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異世界生活ゼロ日目

 私達の住む地球では物理を越える定理は無く、特殊で生まれる理は認められないのが普通である。否、それは地球自体が基準となる物事の理を歪められるのを拒んでいるからなのかもしれない。

 それらの事から人間達は永遠と夢を見続けるのである。夢とは叶える為にあるが果たしてこれは叶う夢なのだろうか。答えはハッキリとNOなのである。この答えは永遠とNOであり以後変わることはあり得ない。



ーーーー生きている限りはーーーー



 例えばだが、あり得ない夢が叶うのが死んだらという絶対条件ならば、この状況はとりわけ不可解ではない。



「それでどんな世界に行きたいのよ。ってかさっきからこの質問何回すれば良いわけ? さっさと決めてよ」



 頭がぽかーんとして内容が全く持って入ってこない。ただの音として右から入っては左に流れるのをひたすらに繰り返すが、その声から唯一感じ取る事のできる表情は気乗り薄であった。



「その、あの忙しいですもんね、こういうお仕事って」



 視界に映っていた彼女の見た目は透明感のある羽衣のようなもので、彼女のスタイルの良さが際立っていた。大きく膨らみを持った胸は男子高校生の視線を奪った。



「どこ見てそんなこと言ってんのよっ! 変態! というかホントにこの仕事大変なのよ? 異世界転生したいという強い願いを持った人が死ぬ度にここにやって来て、何処に行きたいかの希望まで聞いて、おまけには......」



 彼女は座っていた玉座の肘掛けに右肘を置き、自分の眉毛下まで伸びた揃っていない前髪をガッと掴む。その様子を見た男子高校生は頭をフル回転させて先程何を聞かれたのかを考える。何を聞かれたかの答えを導くまでに時間はほとんどかからなかった。おそらくだがどんな場所にに行きたいかと聞かれたのだろう。



 この問い掛けだと分かった刹那、ある考えが降ってきた。



「その行きたい所って言うのはどこでもいいのか?」



「人が話してるときに......まぁいいわ。そーよ、何処でもいい。ただ条件があるけど構わない?」



 心は既に決まっていた。別に学校が嫌だとか親が嫌だとか言うのは全くもって無かったが未知数に挑むという冒険心に負けてしまったというだけなのだ。故にだが俺は条件を全く気にせずに話を進める。



「俺はう....た、げ? かなって言うネトゲの中に行きたい」



「それってもしかしてだけどローマ字で書いてあるやつだったりする? それだったら止めといたほうがいい」



 すんなり行けると思っていた矢先に飛んできたのは否定であった。それも辞退を要求する。



「理由でもあるのか?」



 当然だが、否定に否定を重ねる。行きたいのだから。一度心に決めた事を変えさせるのはそう容易なことではない。



「そもそも君なんではその世界に行きたいのよ」



 仏のような温厚な顔。などとは無縁の顔をしている惰性に目覚めた女神は理由を尋ねてきた。



「そのゲームやろうとした日に死んだからだ。だからプレイせずにはいられないだろ。しかもこのゲームの制作者のファンでもあるしな」



 そう。俺は死んだのである。死んで間もなくでここに連れてこられ、意味不明な事を何回も聞かされ現在に至っているのだ。言い方を変えれば元凶はあのゲームにあるのである。それでも俺はそのゲームをしたくて堪らなかった。



「ふーん。で、それまでのその制作者のゲームはどうだったの?」



「なんというか、その人の作るゲームは全部リアルというか、例えば主人公が無双しないで途中で死んじゃうとことか仲間がぽんこつだったり、毎回出てくる女神が決まって疫病神だったりとか、とにかく異世界いったらこんな感じなんだろうなって」



「そんな感じよ」



 突然割って入ってきたやる気のない言葉を理解することは出来なかった。



「え?」



「だからそんな感じよって」



「え?」



「しつこいっ。というかその君の言ってるゲームは“うたげ”じゃない。UTAGEは、ultimate(究極の)toxic(中毒性)absorbing(夢中にさせる)gratification(満足を与える)eggplant(なす)の頭文字」



