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第二話 【兄】

「パット、出てらっしゃい。」


 アイリスの目線の先を見ると、岩の陰からこちらを見ている子供の姿があった。

 3歳ぐらいであろうか、呼びかけに答えて男児が出てきた。

 だが、俺におびえているのか、アイリスの後ろに隠れてしまった。

 アイリスと同じく銀髪で、青い瞳をしている。


「礼を言わせてくれ、アイリス。俺はルーファス・アルフォード、近衛騎士団ロイヤルガードの団長を・・・、ぐぅっ!」


 立ち上がった途端、太ももの傷から血がふきだした。

 傷は動脈まで達していたのか。


「大変っ!? ひどいじゃない、それ!?」


 大剣を背中のさやに戻したアイリスは、マントを引きちぎり、止血しようとした。

 だが足を縛っても、傷口を押さえても、流血は止まらない。

 城に帰って治したいが、とてもそこまで持ちそうにない―――。


「・・・アイリス、ありがとう。もういいんだ。」


 アイリスは泣き出しそうな顔で叫ぶ。


「いやよ!! 絶対に死なせない!!」


「君はドラゴンを倒して我が王国を救ってくれた。それだけで十分だ、感謝している。見ず知らずの俺にこれ以上は・・・。」


「いやよ!! もう、いやなのよ!!」


 傷口を押さえているアイリスの目から大粒の涙がこぼれた。

 彼女には過去に何かあったようだ。




 その時、パットと呼ばれる男児がアイリスに何かを耳打ちした。

 聞き終えたアイリスの顔が驚きに包まれる。


「・・・え? パット? ・・・そうか、そうよね。だってあなたはパットだもんね!?」


 アイリスはパットを強く抱きしめてまた泣いた。

 だがその顔は、まるで生き別れた肉親にでも出会えたかのような喜びに満ちている。

 

「・・・じゃあ、お願いね、パット。」


 パットはうなずき、右手の手のひらをこちらに向けて何かをつぶやき始めた。

 突然、空中に光輝くリングが現れた。

 大きなエネルギーがパットの手に集中していくのが見える。


「これは、魔法陣!? なぜこの子が!?」


 驚く俺をよそに、パットは呪文を詠唱する。


「我が召喚に応じ門を開け来たれ、慈愛の神! 慈生聖光波ア・シュール!!」


 あたりは白い光で包まれた。

 足の傷がみるみるうちにふさがっていく。


「こ、これは・・・?」


 驚く俺に、パットを抱きしめながらアイリスが言う。

 その顔にはもう、涙は無かった。


「パットはねぇ、魔法が得意なのよ?」


「しかし、これは司祭クラスの回復呪文のはずだ?」


「やーねぇ、司祭なんかと一緒にしないでよ。もっと全然すごいの!」


 この二人には心底驚かされる。

 足には傷も痛みもなく、体力までも戻っている。


「パット、ありがとう。命を救われたよ。」


「うふふ、ほらパット、『どういたしまして』は?」


 パットはまたアイリスの後ろに隠れた。

 だが、その瞳にはもう怯えの色は無かった。




「アイリス、改めて礼をしたい。ぜひ城に来て欲しい。」


「ただの通りすがりでやったことよ、お礼には及ばないわ」


「国を救ってくれたのだ、国王も救世主をたたえたいはずだ。」


 アイリスは少々ふくれっ面をしながら答えた。


「王様のメンツを立てろというの? やーねぇ。・・・あ、ここって何て国?」


「君たちは異国の地から来たのか。ここはガーランド王国、国王の名はレスター三世だ。」


「レスター・・・。そう、レスターなのね・・・。」


「国王を知っているのか?」


「いいえ、ただちょっとね・・・。分かったわ、行くわ。」


 遠くを見つめながらアイリスはそう言った。

 旅をしているようだが、何かいろいろとわけがあるようだ。

 相変わらずアイリスの陰に隠れているパットに向かって俺は言った。


「弟のパット君も来てくれるかな?」


 それを聞いたアイリスは一瞬、暗い顔になった。

 

「・・・弟じゃないわよ。」


 そして、いたずらっぽそうな笑みを浮かべ、驚くようなことを言った。


「この子は、私の『兄』よ!」

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