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ハッピーエンドのその先で  作者: ゼロ
第一章「ヒロインと攻略対象たち」(1年生)
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05.攻略対象とご対面なう。その壱

 颯真に連れられて、楓と桜は生徒会室の前にいた。


「ねえ桜、何で私も連れてきたの。桜一人で行けば良かったじゃんかー」

「嫌よ。私だけめんどくさいことになるなんて、不公平じゃない?」

「はぁ...もう帰りたいー」


 颯真の後ろでこそこそと話す二人。

 生徒会室に着くまでに、廊下にいる人からの 絶えない、羨望や、嫉妬の目によって、楓は精神的に疲れ果て、何度も重いため息を吐く。


「連れてきたぞ...って、他のやつらは?」


 颯真が生徒会室を開けて、中にいる人物に話し掛ける。

 桜と楓も中を覗くと、底には一人の男子生徒しかいなかった。


「後の二人だったら、お前が来るのが遅いと怒って、食堂に行ったはずだ」

「はあ?!待ってろって言ったのに、あいつら!で、あいつは?」

「さぁ。どこかで寝てるんじゃないのか」


 颯真が男子生徒と話している間、楓は初めて入った生徒会室の光景に目を見張る。

 長机や椅子は仕事をするに当たって必要なものだから良いとしても、何インチだ?ってほど大きいテレビや何人座れるのってほどのソファ、奥にはダブルベッドまであり、入ってすぐの右側にはキッチンまで付いている。

 ここで泊まることになっても困らないだろう、と思えるほど、生徒会室は凄かった。


「1-Aの神楽桜です。会長に無理やり連れてこられたのですが、話と言うのは何ですか」

「ああ、すまない。立って話すのも何だし、座ろうか。えっと、そこの君は?」

「桜に巻き込まれただけのものでーす。帰っていいですかー」

「だめよ。彼女が帰るなら、私も帰るわ」


 男子生徒が楓に何かを言うよりも早く桜が答える。そう言われては何も言えないのか、男子生徒は楓も椅子に座らせる。

 机では、桜と颯真が向かい合うようにして座っており、楓は桜の、男子生徒は颯真の隣に腰を下ろす。


「自己紹介がまだだったな。俺は生徒会長の逢坂 颯真(おうさか ふうま)だ。で、こいつが」

「風紀委員長の雨宮 桐斗(あまみや きりと)だ。」

「私はそこの会長に無理に連れられてきた神楽 桜(かぐら さくら)です。で、この子が立花 楓(たちばな かえで)です。それで何のようですか?」

 桜に紹介されて、一応二人に頭を下げる。


「単刀直入に言おう。生徒会に入れ」

「嫌よ 。めんどくさい」

「入れ」

「嫌」


 桜と颯真の押し問答が続く。その時の颯真は楓にはどことなく嬉しそうで楽しそうに見えた。

 パンっと楓の前に座る桐斗が手を叩く。


「ではどうしたら生徒会に入る気になる?」


 その問いに桜は少し悩んだ後、顔を上げる。


「楓も一緒なら…」

「却下ー」


 即答で拒否する楓を見て、颯真と桐斗は若干眉を寄せる。


「なら私も入らないということで、じゃあ帰りまし...」

「立花」


 生徒会室を後にしようと立ち上がる桜を桐斗は、手で制しながら、少し大きめの声で楓の名前を呼ぶ。

 名前を呼ばれた楓は桐斗の顔を見る。


「ならお前、風紀に入らないか?」

「却...」

「下する前に、よく考えて見ろ」


 即座に断ろうとする楓の言葉を遮り、桐斗は颯真を指差す。


「こいつはよくも悪くも諦めが悪い。きっと、彼女を生徒会にいれるために、お前を説得しにクラスに行くだろう。そうすれば、お前はクラスだけじゃなく、学年の女子たちからいじめられるかもしれないぞ。それよりはここで風紀になっておいた方が良いと思わないか?」


