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異世界生活イチ日目

 僕の名前はエドゥアルド・デル・マーレ・ボネット。歳は十四で将来は医者になりたいのです。その為、日々学業に励んでいます。



 というのも、この戦闘の多い星では欠かせない職業なのです。この星には多くの冒険者が日々脅威的(きょういてき)な魔獣や猛獣を倒すためパーティーを組み戦闘を行うのです。普通であればパーティーの内、一人は援助、つまり回復要員がいるのですが回復魔法を使える人物はそういない為に医者はこの星では重宝されているのです。これが志望理由でもあります。



 話は変わるのですが最近、僕の住むこの街プロヴァンスでは上級者でも倒すことの難しいとされる焔魔獣がでたのです。



 プロヴァンスは全焼、全滅される。誰もがそう思っていました。というよりも必然という方が正しかったかもしれません。その焔魔獣が確認された当時確かに被害は出ていました。そして、たまたま歩いていた所でその形勢は逆転します。突然として現れたその人影は一瞬にしてその焔魔獣を手懐けて森へと帰してしまったのですーーーー



 僕は決めました。いつかあのパーティーの一員になるのだとーーーー



***********************



 ある古民家にてーーーー



「あの、私リナって言うんです。今日から貴方のパートナになる予定です! よければ覚えてください!」



 と、ある一人の女性は向かい合って座っている男性に対して恥ずかしさを含みながら上目遣いで名前を発する。それを見た男性は白眼を向き、魂魄が抜け落ちていた。だが、会話を続けなければという精神のみで返答をする。



「え......? あ、うん、い、良い......名前だと思う。続けて」



 やっとの思いで返した返事は余りに浅はかで簡潔すぎた。そのうえ声はガラガラに掠れ聞こえたかどうかすらも微妙なところである。



「そうかしら? そう言ってくれると嬉しいわ! ありがと、うふふ」



 彼女は労いの言葉をかけてから膝元においてあった白妙の美しい両手を口元へと運び艶笑を隠す。男性は気になることがあったがそれはあえて口にせずに会話を続けた。



「俺、どっか変なとこでもありましたか?」



 すると彼女は一本一本が繊細な指先のついている手を口元から定位置へと戻しこう返した。



「いいえ、素敵なお顔ですよ? ただ、前にも誰かに同じ反応をされたような気がして......それで笑ってしまっただけです。気になさらずに」



 そう言った彼女の保たれていた微笑みが心做しか崩れた気がした。水のように透き通った肌とその美貌さ故に崩れているのに気付くまで秒であった。



「俺たち気が合わないな。俺は今、どこかで会ったことのある人に完全に知らない設定に持ち込まれてるよ」



 掠れた声はやっと潤いを戻しいつも通りに喋ることが出来る。



「え、? 何です?」



 顔全体としては8割がた笑っているが残りの2割は狂気に満ちた眼が消している。初めて気付いた事があるーーーーというのも彼女の眼が赤色であること。それともう一つ常人よりも確実に長い耳である。これが俗に言うエルフというやつなのであろうか。



「いや何でもない......いやこの際聞かさせてもらうわ」



 すると、発言が鼓膜に届いたのか長い耳をピクピクと上下に揺らし、「何?」と、優しさに包まれた状態の疑問符を浮かべる。それを見るに発言をする前に動揺はしたが続けた。



「お前、女神だよな」



「い、いったぁい......というかですけど、なんのことですか? 女神って何ですか? わ、わたしは隣町から来たただのエルフですよ?」



 と、発言したはいいが否定するのに必死になり過ぎ立ち上がる際に膝をぶつけ、雪のように白い肌が一部分だけ微かに紅く染まっていた。



「そーかエルフか。で、隣の町の名前は? 隣町の有名土産に有名料理は? 君の両親のお名前とご兄弟の名前は?」



 すると、間も開けずに彼女は口を開く。



「隣町はプロヴァンスで有名土産は蛙肉。有名料理はそれを使った蛙の生煮。母はシルフィ、父はキヨシィ。兄弟は居ないわ」



 と、言い終えたリナはどこか満足そうだった。それに対し一度会ったことのある人だと確信づける為に問いかけた質問をことごとく返されたある一人は不満げであった。



「じゃあ最後に1つだけ聞いてもいいか?」



 彼女は小さく頷き、肯定を促す。



「俺の名前って......何だっけ?」

 


