表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハッピーエンドのその先で  作者: ゼロ
第一章「ヒロインと攻略対象たち」(1年生)
3/5

03.友達ができたみたいなう。

「あまり時間は取れないから、軽く見て回ってくからな~。テキパキ動けよ~。騒いだやつ、今日の課題増やすからなー!」

「そりゃないぜ~だいちゃん!」


 そんなこんなで、学校見学も終わりに近づき、最後の四階の見学だけとなった。

 ちなみに大体の割り振りは、

 一階は一年生教室プラス特別教室

 二階は二年生教室プラス職員室と特別教室

 三階は三年生教室プラス特別教室

 となっているようだ。


「四階には生徒会室と理事長室があるからな、前を通りすぎるだけだからな。通りすぎるだけだぞ!

 止まったやつは罰として、明日一日俺のパシリにしてやるからな。肝に命じとけよ~」


 そう言った先生は生徒たちの先頭として、階段を上り出す。

 先生の後に続いて、歩き出す生徒の列の、楓は最後尾として並んでいたので、比較的ゆっくりと歩いていっていいはずなのに、前の生徒の後ろにピタッとくっついて、早足で歩いている。


 四階の理事長室の扉は重々しい雰囲気を放っているが、学園の風景と余りにミスマッチすぎて、違和感を感じ得なかった。

 生徒会室は普通の教室と同じようなもので特別変わったところはないように見える。


 その時、楓は廊下に今日の朝に渡されたものが落ちていることに気が付いた。


「何でこんなところに生徒手帳が...?」


 廊下に落ちている紺色のカバーのそれを見て、楓は呟く。

 ここは四階。

 理事長室もあり、生徒会室もあって、用のない生徒が近付こうとは思わない場所になぜ生徒手帳があるのだろうか、と楓は不思議に思う。

 見ただけでは、誰のものか分からないので、楓は中を開く。

 神楽 桜(かぐら さくら)

 性別:女

 年齢:16歳

  ・・・


 ヒロインのもので哀しむべきか、攻略対象のものじゃなくて喜ぶべきかは分からないが、どちらにしろ面倒だと楓はため息をついた。

 

