢するかのように言った。
たけるの父が、うんうんという風に相づちを打った。
「三年生のときは、ボクが階段から落ちて、お父さんとお母さんを驚かせたよね...」
「そうよ。あの時は、頭を打ってて、最悪の事ばかり考えちゃったわ...」
「あの日はちょうどお父さんの休みの日だったから、お母さんが知った時に一緒に知れて、お母さんのパニックを即座に治められたから良かったものの...もし、お父さんが居なかったらと思うと今でもゾクッとするよ...」
次に、たけるが三年のころの思い出を、申し訳なさそうに言うと、たけるの母は、その当時のことを思い出したのか、心配そうな声色で言った。
たけるの父は、その当時仕事が休みだったことが幸いし、母の最悪の妄想を払拭することが出来た。という風に言った。
「四年のときは、たけるが楽しみにしていた、見学旅行があったけど、残念なことがあったよね。何だったか覚えてる?」
「うん。風邪ひいたよね。楽しみにしてたからめっちゃガッカリした」
続いて、たけるの母が、四年のころの思い出を質問するようにたけるに聞くと、たけるはその時が本当に残念だったようで、しょんぼりしながら答えた。
「五年のとき、集団宿泊教室があったよね。あの時は、白石山(※実際にある山です)に行ったんだよね」
「うん、冬だったから、めっちゃ寒かった...」
たけるの父が、五年のころの思い出を話すと、たけるは、その時が寒かったのを思い出したようで、体をさすりながら答えた。
━━━そこへ、車が三人の方へと走ってきていた。しかし、思い出話に夢中になっていた三人はその事に気が付いていなかった。そのまま、三人の方へと向かい...
ドン!!
という音ともに三人は軽く宙へと浮いた。
「うわっ!」
「きゃ!」
「っ!!」
そして、そのまま地面へと落下した。
たけるは、そのまま気を失った。
━━━たけるは夢を見ていた。
「たける、ごめんね」
「お母さん...?なんで謝るの?」
「お父さんも、ごめんな」
「お父さんまで...何があったの?」
「それは...」
━━━そこでたけるは夢から覚めた。
「...ここは?」
そこは、病院の一室だった。近くに看護師と思われる白衣を着た女性と、警官服を着た女性警官がいた。
「あ!たけるくん、気がついた?」
「は、はい...あ!あの...お父さんとお母さんは...?」
看護師は、たけるが目を覚ましたことを喜んだ。たけるは、ハッとしたかのように、両親の安否を問う。そこへ警官が悲しそうに答えた。
「その事なんだけどね...たけるくん、残念だよ。たけるくんのお父さん達は、『天国』に行っちゃったんだ...」
「え...?」
警官からの遠回しな両親死亡の知らせはたけるを地獄へと突き落とした。
両親が亡くなったことを知ったたけるは、大粒の涙を零した。たけるは、大きな混乱を持った。果たしてその事は本当なのか、本当は嘘なんじゃないか、と。
「悲しいとは思うけど、これからお父さんやお母さんを逆に悲しませないように頑張っていこうね」
「うぅ...うん...」
警官からの励ましを受けたたけるは、涙を零しながらも答えた。
━━━それから、たけるが居ない所で、警官、弁護士、たけるの叔父の三人で話をしていた。
その話を簡単にまとめると...
・たけるの両親は即死だった。
・たけるは両親がお互いを抱き合う形で庇われていた。
・たけるは三週間の昏睡をしていた。
・たけるのこれからの生活のこと。
(どこで暮らすか、遺族年金の取り扱いについて)
・事故の犯人がまだ捕まっていないこと。
という事だった。
警察の捜査上では、犯人の目撃が一件だけしかないと言う事が操作を難航させていた。
━━━それから、四年後(現在)
あれからすぐ、事故の犯人が捕まった。
その犯人は、たった一件の目撃者だった。
不自然な証言、そして、曖昧な言動。
警察は、それに気付くのが少し遅れていた。
なにせ、証言を聞いたのが、配属されたばかりの新人だったからだ。しかし、新人がふとそれらのことに気がつき、犯人逮捕へと繋がったそうだ。
それから裁判で、3億の賠償金を認められた。
警察によると、犯人の供述は次の通りだった。
・居眠り運転だった
・事故を起こしてすぐ、目が覚めた。
・罪に問われるのが怖くて、虚偽の証言をした。
ということだった。
犯人は、ブラックな証券会社で働いていて、朝九時から次の日の朝八時まで働かされていたそうだ。
それによる疲労で、寝ていたそうだ。
警察は、すぐに犯人が働いていた会社へ令状を出し、取り締まりをした。
それから、その会社は一日最大十時間、その中に休憩二時間を入れることを取り決めた。
たけるは、たった一つの会社、そのたった一人の社員の居眠りにより、両親を失い、生活も崩されたのだった。
今、たけるは一人で幼少期から住んでいたマンションに住んでいる。ローンはどうしたのか、だって?たけるの父は、たけるの小学校卒業に合わせ、ローンを払い終わらせていたのだ。たけるの両親は埼玉の中で一番大きな大学病院で働いていた。父は外科医師として、母は婦人科で看護師として。
そのおかげで、ローンは十年で払い終わったのだった。
それからたけるは両親を亡くしたショックで、閉じこもり気味な生活を送っていた。
あの本屋で、きよみと会うまでは...
今回は、番外編二を最後まで読んでくださりありがとうございます!
たけると両親が被害に遭った事故、よくある事案を元に構成しました。
たけるの両親がお互いを抱き合う形でたけるを庇っていたところは、母性本能(父性本能)が働いててとてもいいシーンだったと思います。
これからも夢見る少女とゲーム好き少年をよろしくお願いします!!