「そうなの!? というか最後意味わかんねぇよ! 何そのなす!? めっちゃ食ってみたいわ!」



 今までずっとうたげだと思っていたネトゲは依存性のある茄子だと分かり、より一層興味を引き出されてしまう。そんな事を知るよしもなく女神はさらに続けた。



「それにだけどあんな世界二度と行きたくないわよ!? 怪物はウジャウジャ出るわ、飲み屋のおばちゃんうるさいし、後は......とにかく嫌なの!」



 急に立ち上がり、まるで赤子のように駄々をこねる女神に吹き出してしまいそうになる。



「というかだけど女神も来るのか?」



「あのね、今まで何聞いてたのよ!? あなたのやってきたネトゲには毎回何が出てきたのよ?」



 呆れきった女神の顔は幾らか苛立ちを帯びていた。



「そりゃ女神だけど......それとこれがどう関係してる」



「はぁ......あなたはそのネトゲのどんなとこが好きなの?」



 女神は深い溜め息を吐いた後に誘導とも取れる尋問を続ける。



「現実に忠実なとこ......ってさっきも言ったぞ?」



「知ってるわよ! それでさっき私はなんて反応した?」



 いきなりの大声を上げた女神に俺は肩をしゅんとすぼめた。そして、誘導に沿っているのかそれと誘導ではないのか分からないまま返答をする。



「そんな感じって言ってた」



「そう、そんな感じなのよ、ホントに」



 女神は右手の人指し指こちらに向け本当に嫌そうな顔をしながらこちらを見る。そんな女神は続けた。



「それじゃあ最後に聞くわ。その制作者の名前は何?」



「自称女神......!? もしかして......」



 満足気に腕を組み元よりある膨らみをさらに底上げするが、何かに気付いた、ある男子高校生は今回ばかりは視線を奪われる事は無かった。



「やっと気付いたのね」



「未来の俺!?」



 女神は一度目を真っ白に染め、位置を玉座に再び戻し口から魂が吐き出される。その直後には血の色を取り戻し怒りを滲み出していた。



「なぁぁあんでそうなるのよ!!?? ホントに頭大丈夫? もういい、私から説明するから! 」



「最初からそうして......」



 不満を漏らそうとした刹那、目の前の女神からは女神とは思えない程に睨みを利かせ低い声で、



「あぁ?」



「いや何でも無いっす」



 阿修羅のような形相からむっとした表情位にまで和らぎ、話を進める。



「説明するわよ、一回しか言わないからちゃんと聞いて。簡潔に言うけど自称女神は私で君の好きなネトゲは私が作った」



「え? 嘘......君みたいな人があんな」



「いちいち突っ掛かってたら時間無くなるから反応しないで。それでだけどあのストーリーは全部実際に起こった事よ。でも君たちからしたら何でも無い想像上のストーリーなの」



 さっきまでのやる気の無さから一転、熱意を込めて説明を始める。



「というと?」



「つまり、君みたいに異世界に行きたい志望者の死亡者が沢山くるわけでその志望者の行きたいところに私も付いていくの。その中で起きたことをゲームにして利益を得てるの。女神と言えど働かないと金は入らないんだから......ってもうこんな時間!?」



 女神の驚愕の実態を知らされたと思えばタイムリミットが迫っているという事態に直面する。



「何だよ時間って!?」



「いいから行きたいとこ早く言って! あと5秒しかない!」



 今回の問い掛けの答えの決断には5秒も要さなかった。というよりも女神の否定を促す尋問は男子高校生を誘導するどころか、さらに興味を最大に引き出しいた。



「じゃ、行くしかないっしょ! いざネトゲの世界へ!」



「なぁぁんでぇぇよぉぉぉうわーーん」



 情けない泣き声を辺りに散らかす女神とニヤつきの止まらない男子高校生は視界を全て光が奪い去っていった。



今回も読んでくださりありがとうございます。これからも、もう一作品の方と更新を交互にしてますので遅れてしまいます。不定期更新ではあるのてすが楽しんでいただけたら嬉しいです!

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