「とにかく、明日の施設見学で渡そう。」


 そう呟き、楓は彼女の学生証を制服のポケットにしまうと、置いていかれそうになっていた生徒の集まりの最後尾に並んだ。



 教室に戻り、解散をした後、楓は大きな大きな建物の前に立っていた。

 豪邸のようで、ホテルのようなこの建物が今日から私が生活する寮である。


 想像した通り、中もホテルのフロントのような感じだった。

 コンシェルジュや、受付の人、すべてが楓には、まるで別世界のように見えた。「その通りに異世界なんだけどねー」と一人で突っ込みを入れる。


「受け付けお願いします。」


 受付に近づき、そこの人に話しかける。

 名前を聞かれ、部屋の鍵を受け取ると、楓は部屋に向かうため、階段を上る。


 この寮は五階まである。

 一階には受付とエントランスホール、食堂がある。

 二階には3年生の部屋が、三階には2年生の部屋が、四階には1年生の部屋があり、五階には、大浴場が付いているらしい。

 各部屋にも一応風呂場はあるらしいが、大浴場に通う人もいるほどとか。


 楓の部屋は403号室。

 ちなみに、各フロアには、およそ100部屋あるらしく、1から50が、女子部屋、51から100が男子部屋となっている。

 階段を四階まで上りきり、自分の部屋の前まで歩く。

 1つのフロアにいくつの部屋があるのだろうか、と妄想に浸ってしまうほど広く長い廊下。

 ようやく自分の部屋の前までたどり着き、カードキーで中に入る。


 凄い。この一言に限る。

 ドアは全部で3つある。

 トイレ、風呂場、自室につながっているのだろう。

 他にも、ベランダやキッチンまであり、リビングにはテレビとソファがある。自室にはベッドまで

 たった一人の生徒の部屋に、一体いくらかけているのだろう。

 お金のことを考えて身震いし、楓は考えることを止めた。


 自室のドアを開くと、楓が家から送った荷物が届けられていた。

 早速荷ほどきに取りかかる。

 と言っても、楓は、勉強道具以外、私物をあまり持っていないので、そんなに時間はかからないうちに終わった。


 荷ほどきが終わると、ちょうど夕食の時間になっていた。

 せっかくなので、食堂にいってみようと思い、財布を持って階段で一階に向かう。


 食堂は思っていたよりも、賑わっており、上級生下級生関係なく、席に座り食事をしている。

 食べたいものは、自分で券売機で券を買わなければいけないため、券売機の前には長蛇の列が出来ていた。

 楓もその列の最後尾に並ぶ。

 ようやく楓の順番が回ってきて、お金を投入し、定食Aセットのボタンを押して券を発行する。


 買った食券を食堂のおばちゃんに渡す。

 しばらく待った後、定食Aセットを受け取り、空いている席に座る。


 その時、黄色い悲鳴が上がる。

 楓はその光景、既視感(デジャヴ)を感じた楓は、その声の発生源を見てみる。

 そこには、楓の予想通り攻略対象、もとい生徒会の面々の姿が見えた。

 関わりたくない楓は早く食べ終わろうと、食べるスピードを上げる。


「凄い人気よねぇ、あの人たち」


 急いで箸を動かしていると、楓は誰かに話しかけられる。

 楓が顔をあげると、そこにはラーメンを持ちながら、前の席に座るヒロインの姿が。

 楓はたくさんの女子生徒に囲まれながら歩く生徒会の人たちを見ながら答える。


「だよねー。あんなに騒がれちゃ、ゆっくりご飯も食べられないし。少し可哀想ー。」


 楓の言葉に少し驚いた顔でこちらを見る。


「立花さんって、そんなに毒舌だったのね。少し驚いちゃった」

「そうですか?普通だと思うけどー。それより早く食べないと麺、伸びるよー」

「あ、そうね」


 

 慌てて、ラーメンをすすり始めるヒロイン。


「あの、これって、あなたのだよねー。何故か四階の廊下に落ちてたよー」

「あれ?ほんとだ。多分、朝早くに来て学校の中を見学してたときに落ちたのかも。

 でも、何で私って分かったの?」

「そりゃ、写真があるからねー」

「あぁ、ほんとね。何か恥ずかしいわ」


 ヒロインは少し赤みを帯びた頬に手をあてながら照れたように笑う。


「でも、何で私の名前知ってたのー?」

「名札に書いてあったから見ただけなの。違った?」

「ううん。じゃあ改めて。私は立花 楓(たちばな かえで)だよー。」

「私は神楽 桜(かぐら さくら)よ。よろしくね、楓。」

「うん、よろしくー」


「私のことは桜って呼んで?楓」

「りょーかい。桜」


 定食を食べ終わった楓は席を立つ。


「じゃあ私、食べ終わったからもう行くねー」

「あ、じゃあ私も行くわ。ちょっと待っててね」

「待ってるから、急がないでー。喉につっかえるよー?」

「そ、そうね。ありがとう、楓」


 しばらくして、桜も食べ終わり、食器を返して二人で部屋に向かう。


「楓は部屋どこなの?」

「403だよ。桜は?」

「404!隣ね!嬉しいわ」


 部屋が隣であることに喜ぶ桜を見ながら、楓も微笑む。


「楓のクラスはどこ?」

「B。桜はAでしょ?しかも首席すごいじゃん」

「そんなことないわよ」

「それってBの私に喧嘩売ってるのー?」

「そうとも言えるわね」

「まあ、その通りだから言い返せない自分がいる」

「楓も頑張りなさい?」

「うわー、上位者の余裕がむかつくー」


 そう言って二人で顔を見合わせて笑う。



 楓は、桜と部屋の前で別れた後、部屋に入る。

 お風呂は、大浴場に行かず部屋で済ませる。

 お風呂に入った後、明日の準備をして、ベッドに入る。これからの桜との高校生活のことを考え、少し楽しみに思いながら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