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青と蒼  作者: みつる
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パタン、日記を閉じる。

と、とんでもないことになってる・・・。今日が件の日曜だった。oh-上手いこと月曜まで飛んでくれよー。二度寝できないか?いや、上手いこと記憶を失くせるとは限らないし、もし遅刻でもしようものなら和美ちゃんが・・・。


○月×日

明日は和美ちゃんとホラーを見る約束になっている。どうしてこんなことに?あの子はたまに分からない。なぜ夏にホラーなんだ?なぜ夏が始らないんだ?待っていればやってくるだろ夏。自分から行くこともないだろうに。まぁ和美ちゃんだから?それで納得してしまえる自分が怖い。踏み絵だ。明日は友情の踏み絵なのだ。私は試されているのだ。友達を試すなんて酷い気もする。だけど、私が裏切ったらアノ子は何をしでかすか分からない。横で見張っておかなければ・・・!バスで・・電車で・・エスカレーターで・・映画館で!!もう遅い、状況は決定している。明日私が我慢すればすべては事足りるのだ。それにしても私はホントに和美ちゃんと約束したのだろうか?和美ちゃんは当たりをつけて嘘を言っているのではないか?自分の日記、和美ちゃんどっちを信じればよかったのか・・・?いや、よそう。友達を疑うなんて最低だ。和美ちゃんが正しいに決まってる。だけど、私よ!断れなかったのか?言い訳を用意できなかったのか?断ろうと思うってその場をはぐらかしただけだったのではないだろうか?結果これである。はめられた!とさえ言えない。ざまぁみろ私。いちおう、記憶を失くした時のために書いておきます。○月×日日曜午後9時より××公園に集合でございます。PS、もし記憶を失くしていたらバックの中に秘密兵器を入れておきましたので使ってくださいワ・タ・シ。


なんだこの日記・・こいつ記憶を失う前提で書いてないか・・?いや、たぶん投げやりに書いてるのだろう。どうとでもなれって・・私だからわかるよ。。バックを漁ってみる。秘密兵器は眠剤だった。


××公園に行くと和美ちゃんがベンチに座って私を待っていた。

「おはよ」

「きたか青。じゃぁ夏を始めに行こうか」

やけにカッコイイことをいいながら歩きだす和美ちゃん。ついていく私。夏はこれからなのである。私達はサマーガルズになるのだ。どんなにつらい過程だろうと私達が夏を始めなきゃなんねぇ。


「ホラー(ほら)チケット」

「和美ちゃん!面白い!すごい!」

「えへへへへ」

地獄の通行手形を受け取り変なテンションで踊り狂う私。あぁ夏なんて始らなきゃいい。映画館独特の薄暗さが怖さを増幅させて私をいっそう不安にさせる。いっそ、怖すぎて意識も記憶も飛んじゃえばいいのに。

「ドリンクセット二つ、ポップコーンはキャラメル味で」

「かしこまりましたー」

店員が気の抜けた返しをする。人の気も知らずに、ポップコーンを意気揚々と詰めていく。もう怖い。すでに怖い。どんどん夏がせまってくる。なぜこういう時にかぎって記憶は飛ばないんだ。現実はいつも非常である。

「和美ちゃん」

「何?」

「手つないでいい?」

「はやいはやい」

ポップコーンを受け取った和美ちゃんはさっそく口に入れて「キャラメル味はまぁまぁね」と感想を言った。

「ねぇ?手つながない?」

「はやいはやい」

上映10分前、CMがばんばん流れるけど全然頭に入ってこない。夏はもうすぐそこまできている。

「和美ちゃん居る?」

「目瞑んな」

ビーっと警報が鳴り、場内が薄暗さを増し真っ暗になる。隣の和美ちゃんの顔すら視認しづらくなり、画面だけが煌々と輝いている、と思ったら画面も薄暗くなった。不気味な音楽とともにタイトルが読まれる。

「楽しみだね」

「・・・」

私が恐怖のあまり、口すら開けれないでいると、和美ちゃんがそっと手を伸ばして、私の手を握ってくれた。しかも恋人繋ぎ。交互に絡められた私達の指はお互いがお互いを確かめ合うように深く深く結びつき溶け合っていくよう、くんずほぐれず四つにがっぷりこのあと私達は結婚します!和美ちゃんとならどこにだっていける。なんたって私達は恋人(繋ぎ)なんだ!!これならいける!!


駄目でした。隣になんかいました。おっさんの横になんかいます。おっさんは気づいてません。カメラさんはたぶん気づいてます。私達もすぐ気づきました。目を瞑ります。悲鳴が聞こえました。たまらず目を開けます。変な女が変な恰好で変なポーズで変な感じにこちらに近寄ってきました。ヒョー目を瞑りました。すっごいドタドタいってます。耳を塞ごうとしたら和美ちゃんと手を握ったままでした。手を振りほどこうとしたんですけどほどけません。ほどいてくれません。私のためというか、私を逃がさないために握ってくれたんだと、この時初めて気づかされました。和美ちゃんは知らない顔してポップコーンをポリポリしてます。逃げたいのですが、和美ちゃんが放してくれません。場面が飛びました。おっさんが遺影になっていました。隣の和美ちゃんがフフって笑いました。笑う場面だったのでしょうか?私にはよく分かりません。限界です。和美ちゃんと手を握ったまま、空いている方の手でバックをゴソゴソします。ありました秘密兵器。和美ちゃんに気づかれないように錠剤をプチッと取り出します。手に握りしめたままポップコーンをひっつかんで一緒に口の中に入れてコーラで流し込みました。薬はすぐに効いてきて体がだるくなってきて、意識が朦朧としてきます。つんざく悲鳴が聞こえる中、隣で薄ら笑いを浮かべる和美ちゃんを凝視して、恋人繋ぎをしたまま、私は幸せな眠りにつきました。

起きたら朝で、ベットにいました。隣に和美ちゃんが居ないのは残念ですが。

「やったぜ」

作戦大成功!



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