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ハッピーエンドのその先で  作者: ゼロ
第一章「ヒロインと攻略対象たち」(1年生)
4/5

04.トラブル発生?なう。

今日は休みなので、2話投稿することができました!

いやぁ、よかったよかった!

 ――ピピピッ ピピピッ ピピ

 アラームの音で楓は目を覚ます。

 今は6時。

 さっさとベッドから立ち上がり、フード付きのジャージに着替える。

 フードをかぶり、部屋を出て、学園の回りをランニングする。30分間走った後、部屋に戻り、シャワーを浴びて髪を乾かす。

 これが楓の日課だ。

 制服に着替え、髪を三つ編みにし、だて眼鏡をかける。

 鞄をもって部屋を出て、食堂で軽く朝食を済ませて学園に向かう。


 教室に着き、鞄を机の横にかける。

 楓は朝から機嫌が良かった。

 施設見学ももちろん楽しみにしているが、それよりも楽しみなこと。

 今日は、桜の初イベントがある日なのだ。


 確かゲームでは、学年首席である桜を生徒会に入れるために、生徒会長である、逢坂 颯真(おうさか ふうま)がAクラスに行ったときに、ヒロイン――桜に一目惚れするっていうイベントだったはず、と、楓は一人でぶつぶつ呟いている。

 端から見れば、やばいやつだと思うかもしれないが、幸運なことに、楓の近くには生徒はいなかったため、今の楓の独り言は誰にも聞かれることはなかった。


「おーい、お前ら!席に付け~ホームルーム始めるぞ~」


 田中先生の言葉で席に座る生徒たち。


「お前ら、施設見学を楽しみに思う気持ちはわかる!だが、その前にきちんとホームルームやれよ~」

「「はーい」」


 やっとホームルームが終わり、施設見学のため、学年全員が体育館に集まる。

 楓たち1年生は全員で、240人おり、各クラス、40人ずつとなっている。

 つまり、今のところ、学年での大体の順位しか分かっていないわけだ。

 例えば、Aクラスだったら、1位から40位の中で、Fクラスだったら、201位から240位といった風になっている。

 はっきりとした順位は、6月に行われる中間考査で廊下に貼り出されることになっている。

 今は4月。

 後2ヶ月後にはまたテストということになる。


 体育館には、すでにA、E、Fの三クラスの生徒が集まっており、静寂を保っている。

 黙ったまま他のクラスを待っている時間は、楓にとって、とても退屈なものだった。

 楓は早く他クラスも来てほしいと切実に願う。


 やっと全クラスが集まり、施設見学の説明が行われる。

 説明は~田中先生がするみたいだ。


「やっと全クラスが揃ったな。俺はBクラス担任の田中 大輝(たなか だいき)だ。

 施設見学についての説明だが、まずはこの資料を見てくれ」


 楓は前から配られてきたプリントを受け取る。


「これには、各階と外の地図が載っている。地図には、道以外空白のはずだ。今から、適当にグループを作って、実際に校舎を見て回って、書いてきてもらう。まあ、つまりはオリエンテーションみたいな感じだ。時間は今から3時間後の12時まで。結果は評価には入らないから、皆楽しみながら頑張ってくれ!じゃあ解散!」


