異世界で、看板娘を募集したら・・・。
昔書いたものです。
恋愛ものではありません。
友達のリクエストで書いた《男主人公》です。
どうも。
あー、なんて説明すればいいのかな?
異世界転移と言えば、大体の事は分かるだろうか。
俺は日本で交通事故にあって、神様の力でチートを貰って異世界に来た【渡湊】現在30歳の独身男。
この世界に来てから、既に15年が経過している。
俺は今、自分に使える全てのチートを駆使し、国のお偉いさんにも認めてもらって、異世界料理の食堂《みんなの笑顔亭》を経営している。
ここに来るまで、すごく長かった。
食物関連の知識チートを駆使して、成り上がってやる!
と思って始めた露店。
破落戸に絡まれたり、食中毒を装った同業者に邪魔されたり、戦争に巻き込まれたり、魔王が出て来たり、勇者をブン殴ったり、様々な事があった。
まあ、語ると長いからこの辺は割愛。
それこそ、困難続きの毎日が怒涛の様に過ぎた。
そんな困難を何とか乗り越え、今の国王と仲良くなり、この国の王都であり、一等地のこの場所に店を出す事3年。
ようやく、常連客も付き、店の売れ行きも評判も上々。
異世界で過ごす日々にも、やっと腰を落ち着けたと思った。
今日も一日、大忙し、まさに順調な日々を送る俺!と思っていた・・・。
今、そんな俺が悩みに悩んでいる事がある。
それは・・・。
この店を立ち上げた時から、我が《みんなの笑顔亭》の看板娘を務めてくれていた
エルダさん(29歳)が寿退社したことが始まりだった。
おめでたい事ではあったが、看板娘としての活躍だけでなく、仕込みの手伝い、掃除、皿洗いなんかも手際よくこなしてくれていたエルダさんがいなくなるのは、店としては大打撃だった。
俺は店主として、急いで次の【看板娘】を募集した。
最低限、看板娘として、オーダーや配膳を出来る子を急いで雇わねばならなかったのだ。
幸い、キッチンは調理方法の秘匿の為に、外から見えないようになっているし、雇うのが完全な素人でも構わなかった。
コレが、調理場のおば様方だったら大打撃どころではない。
調理方法を漏らさない様に秘匿の魔法をかける事を承諾してくれた、おば様方には本当に頭が上がらない。
日々、調理場と給仕をローテーションで働いてくれているおば様方、少し給金アップしようかな・・・。
なんて考えるくらいだ。
現時点でも普通の店の倍くらいの給金だとは思うけどね。
それでも足りない位には感謝してます、本当に。
んで、エルダさんがいない穴を埋める為に、【看板娘募集】のチラシを貼ったんだが・・・。
1時間で、希望者が一人やってきた。
町娘のユリナちゃんだ。
どうやら、お給金が高く、掃除と皿洗いとオーダー取りに配膳という、比較的簡単な職業だったことが魅力的だったらしい。
猫の手も借りたいほどの忙しさと、緊急性から、直ぐにでも人手が欲しかったので、翌日から働いてもらう事に。
エルダさんの作ってくれた《看板娘マニュアル》なる物を熟読してもらってからの作業だったからか、ユリナちゃんは初日ながらも笑顔を絶やすことなく、最後まで業務をこなしてくれた。
おば様方とも仲良くなれたみたいだし、まかない飯も気に入ってくれたみたいで、本人からの熱望もあって正式に雇用契約を結ぶことになった。
そして、ユリナちゃんが働き始めて1カ月。
最近、どうにもユリナちゃんの様子がおかしい・・・。
心ここにあらず。
コッチをじっと見つめていたり、お客さんからのオーダーを間違えたり、ボーっとしてたり、お皿を割ったり、業務に影響が出てきていて、困った事態に。
おば様方にも相談したんだけど、
【う~ん・・・。私たちが口出しできることじゃないと思うしねぇ・・・。】
と、何やら煮え切らないお返事をいただいてしまった。
正直、経営者の立場からすると、公私混同はせずに、きっちりと働いてほしい。
何か悩みがあるなら、友達に相談するなり家族に相談するなりして、解決は出来なくとも、もう少しどうにかして欲しい。
ユリナちゃんが間違えるからという理由で、給仕の係になった おば様の方に注文が殺到してしまったりして、本当に申し訳ない状態なんだから。
雇ってる意味ないし、ちゃんと働いてくれている おば様方にも申し訳ないもんな。
という事で、本日、開店前に少し注意しようと思います。
注意したり怒るのは疲れるから嫌なんだけど、経営者として、きちんと叱りたいと思う。
頑張るぞー!!
