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ハッピーエンドのその先で  作者: ゼロ
第一章「ヒロインと攻略対象たち」(1年生)
2/5

02.Bクラスなう。

ちょっと設定変えました~すみません!


今回からは三人称で書きます!

 ――桜坂(さくらざか)学園

 国内屈指の難関校であり、多くの優秀な若者を輩出している名門校。

 当然入学するのも容易ではなく、偏差値は90を優に越える。

 つまり、全員が未来のエリートなのである。


 そして、乙女ゲーム『TRUE LOVE~貴方と私の恋物語~』の舞台でもある。

 楓はこのゲームに当時、関わりたくなかったため、最初は他の高校を志望していた。

 しかし、元々勉強は嫌いではなかったため、内申も良かった。

 そのせいか、中学校の先生にこの桜坂(さくらざか)学園を薦められ、また三者面談の際に母の前でも薦められたため、母だけでなく、その話を聞いた家族――父親、弟――まで乗り気になった。

 そんな家族が期待し、喜んでくれている状況でその期待を裏切ることなんて出来ず、渋々、入学を決意したのだ。


 今日、学校に早めに来て、ぶらぶらと周りを見学してみた。

 すると、予想よりも全てが大きかった。

 そう、とにかく大きかったのである。

 楓はゲームでは知っていたが、実際には見たことがなかったため、普通の学校よりも少し大きいくらいだろう、と予測を立てていたのだが、それよりも遥かに大きな門、校舎、グラウンド、体育館、あと寮のような建物...etc.

 それら全てが、大きく、また、お洒落(しゃれ)で、とにかく凄かった。


 そうして、学校見学は終わった。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「君たちのような未来ある若者たちが、多く我が桜坂さくらざか学園に入学してきてくれて、とても嬉しく思っている。...」


 入学式が始まり、少し経った。

 現在は桜坂学園理事長の式辞の真っ最中なのだが、長くゆったりとした彼の言葉は、生徒の眠気を誘うらしく、新入生である彼らの中にも、前につむじを見せている生徒が何人かいる。


 ――ガラッ


「すいません。遅れました。」


 

 いきなり体育館の扉が開かれ、勢いよく飛び込んでくる女子生徒。

 生徒全員が、何事か、とそちらの方を向くので、つられて楓も後ろに、顔を向ける。

 そこにいたのは、この乙女ゲームのヒロインである神楽 桜(かぐら さくら)だった。


「おい!もう入学式は始まっているぞ!」

「すいません。」


 先生の怒号に淡々と謝るヒロイン。

 その様子を見ていた在校生や新入生、彼らの保護者からクスクスと笑う声が聞こえる。

 その声が聞こえてなお、表情を変えない彼女は近くの席に座る。


 ヒロインなのだから当たり前だが、なかなか顔立ちは整っている。

 ぷっくりとして、小さく整った赤い唇。

 長い睫毛まつげと、大きく見開いた両目。

 肩ほどまでにかかるセミロングの艶やかな黒髪。

 その容姿に見惚れ、顔を赤くしている生徒は男女を問わない。


「えー、そこの君。これからは遅刻をしないこと、いいね?...

えー、ゴホン。話が途切れてしまったが、これから君たちはこの学園で色々なことを学び、壁にぶち当たり、そして、大きく成長していくことだろう。私は、成長した君たちにまた会えることを願いを込めて、式辞の言葉と致します。」


