断罪
私は結局、断罪された。
殿下が絡んでしまった以上誰かが責任を負わなくてはいけない。
私は辺境伯の所に嫁ぐことになった。王命である。
「年寄の妾になってせいぜい可愛がってもらうんだな」とエドワード殿下が言う。
後ろに控えた由利子が冷たい目でエドワード殿下を見ていた。
私は神妙な顔を崩さない様にするのに必死だった。
屋敷に戻り、辺境伯の元に嫁ぐ準備をする。
「アシュリーすまない。他に助ける手立てがなかった」と家に戻って来た兄が言った。
公爵家の家臣は優秀である。素早く嫁入り道具をまとめて3日後に辺境への旅に出た。
一か月の辺境へ向かう馬車の旅を終えて、私は無事辺境にたどり着いた。
辺境についた途端、賑やかになる。辺境は国境であると同時に貿易都市でもある。
私の好きな和食の食材も実は辺境経由で仕入れているのだ。
辺境伯夫妻は、有名なおしどり夫婦である。
子供もいるので、妾として入っても役割を果たすことは無いだろう。実質使用人。
誠心誠意お仕えするつもりで、私は辺境の地に足を踏み入れた。
王都からエドワード王子と由利子の結婚式の知らせが来た。
辺境伯は辺境の治安維持の為欠席と返事を出した。
しばらくして、華やかな結婚式パレードの最中に由利子が突然みんなの目の前で消えた
というニュースが飛び込んで来た。
私は屋敷の調理場で、肉じゃがと玉ねぎの味噌汁を作りながらその話を聞いた。
作り終えた食事をトレイに乗せ、召使達と一緒に食堂まで運ぶ。
肉じゃがを見て現辺境伯である夫が「いい匂いだ。これは旨そうだな」と笑う。
私の初恋の人、元辺境伯も「ほう、初めて見るけど旨そうだ」と目を細める。
元辺境伯の隣で、お義母さんが「本当に美味しそうね」と笑っている。
私の嫁入りを機に、辺境伯は代替わりしたのだ。
夫は園遊会の時に私を見ていた。
父親に求婚する少女に度肝を抜かれ、なぜか一目ぼれしたらしい。
夫と私の年齢は10歳差。俺はロリコンなのか?と当時は悩んだらしいけど。
夫の精悍な顔に辺境警備で鍛えた体…大好きです。
理知的で私の話に耳を傾けてくれる夫が…大好きです。
最初は王都から悪い噂が出回ったとかで周囲はとても心配したみたいですが…
結婚式で夫をうっとり見つめてニコニコしている私を見てなぜか安心したらしいです。
学園時代の友人も辺境伯宛に手紙を出してくれたらしい。
「アシュリー様はとてもいい人なんです」
「悪い噂は嘘です。アシュリー様は悪い事が出来る人ではありません」
「アシュリー様は料理が得意で珍しい料理をごちそうしてくれます」
良い友人を持ったねと言われました。なんだか恥ずかしい。
今日も美味しくできたご飯を食べる。
肉じゃがは芋が煮崩れるまで煮るのが好みだ。
勿論これもレシピ帳に書いている。
レシピ帳は食器棚の引き出しの中…由利子は覚えてくれているだろうか。