今日も遅刻ギリギリに来たユリナちゃん。
掃除は既に俺が終わらせておいたので、ゆっくり話が出来る、はず・・・。
「お、おはようございます!あの、すみません、ギリギリになってしまって・・・。」
と、謝るユリナちゃん。
うーん。
叱ろうと思ってたんだけど、もしかしたら具合が悪いのかもしれない。
目の下に隈があるし、何となく顔も赤い気がするし、目も潤んでる。
具合が悪いんなら、ちょっと対応を変えてみよう。
叱るんじゃなくて、休みを提案してみよう。
「おはよう。そうだね、最近、時間ギリギリだったり、ボーっとしてることが多いみたいだけど大丈夫?疲れでも溜まってるのかな?2日ほど休むかい?」
と優しめに提案すると
「え!?いいえ!!休みません!!大丈夫です!!」
と、食らいつかんばかりの勢いで詰め寄ってきたユリナちゃん。
「でも、最近、様子がおかしいし具合が悪いんじゃないの?じゃなければ、何か悩んでるとか?仕事中はしっかりしてもらわないと困るよ。」
「すみません!!気をつけます!!大丈夫です!!」
ユリナちゃんの凄い勢いに押されつつ
「そこまで言うなら・・・。じゃあ、今日も一日よろしくね。ちゃんと働いてもらえないと、辞めてもらう事になるからね?具合が悪くなったら直ぐに言ってね。」
「はい!!ありがとうございます!!頑張ります!!」
と、満面の笑顔で元気なお返事をいただいたはずなのに・・・・。
話す前より悪化してるってどーゆーことだ?
何だか浮足立っている様な感じというか、
ソワソワしてて、頭を突然ブンブン振ったり、お盆を抱きしめて【キャー♪】とか言ってたり、お客さんの足踏んだり、コップ落としたり、注文内容間違えたり、料理をこぼしたり、狭い店内でスキップしたり。
何度も注意したんだけど、その度に
【すみません、エヘヘ♪】
みたいな反応されて、駄目だこいつ、と判断して直ぐに皿洗いに押し込んだ。
その代わり、俺が注文を取りに行く事に。
そんなこんなで、何とか無事に忙しい昼食の時間帯を抜けて、本格的にユリナちゃんを叱ることに。
目の前に座るユリナちゃんは怒られるなんて思ってもいないんだろうな。
何だか浮かれてるような表情してるし。
俺も本気で怒ったことないしな。
正直、怒るのは疲れるし、嫌われるのは怖いし、やりたくないんだけど、しょうがない。
俺、店長さんだもんね。
「あのね、ユリナちゃん。今朝、俺が言った事、覚えてる?しっかり働いてもらわないと困るよ。こちらは給金を支払って、君を雇ってるんだからね?」
そう、まずはお金を支払っているのだから、きちんとしなければならないというお話。
すると、
「すみません・・・。」
と、その一言だけで俯いちゃうユリナちゃん。
何か言いたいことがあったら言えばいいのに。
俺はそんなに頼りない経営者だろうか?
「体調が悪いのかい?うん、違うんだね?じゃあ、悩みでもあるの?」
そう質問すると、顔を上げるユリナちゃん。
ああ、何かに悩んでいるらしい。
なら、話は早い。
「悩みがあるなら、食堂のおば様方に相談しておいで。彼女たちは優しく話を聞いてくれるし、人生の先輩として、何かのきっかけをくれるかもしれないよ。もし、おば様方への遠慮の気持ちがあるなら、友人や両親に相談してみるのも良いよ。とにかく、一人で抱え込まずに、ちゃんと解決への道を探してごらん。」
うん、俺、良い事を言ったんじゃない?
人生の先輩として、ちゃんとアドバイスを・・・・
「あのっ!ミナトさんは!?ミナトさんは相談には乗ってくれないんですか!?」
って、机の上に身を乗り出してくるユリナちゃん、元気じゃね?
ってか、俺に相談ねぇ。
正直、俺はこの世界の住人じゃないし、相談に乗っても何の解決にもならないだろうし、ボロが出ても嫌だから、関わりたくないなぁ。
という事で
「俺に相談されてもねぇ・・・・。あ!雇用形態の事なら相談して。」
と返事すると
「・・・・。ミナトさんは、私が辞めても気にならないんですか?」
って、何?
お店を辞めるつもりだったの?
それで悩んでたの?