 やっと理事長の式辞が終わり、生徒全員が肩の力を抜く。


「在校生代表挨拶。生徒会会長、逢坂 颯真(おうさか ふうま)。」

「はい。」


 生徒会会長が登壇する。

 彼は攻略対象の一人なので、どんな人かと楓は瞑っていた目を開けてよく凝らす。

 すると、突然在校生の女子生徒らが、黄色い悲鳴を上げながら叫ぶ。


「きゃあ!逢坂さまよ!」

「今日も一段と麗しい(うるわしい)わ~」


 流石攻略対象と言ったところか、顔はよく整っている。

 典型的なイケメン、といった感じだろうか。

 何やら話しているみたいだが、女子の声援により、全く聞こえてこないため、ただ口を動かしているだけのように見えるのが可笑しいところだ。

 ただ、女子生徒の悲鳴とも呼べるこの声援を、当の彼が全く気にしていないどころか、さも当然とも言いたげな表情で見ているところが、彼の俺様な性格を表している。


 女子の悲鳴が止んだと思ったら、いつの間にか会長は降壇しており、閉会宣言が終わっていた。


 ――こうして、波乱の入学式は終わった。



 今からは、保護者の人とお別れをする時間となる。

 家から通う人はそうでもないが、寮に入る人は、しばらく家族に会えなくなるため、と学校からの配慮があって設けられた時間だ。

 楓の家はここから遠いため、やむ無く寮生活を強いられることになった。

 しかし、寮は一人一部屋らしいため、楓はそれほど気にしていなかったのだが。


 楓が辺りを見渡すと、ほとんどの生徒が家族と軽く挨拶を交わしに外に出ていこうとしている。

 楓もその波に乗って、外に出ていく。


 外には、入学式に出席していた多くの家族がいた。

 その中から、楓は母と父を見つけたが、その隣に、今日学校があるはずの弟の姿が見え、驚きながらも、3人に近付く。


「何で隼人(はやと)がここにいるの?学校は?」

「えー、別にいいじゃん。次にかえ姉に会えるの、いつになるか分かんねーし。」


 楓の弟の名前は立花 隼人(たちばな はやと)