 桐斗の言葉に少し考え込む様子を見せる楓。表情は一切変わらず、無表情のままだが。


「別に女子たちにいじめられても、倍で返すだけですけど...そうですね。こんな人がクラスに来るのは私の迷惑ですし、風紀に入ろうと思います」


 楓の言葉に満足げに頷く桐斗。桜はそんな楓に驚いたのか、楓の肩に手を置いて、激しく揺らす。


「え、何で!?楓、めんどくさいことは嫌いじゃん!」

「揺らすのやーめーろー。

 ふぅ。いや、ここで断った方が後から絶対めんどくさいって。それより、私も風紀入るんだから、桜も生徒会に入らないってことはないよね?」

「...わかったわよ。入るわよ。入ればいいんでしょ?!」

「じゃあ、この紙を記入しろ」


 桐斗は桜に何やら紙とペンを渡す。

 颯真はと言うと、先程から出番がないためか、椅子に座ったまま寝ていた。

 楓と桜を半ば無理やりに連れてきたくせに当の本人は寝ている状況に少しムカついた楓は、颯真の椅子を蹴る。

 寝ていた颯真は椅子と一緒にそのまま後ろに傾き、派手な音を立てて倒れる。


 そんなことには目も向けず楓は、紙に記入し終わった桜と席を立ち、桐斗と颯真に半笑いで挨拶し生徒会室を出ようとする。

 そんな楓を床で倒れたままの颯真が焦った風に呼び止める。


「あ、立花!ちょっとお前に用がある。少し残れ」

「もう授業始まるんですけど」


 先程、予令が鳴ったため、もうすぐで授業が始まってしまう。

 しかし、そんな事は知っていたようで、颯真は少し得意気な顔をする。


「生徒会権限で、お前の午後の授業を免除してやる」

「仕方ないなー。さっさと終わらせてねー」

「変わり身が早いな、お前」


 二人でさっさと話を決めていく楓に桜は驚きを隠せないでいる。


「ちょ、ちょっと楓?」

「ああ、桜は心配しないで?この人の用件はわかってるからさー。それより、早く行かないと、授業間に合わないよー」

「わ、わかったわよ。でも、放課後は一緒に帰るんだからね」


 と言いながら、生徒会室を出ていき、部屋には、楓と颯真と桐斗の3人が残る。


「で、用件って桜のことでしょ?」

「な、なんでわかったんだ!?」

「ばればれだよー。桜に惚れたんだけど、人を好きになったのが初めてでどうしたらいいかわからない。取り合えず、桜の親友の私に聞こうってところじゃない?」

「す、すごいな。その通りだ」


 それから、桜へのアタック方法や注意事項などを面白そうに話す楓と、それを真剣に聞く颯真、そんな二人に視線を向けることなく勉強をする桐斗の3人はその状況を放課後の終令が鳴るまで続けたのだった。


 終令がなり、返る準備をする楓に颯真が少し不思議そうに尋ねる。


「なあ、何でお前は俺に協力してくれんの?」

「なんか面白そうだからー。後、あんたは桜のことを幸せにしてあげれると思ったから、かなー。後、私の名前お前じゃないから。立花って呼んでねー」

「あそ。なあ、アドレス交換しとこうぜ。」

「はぁ?」

「そしたら、さっき俺の椅子を蹴ったことなかったことにしてやるよ」

「別になかったことにしなくてもいいけど...後からぐちぐち言われるよりはマシか」


 楓は、颯真といつの間にか同じくスマホを取りだしていた桐斗と、お互いのスマホのアドレスを登録し終え、帰る準備をする。

 準備し終えた楓は、生徒会室のドアに向かって歩いていき、一度振り返る。


「じゃ、さよならー。逢坂に、雨宮センパイ。仕事がある時は事前に言ってくださいねー」


 そう言って部屋を楓は出る。楓が閉めたドアの向こう側からは、颯真の「俺にも先輩を付けろー!」という声が聞こえたが、楓は聞こえていないかのように軽い足取りで、教室に向かって歩き出した。

楓は、少し面白がりながら桜と颯真の恋の応援をします。

恋の相談役…いいですねぇー

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