なんだよ、それならそう言ってよ。
「ん?辞めるんなら、1週間前には言ってね。次の人を募集する期間とか、引継ぎとか~」
「もういいです!!ミナトさんのバカー!!」
って、猛ダッシュで去っていったユリナちゃん。
え?
ちょっと、待ってよ。
話の途中だし、今からいなくなって、午後の作業はどうするのさ。
昼休み終わりには戻ってきてくれると良いんだけど、世の中そんなに甘くないかなぁ・・・。
結局、その日、ユリナちゃんは戻ってこなかった。
午後の作業は、まさに天手古舞。
お店の常連さんは、
【迎えに行ってあげれば?】
とか
【話を聞きに言ってあげなよ。】
とか言ってたけど、繁盛時に店を抜けられるわけもないし、従業員一人が勝手に居なくなって、その尻ぬぐいを店長の俺がやってる状態だよ?
なんで、俺が迎えに行かなきゃなんないのさ。
訳分からん。
おば様方も忙しくて大変そうだし、苦笑いしてるよ。
若い女の子のお客さんの中には
【店が終わったら話し合いの為に、お家に行ってみたら?花とか持ってけば、ご機嫌直るかもよ?】
なんて言う子もいて・・・。
【何で、無断早退して他の従業員に迷惑かけた子に、花なんて買ってご機嫌取りしなきゃいけないのさ。俺、腸煮えくり返ってるんだけど?出向く理由もないよ?仕事を放棄したあの子はクビ。】
って返事したら
【眼中にも無いじゃない・・・・。】
とかなんとか呟いて、青い顔していなくなった。
そんなこんなで、新しい看板娘の募集の張り紙を貼ってから、3日目。
ユリナちゃんがご来店~。
「あのぉ、ミナトさん、ユリナです・・・。」
「ああ!ユリナちゃん!!やっと来てくれたんだね!!待ってたよ!!」
「ミナトさん!!私の事、待っててくれたんですか!?」
「うん!待ってたよ!はい!コレ、今までの分のお給料ね。短い間だったけど、お世話になりました。」
「え?え??なんで?待っててくれたんじゃ?私、クビ?」
なんて、狼狽えだしたユリナちゃん。
「ん?ああ、お給料渡したかったから待ってたんだよ。下手にお給料払わないままでいたら、悪徳経営とか言われそうだからね。無断早退と無断欠勤は迷惑だし、きちんと働いてくださってる方々への侮辱になるから、真面目に働いてくれる子じゃないと雇えない。君はクビ。今日中に荷物を纏めてね。それじゃ。」
手短な説明と給金袋を渡して、配膳の手伝いに入る。
本当に、今のウチの忙しさは泣きたいくらいだ。
今の時間帯はまだましだけど、夕飯時なんて、目の廻る忙しさになってしまう。
早急に次の【看板娘】を見つけないと。
その願いが神様に通じたのか、
「あの~、表の紙を見まして~。私、ここで働きたいんですけど・・・。」
と、店の入り口から若い女の子の声が。
隣のユリナちゃんが泣き崩れた気がするけど、気のせいだろう。
今は猫の手も借りたい忙しさ。
早速面接開始。
うむうむ。
どうやら次の看板娘候補の子は、《オオカミの獣人》の女の子らしい。
美味しそうな匂いにつられてきた。
給金も高いから魅力的だと。
そして、賄い飯に期待しているらしい。
うん、獣人にしては珍しく、おっとりした感じの子だし、雰囲気も良い子。
なので、【採用】です!!
夕飯時には活躍を期待したいので、お昼の賄を食べさせて、それから仕事を覚えてもらった。
賄いをギラついた眼で、むさぼり食らう姿に少しの不安がよぎったのだが・・・・・。
結果、ダメでした。
獣人ちゃんは客の料理に涎を垂らし、お客さんが食べてるのをジッと見つめて気味悪がられ、客の食べ残しの皿を舐めたりと、意地汚さが全面に出てしまって、お客様からのクレーム殺到。
一日分の給金からダメにした料理の代金を引いた額を払ってクビに・・・。
結局、その日の夜に、本日剥がしたばかりの【看板娘募集!】の張り紙を再び張ることに。
そして翌日。
朝も早くから、お店のドアを叩く音が。
「おい!店主はいるか?表の従業員募集の張り紙を見たんだが、まだ応募可能だろうか?」
と、少し荒い言葉ながらも、ピンと伸ばした背筋に良く通る声の持ち主、《女剣士》さんがいらっしゃいました。
で、前回の事もあるので、様子見をしながらにしようと、採用を明言はせず、午前中、働くところを見てもらい、仕事内容を把握してもらう事に。
その結果・・・・。
女剣士さんもダメでした。
まず、剣を握る手がふやけるのが嫌だから、皿洗いはしたくない。
切るのは得意だと言われたが、野菜を細かく均一に切る事は出来なかった。
やってきた客を威圧し、喧嘩しそうになる。
以上の結果により、【不採用】。
本人、納得がいかない!って顔してたけど、俺的には、なんでウチで働こうと思ったんだよ、あんた・・・。ってな状態だ。
んで、また、【看板娘募集】のチラシを貼る訳さ。
それで、次に来たのは貴族のお嬢様らしき人。
御忍びで働くのよ!