 先生の合図で、生徒は各々(おのおの)好きな相手とグループを作っている。

 早速出来た友達であったり、少し気になる子だったりと様々だ。


「ねえねえ!神楽さん!一緒に回ろうよ!」

「なあなあ、俺たちと回んねぇ?」


 早速桜はたくさんの人に囲まれていた。

 唯一の友達である桜があれでは、一緒には回れないだろうと判断し、楓は体育館から出ようと歩き出す。


「楓。一緒に回るわよ」


 その言葉は、大して大きな声でもなかったのに、周りの雑音が消え、生徒や先生までも桜と楓に注目している。


「え~?あんな地味な子よりも、うちらと回った方が絶対楽しいよぉ~!」

「そうそう!あんな地味子、神楽さんの引き立て役にもならないって。それよりも俺らと回ろうぜ!」


 楓のように、見た目がパッとしない女子では、桜のような美少女には釣り合わないだろうと、周りが口々に言う。


「...私の、私の一番の友達を、親友をバカにするのは止めなさい。私が誰と友達になろうが、誰と回ろうが、あなたたちにどうこう言われる筋合いはありません。」


 桜は静かに、だが確実にキレていた。


「か、神楽さん?ど、どうしたの?いきなり」

「そ、そんなに怒ることかよ」

「あなたたちは私が自分の友達をバカにされて黙っているほど、薄情なやつに見えましたか。私は私です。自分のやりたいように、好きなように生きます。私は、人の友達を本人の前でバカにするようなデリカシーのない低俗な人たちよりも、私自身を見てくれて、対等に扱ってくれる彼女と一緒にいたいです。」


 桜に貶される彼女らの顔は、怒りでか、恥ずかしさでかは分からないが赤く染めていた。

 それらの顔を見て、楓は、無意識に桜を止めていた。


「もういいよー桜。」

「でも、この人たちはあなたのことを…!」

「いいんだって。私のために怒ってくれるのは嬉しいよ。ありがとう。でも、彼女らが言ったことは、誰もが思うことなんだって。全員の総意を言っただけにすぎない。一人一人感じることも思うことも違うんだから、仕方ないよ。それに、私は全員に好かれようとは思ってないから。誰か一人でも、自分のことを理解して(わかって)くれる人がいればそれでいい。

 ...それよりも、オリエンテーション行こー。時間がなくなるよー」

「分かったわよ。でも、私はあなたたちのことを、一生友達だとは思わないわ」


 桜は、さっきまで彼女を取り囲んでいた生徒に言い放つ。

 楓はそんな桜の腕を掴んで、体育館から出ていった。

 呆然と、口を空けたまま佇んでいる生徒に背を向けて。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 体育館から抜け出した楓と桜は、その後、楽しく施設見学をし、いつも通りの顔で体育館に戻った。


 お昼休みになり、桜に昼食に誘われた楓は、二人で食堂に来ていた。

 この時、楓は施設見学でのことが印象に残りすぎていて、桜の出会いイベントのことが頭からスッポリ抜けていた。


 ご飯を受け取り、空いている席に座る。

 二人で談笑しながら食べていると、ふいに女子たちの悲鳴が聞こえた。

 楓は桜と顔を見合わせ、「またか」と呟くと、また食事を再開する。


「だんだん女子の悲鳴が近付いてきてない?」


 と、楓が桜に話しかけるのと、


「神楽桜は、お前だな?」


 と、攻略対象である、逢坂 颯真(おうさか ふうま)が桜に話しかけるのは同時だった。

 あまりの驚きに、楓はくすくすと笑ってしまう。


「何のようですか?今、見ての通り、楓とご飯を食べているんですけど。それよりも重要なことですか?」


 楓のことを無視するように桜が颯真に尋ねる。


「あ、ああ。重要だ。今すぐ、俺に付いてこい」

「嫌です」

「お前に拒否権はない」

「それでも嫌です」


 誘いを断り続ける桜に、興味を持ったのか、颯真は桜の顔をまじまじと見つめる。


「…はぁ。そんなに行ってほしいのなら、楓も一緒ではダメですか?」


 その言葉に、楓は眉間にしわを寄せ、顔全体で「めんどくさい」とアピールしている。

 そのことに気付いているはずなのに、あえて、気付かない振りをして、楓のことをスルーして話を進める桜。


「それがダメなのだったら、私は行きません。どうぞお引き取りを」

「わかった。良いだろう。俺様に感謝しろよ、女」


 颯真は楓に顔を向け、「どうだ、嬉しいだろう」といいたげな顔で見つめる。

 その言葉に、楓は中指を立てたい衝動を一生懸命抑え、無表情を保っていた。

 こんな大勢の人がいる前で、彼を侮辱するようなことをすれば、彼のファンの人たちにボコボコにされてしまう。

 何とか心を落ち着かせた楓は、いつの間にか決められていた、桜の同伴のために、昼食を急いで食べる。


 そして、颯真に連れられ、桜と共に楓は、食堂を後にした。

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