 それを聞いたリナは一瞬、え? と言いたげな顔を見せるがすぐに笑顔へと舞い戻る。



 「私も分からない。そうだ! ステータスカードを見てみるといいわ!」



 ぽんっと手を叩き、知らない単語を言い放つ。



「ステータスカード?」



 当然、ステータスカードなどという単語を聞いたことが無い。故にそのまま繰り返す。



「ステータスカードは身分証みたいなものよ。そうそうこれ」



 そう言って彼女は手のひらに収まる、地球では免許証程の大きさだろうか、それを内ポケットから取り出しこちらに向ける。



「これが身分証......ってお前やっぱり女神だろ!?」



 向けられてから受け取り身分証を見るとそこにある内容はこんなものであった。



ーーーーはやく女神やめたーい!ーーーー



 と、殴り書きで自己アピール欄にーーーー願望である。所詮、女神は女性。されど、女神は女神なのだ。



「あ、いや、そのそれは......」



「もう認めろ」



 またも、言い訳を模索するリナ。否、女神に対しとどめをいれる。



「分かった。認める。けど何で私の事覚えてるわけ?」



 反論を述べる事もできず、先程までのキャラを投げ捨て知っている元の口調へと戻る。それはさておき何を言っているのかが分からない。



「覚えてるも何も5、6分前、一緒にいたじゃねぇかよ」



「そう......そうね。ということはやはり」



 表情がコロコロと変わる相手の気持ちを読む難易度ほど高いものは無い。現にそうである。まず、猫を被り人を騙そうとしてから戸惑いに変わる。そこから笑顔へと変わり現在に至るーーーー読めない。何回試みても読むことは出来ない。



 彼女は続ける。



「あなた異端者よ」



 異端者ーーーーそれほどに道を反れた事をした訳でも、見た目に特徴が有る訳でもない。



「異端者......って嫌な響きだな」



 良い意味合いで用いられるのであれば吝かではないのだが、どうも彼女の言い方からはそうは捉えることは出来なかった。



「異端者。それは、君みたいな異世界から来る人の中でも極稀に起こるエラーよ。そう私は呼んでる」



 稀少価値。物は言いようではあるがそう把捉する事も出来る。だが気になるのはエラーの趣意である。



「お前の言う、そのエラーっていうのは具体的に何なんだ?」



 すると、彼女は左手を腰に、右手を肩程の位置まで上げ広げる。



「君が覚えている私との会話は原則的に覚えてちゃいけないってこと。いや、違うわね。君の居た地球での記憶はあっちゃいけないのよ」



「その......例えば今回の俺みたいに前世界の理を知っていたらどうなる?」



 有ってはならない事に触れているのに気付いた時には心做しか心拍数が上がっている気がした。



「特にこの世界と前の世界に支障が出るわけでは無いけれど......」



 言い始めた女神はその双眸には涙を浮かべ、口元はへの字に変容していた。女神が繋ぐ。

 


「私のお給料が......無くなっちゃうじゃないのよ!」



 女神の金銭の巡りは高校生アルバイトよりも不安定なのだ。



「何でそれと俺が関係あるんだよ?」



「何もかもあるでしょ!? 私はこの世界をゲームにしなきゃいけないの! あなたが前の世界知識を使ったらあなたlevel1からチート級に強いのよ? そんなゲーム誰がやると思う?」



 女神は幾度と異世界へ行きその冒険記を元にゲームを作成する。これが主な収入源であり、それで得られる金は全て主人公次第であるが故にシーソーの様な不安定さを残すのだ。



「まぁ少なからず俺はやるな」



 感情的になっている女神に対し冷静を貫き通す。そして、こう続けた。



「というか今までの作品も結構無双系あったぜ? というかだけどプレイするのは俺らじゃねぇ、向こう側の人間だろ? 俺が勝手に評価してどうする。まだユーザー情報すら入力してねぇだろ」