みたいな感じだったし、もしかしたら、小説とかで転生者がよくやる
《今後、自分に降りかかる災難から逃れるための資金集めの為のバイト》
なのかと思って、様子を見ることに。
まあ、結果は当然、【不採用】です。
転生者でも何でもねーわ、この人。
偉そうに、あれは嫌、これも嫌、味見係ならしてあげるとかぬかしやがるので、その場でお帰りいただいた。
追い返すのにかなりの労力を使い、頭を抱えたい思いで お店の準備をしていると、魔法少女なロリが来た。
魔法少女なロリもここで働きたいという。
何でも、薬草や研究器具を買うための資金が欲しいとか何とか。
ロリでも良い、ちゃんと働いてくれる子なら、もう誰でも良いよ。
で、魔法少女ロリちゃん、やっぱり【不採用】だよね~。
まあ、何となく想像してはいたけども、王道のドジっ子だったんだよね。
魔法少女ロリちゃん。
皿は割る、オーダーは間違う、客の頭に煮込みをぶっかける、計算を間違う。
やる気は買うけど、欲しいのは即戦力。
残念ながら、他のお店へどうぞ。
そして、再度、既にボロボロな【看板娘募集】のチラシを貼るわけさ。
そんで、次に来たのは普通の女の子。
普通そうな、ユリナちゃんの様な町娘の様な女の子。
おお!これは期待できそうだぞ!!
変になる前のユリナちゃんレベルの子なら、大歓迎だ!!
と喜んだのも束の間。
「私はグレイトっていう飲食店の娘なのよ!野菜切りやら雑用なんて死んでもごめんよ!!私はあの家とは縁を切って、自分の店を出すの!私は凄い料理人なんだから!貴方の味なんて超えてみせる!!さあ!貴方の技術を教えなさい!!」
とか言うから
「いやいやいや、凄い料理人なら一人で何とかしなよ。俺を頼るなよ。ってか、ウチが欲しいのは雑用係&看板娘をこなせる子だから、君じゃ無理だから。人間的に無理だから。俺、君、嫌い。帰れ。」
と、全てが面倒になって適当に追い返した。
もう、本当に誰でも良い。
ちゃんと働いてくれるなら誰でも良い!!!!!
というか、エルダさん、帰って来てくれないかなぁ・・・・。
お給金、前の倍でも考えちゃうよ。
こんな女の子達相手にするの、本当に、もう嫌。
そう思って、頭を抱えていた時、俺が握りしめていた
何度も張り直されて既にボロボロの【看板娘募集】のチラシを、横から引っ張った人がいた。
「【看板《娘》】にはなれんのだが、俺では駄目だろうか?」
と、俺を見下ろす、大男。
熊の様な大柄のオッサンが目の前にいらっしゃいました。
つるつるに剃られたスキンヘッド、綺麗に整えられた髭は清潔感もあるし、此方の世界では何の問題もない。
服装も綺麗、石鹸の匂いがほんのりと香り、ふんわりと微笑む姿には不思議な安心感がある。
正直に言おう。
俺はこの時、精神的にかなり追い詰められていた。
毎日毎日、店主として他の人よりも働かなくてはならないのに、来るヤツ来るヤツ、マジで使えない女の子ばかりで、胃が痛かった。
もう、知り合いのオバ様方以外の女の人と係わるのが嫌になっていた。
そう、看板娘なんかより、優しそうな看板オッサンの方が良いんじゃね?
