婚約破棄
廊下を歩いていたら、ヒロインが階段の下で倒れていた。
これ、乙女ゲームでよくあるという、階段から落とされるイベント?
わたし疑われるパターン?
多分、ここでエドワード登場?
気付かないふりして逃げた方が良いのかしら?
ああ、でも…
スカートがめくれてパンツ見えてるし、本当に怪我してるかもしれないし…
「あなた、大丈夫なの?」と、ヒロインに声をかける。
ヒロインのパンツをスカートで隠して、ヒロインの肩を叩いてみる。
ヒロインが目を潤ませて、私を見て「お…「アシュリー、こんな犯罪までするとは見損なったぞ」
とエドワードが登場し、ヒロインをお姫様抱っこして保健室に連れて行った。
ああ、お約束のパターン!
これって最悪のパターン?
もしかして私死んじゃうの?
次の日は月1回の全校集会。
突然エドワードが壇上に上がりこう言い放った。
隣にはピンクの髪の貴族令嬢。後ろには騎士団長の息子、宰相の息子、うちの兄が並ぶ。
「俺は、アシュリー・オガンホルストの罪を明らかにし、婚約を破棄する事を宣言する」
ああ、やっぱりこういうパターン?
周囲を取り巻く貴族令嬢達が
「どうしましたの?」
「アシュリー様には悪い事は無理ですわ」
「エドワード殿下、ご乱心ですの?」
とざわざわ騒いでいる。
ああ、いい子達だ。
前世、ブラック気味の会社で、軍曹みたいな上司の下で働いていた頃、
こういう時にはみんな黙って下を向いてるだけだった。
こうやってこの場で呟いてくれるだけでも嬉しい。
エドワード殿下が、次々と罪状を訴えていく。
とある罪のない下級貴族の令嬢を苛めていた。
最初は言葉で苛めるだけだったのに、授業中に水をかけたり、
最後には階段から突き落として殺そうとした。
いや、やってないし。
確かに女の子がだらしない姿を見せるのが耐え難くてお小言は言ったけど
てか、もうこんなアホと結婚するのはこっちだってお断わりするわ。
「婚約破棄には異存ありませんが、私は決していじめてはおりません」と言っておく。
「嘘をつくな、貴様がユリコ・マイハシを苛めていた事はこの俺がしっかり見ているんだ!」
とエドワード殿下が叫んだ。
ユリコ・マイハシ、由利子・舞橋、舞橋由利子…
「由利子?あなた由利子なの?」とピンクの髪の子に話しかける。
「お母さん!」と由利子が壇上から駆け下りて来た。
「やっぱりお母さんだったのね。お母さん、会いたかった」と由利子が私に抱きついて泣いている。
私の周囲の令嬢達はキョトンとしている。
「いや、お前等あきらかに親子じゃないだろ」と隣の男子生徒が呟いた。
この作品はフィクションです。