「ーーーー」



 ハッキリと威風凛凛とした姿に返す言葉の見つからない女神。



「あと俺、前の世界の物何も作れねぇよ? 期待させてすまねぇけど」



「ちょっと......私の動揺返してよ! 少し恥ずかしいじゃない」



 呆然と見ていた女神は顔を赤らめ先程の行いに照れを見せる。しかし、その赤らめには恥じらいだけでなく考えていた通りに物事が進まない事への苛立ちも含まれていた。



「悪かった悪かった、で、この後どうする? クエスト進めなきゃこのゲーム終わらねぇぜ」



 手を頭の頂点につけ軽く笑いながら謝る。



「あなた自分の名前忘れてる事忘れてるでしょ」



 頬から色も抜け落ち、いつも通りの形相の女神。いつの間にか冷静さまで取り戻していた。

 


「そうだった......それだけが思い出せねぇ」



 空いた右手で睫毛位まで延びた前髪をかき上げる。



「とりあえず逆瀬川透で良いんじゃないかしら」



 全く聞いたことの無い名前に戸惑いを覚える。



「いや、誰それ」


誰が言われても相似的反応をみせるだろう。

その戸惑いの申し出に反応したのは女神であった。



「そーね、簡単に言えば前のセーブデータね。この世界は二度目って最初に言ったでしょ?」



 確かに飲み屋のおばさんが嫌だなどと言っていたような気もする。そして、情報を補足するならこの世界のゲームが配信されているということである。



「じゃあもしかしてこの世界ってクリアされてるのか!?」



「大丈夫それは無いわ。彼、逆瀬川透はリタイアして今はこの世界で農民をやってる」



 古き逆瀬川透の話を聞いた新しい逆瀬川透は安堵を覚えた。それはーーーー



「何だ、死なねぇのか」



「そりゃねぇ物理的には死ぬわよ? 例えばこうやって」



 彼女の右手にはいつの間にか氷柱の様な形状をした物が握りしめられている。それを見るに背筋に走るのは氷柱よりも冷淡とした何かーーーー恐怖心。



「な、なるほどね......殺すなよ?」



「殺したら私の給料が無くな......いや、この展開もありかも」


「絶対つまんねぇよ! 名前決まってすぐ死ぬクソゲー誰がやるんだよ!?」



 すると、彼女は「はいはい」とやる気の無くなる返事をし、こう続ける。



「まぁいいわ、それより君、いやトールは見た感じステータスカード持ってないから作りに行きましょ」



「慣れねぇな......」



 そして今、家の扉を開き異世界への扉を開く。



「ガチャ」と、取手を下げた瞬間、聞こえてくるノック音。



「おはようございます! 今日隣国から引っ越してきました。よろしくお願いします」



 気付いた事が二つ程ある。一つは今が朝である事。二つ目はこの可憐な女性に懐かしさを感じている事。どこかでーーーーそんな考えが脳裏を行き来している。



「俺どこかで君に......」



 すると、彼女は声に気付いたのかこちらに顔を向ける。



「初めまして!」



 誰かに一部分だけ似ていたり特徴が同じであったりするのはよく有ることである。



「それであなたは何でここに来たの? 何も無いとこよ、ここは」



 理由を問われた彼女は視線を元に戻し話始める。



「この町特有の“うたげ”という物をしに来ました。あ! そうだ一緒に行きましょうよ!」



「死んでも嫌。私は行かない」



 別に行っても良かったのだが、これから先クエストを進めていく上で必要事項となるステータスカードは欠かせないと見たトールはーーーー



「俺も今日はちょーーーー」



「いってらっしゃい」



 割って入ってきた女神の声は至って普通であったが、その顔は酷く汚い笑顔であった。



「来てくれるんですか!? ありがとうございます!」



「え、いや、その......分かった......」



 押しに負けて行かなければならなくなったトールは何処か具合の悪そうな表情をしていた。



「さぁ、一緒に行きましょ!」



 どこかで、どこかで聞いた事の有る響きに嫌悪感を覚えるトールであったが言われるがままに歩きだしていた。

更新遅れてすみません! 受験勉強と学校のテストがあったので!(言い訳)

自分のペースで頑張ろうと思います!


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