 髪の毛は茶色に染め、ピアスも耳に1、2個開けているが、こう見えて、頭は悪くない。桜坂(さくらざか)学園を狙えるほどに。

 外見はなかなかのイケメンだと楓は思っている。

 案の定、私たちの周りの女子が隼人の方を見て、頬を赤く染めて楓たちを見ている。


 また、隼人は若干シスコン気味である。

 どうしてそうなってしまったのか、楓には皆目(かいもく)、見当もつかないらしいが、原因は彼女の若干入ったブラコンのせいである。


「んもう!可愛いこと言ってくれるじゃん!このこの~」

「おい!やめろよ、かえ姉!」


 楓よりも随分背が大きくなってしまった隼人の頭を背伸びをしながら豪快に撫でる。

 楓の身長は165と、女子の中では高い方だが、隼人は中3の今で180を越えているため、背伸びをしないと届かないのだ。


「ていうか、かえ姉その格好、なんだよ。ダサすぎ。……でも、これは男が寄ってこなくて良いのかも?…(ボソッ)」

「いいじゃん。これくらいが普通の格好だよー。だから、これくらいで良いのー。ってか、何か言った?」


 何か隼人が言ったような気がした楓だが、隼人が首を横に振るのを見て勘違いだろうと思い、すぐに忘れてしまう。


「…俺、絶対来年、桜坂(さくらざか)学園に入学するから。だから...待ってて」


 急に真面目な顔になって、隼人が言う。

 楓を見つめる隼人の目は真剣な色をしていた。


「うん!隼人ならできるよ!がんばれ!」


 そう言って、また豪快に隼人の頭を撫でる楓。


「もう楓ちゃんも高校生なのねぇ。感慨深いわぁ」

「そうだなあ」


 少し涙ぐみながら、話す女性が楓の母、立花 真由美(たちばな まゆみ)で、真由美の言葉に笑顔で頷いている男性が楓の父、立花 諒一(たちばな りょういち)である。


「もう二人とも、そんな泣くことなんてないでしょう?」

「だって、あの日から、随分と大きく成長した楓ちゃんを見ることができて嬉しくて」

「そうだぞ。父さんはな、いつでも娘と息子と妻中心で世界が回っているからな!はっはっは!」

「もうお父さん…でもありがと。」


 “あの日”その言葉に一瞬目に陰りがさすが、すぐに笑顔に戻る。

 それから少し話した後、楓は、真由美と諒一と隼人に別れの言葉を告げ、新しいクラスを見に、一年生の教室がある場所に移動する。

 一年生教室の前の廊下は、新入生で溢れかえっていた。

 楓にはあの中に混じっていくなんて勇気はないので、空くまで端で待っている。


 やっと、視界が開けてきて、クラス表の端が見えてきた。

 楓は、クラス表に近づく。


 楓の学年は全部で6クラスあるみたいだ。

 ちなみに、この学園のクラス決めは、入学試験の筆記テストの点数順で、決められている。

 毎学期の末に行われるテストでの点数で、毎回クラスの異動があり、その度に生徒の入れ換えが生じる。

 上からA、B、C、D、E、Fと言う風になっており、Aが一番優秀なクラスとなっている。

 別にAだから何とか、Fだから何とかはないが、下のクラスの人は、上のクラスの人から見下されてしまう。

 それが嫌ならば、勉強をするしかないのだ。

 つまり、絶対的な実力主義の学校なのである。


 楓の名前はBクラスにあったので、Bクラスに向かい、目立たないように後方のドアから入る。

 黒板には、座席表が貼ってあった。

 楓は、昔から目が良く、両目1.5であるため、難なく見ることができた。

 座席表によると、楓は窓際の一番後ろの席だった。

 楓が席に座り、しばらく経ったとき、クラスの誰か――名前は知らん――が席を立った。


「なあ!今から一人一人自己紹介しよーぜ!まずは俺から。俺は...」


 何かいきなり男子が立ち上がって自己紹介を始めた。

 ああいう奴がクラスの中心人物になっていくんだよなぁと他人事のように見つめる楓。

 周りの皆も最初はめんどくさそうだったが、今では、彼に軽口を叩いたり、一緒に自己紹介をしている人もいる。


「じゃあ次は君ね。」


 いつの間にか楓の周りの人は自己紹介し終わっていたらしい。

 楓は席から立ち上がりマスクを外さずに、教室全体を見渡しながら話す。


立花 楓(たちばな かえで)です。皆さん、今日からよろしくお願いします。」


 それだけ言って楓は席に座る。


 生徒全員が自己紹介し終わったとき、ちょうど新しい担任がやって来た。

 イケメンではないけれど、これはこれで親しみやすそうな顔。

 生徒とすぐ打ち解けられそうな雰囲気だ。


「今日からこのB組の担任となった田中 大輝(たなか だいき)だ!どんな風に呼んでくれても構わないぞ~これからよろしくな!」

「だいちゃん、しつもーん!」


 早速あだ名で呼ぶ女の子。

 田中先生は嬉しそうに顔を綻ばせながら答える。


「何だ!何でも言ってみろ!」

「この後って何するのー?」


 その質問に顎に手をあて、考え始める田中先生。


「そうだなぁ、今の時間は生徒たちと交流を深める時間だしなぁ。

 お前たちは何したい?」


 先生のその質問にクラスが徐々に騒がしくなる。


「はいはい!あたし学校探検したい!」

「あ!俺も!この学園って無駄に面積でけぇんだよなぁ」

「だよねぇ、迷ったらシャレにならんし」


 口々に喋りだす生徒たち。


「明日一応学年全体で、施設見学する予定だけど、今日のうちに軽く校舎を見て歩くか!

 そうと決まれば、全員廊下出ろー。くれぐれも騒がしくするなよ!俺が怒られるんだからなー!」


 意外と先生ってめんどくさがり屋っぽいので、楓は気が合いそうだと思いながら席を立つ。

 先生の指示に従って生徒がぞろぞろと教室から出ていく。

 楓もその波に乗って、教室を出ていった。

シスコンの弟って可愛いですよね。

私、弟いなくてずっと欲しかったので、ここで自分の欲望をちょっと入れちゃいました(笑)

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