って思ったんだ。
で、オレの返事は
「はい。オッサンでも大丈夫です。看板オッサンでも大丈夫です。娘とか、もうどうでも良いです。お仕事してくれるなら。」
だった。
オッサンは苦笑しながら
「数日前から見ていたが、あの子たちの相手は大変だったろう。お疲れさん。俺は便所掃除もゴミ捨ても嫌じゃないし、簡単な計算も出来る。冒険者上がりなもんで、少し粗忽な所はあるかもしれんが、どうだろう?君の言う、看板オッサンとして、数日で良いから様子を見てもらえないだろうか?」
と、頼んできた。
「よろしくお願いします。」
気が付けば、俺はオッサンの手を両手で握りしめて、頷いていた。
何度も言うが、この時の俺は本当に限界だった。
簡潔に言おう。
オッサンは俺が求めていた【看板娘】そのものだった。
オッサンは元冒険者だった為か、料理も少しは出来るらしく、切り方を見せれば直ぐに同じように切ることが出来る人だった。
泥が付いた野菜も嫌がらずに綺麗に洗い上げるし、皿洗いも何のその。鼻歌まで歌いながらこなす強者。
便所掃除や客席の掃除、椅子やテーブルの修理まで出来る上に、
お客さんに頭を下げることも嫌がらず、「いらっしゃいませ。」や「またお越しください。」等の挨拶もにこやかに出来、力持ちで、買い物の荷物持ちも笑ってこなし、
チンピラの様な客同士の喧嘩も笑顔という名の圧力、時々 腕力で納めてくれる、まさに救世主。
更には、子供好きという、嬉しいギャップがあった。
子供用のスプーンやフォーク、椅子を木彫りで作り、
日本で言う『お子様ランチ』を提案し、
知り合いの布屋から格安で譲ってもらったらしい布を涎掛けのような形に縫い、食事の間の貸し出しを始めた上に、
昼飯は素早く掻っ込み、休み時間ギリギリまで子供たちの相手をしてあげるという、何というか、子煩悩なパパさんっぷりを発揮。
詳しく話を聞いてみると、オッサンには一人娘がいて、先日無事に嫁いでいったらしい。
嫁さんは若い時に既に亡くなっていて、一人で寂しい日々の開始。
孫が生まれるまでは無事でいたいので、生死の境を綱渡りする冒険者家業は廃業。
でも、今後生まれるであろう孫の為に少しでも貯金をしておきたい。
なので、安全に働ける場所を探していた。
実は最初の募集の張り紙を発見した時から気になっていたが、【看板《娘》募集】だった為に諦めていた。
でも、料理の美味しさに通い続けて、女の子達の酷さを目の当たりに。
疲れ果てている俺を見て、声をかけて本当に良かった。
楽しく働けて、天職な気がする。
との事。
オッサンのおかげで、ウチの売り上げは鰻上り。
オッサンが来てから、乱暴なチンピラは来なくなり、その代わりに子連れが増えた。
酒一杯とつまみで粘ろうとするチンピラよりも、子連れで来てくれる一家の方が単価が高い上に長居しないので、有り難い。
ランチタイムも子連れのママさん達が増えて、忙しくなり嬉しい悲鳴。
【美味しい!】の言葉と共に沢山の笑顔が見れて、作り手としては この上ない充実感を得る日々。
オッサンは、子供たちにも大人気で、
女の子達からは「クマさん」と呼ばれ
野郎っ子どもからは「クマのオッサン」と呼ばれ、
幼子たちからは「くましゃん」と呼ばれている。
本当のオッサンの本名は『クマッサ』という名前なのだが、
俺が『クマッサさん』と呼べず、『クマッさん』と呼んでしまったのが原因なのだが、本人が喜んでいるので良いだろう。
今日も我らが《みんなの笑顔亭》は看板娘ならぬ、【看板オッサン】こと、クマのオッサンと共に頑張ります!!
友人からのリクエストで昔書いたものです。
最初は
【異世界で《男主人公》が店を開いて、そこで働く女性に様々な問題があったが、良い点も多く、尻に敷かれるタイプの主人公だった為、割と上手くいっていた。】的なお話だったのですが、
「それはねーだろ。んな奴、そっこークビだべや。」との友人のお言葉がきっかけで、何故か逆パターンを仕上げたのです(笑
ちなみに、ユリナちゃんは主人公に恋をして、働きが悪くなりクビ勧告。
それを、心配してもらった(私を気にしてくれてる!)と浮かれ、更に状況は悪化。
二度目の注意で切り替えられたら良かったのを、【追いかけてくれるかも(私の事をもっと心配してくれるかも)】的な考えで逃亡。結果、眼中にも無かったのでクビ。ある意味可哀想な子です。
他の方々は、あれです。可愛くても美人でも、ちゃんと働かないのは問題外よね。という。
ちなみに、主人公は若い女の子が苦手になったという裏設定が(笑
何故、まともな【看板娘】を登場させずに【看板オッサン】をオチにしたかって?
そりゃ、《ねこじゃらら》がこの時からオッサンLOVEだったの一言に尽きます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。