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6. 告白されてみた

 今日の勉強は数学。


 問題集を片手に、駈くんと二人で同じ問題を解いていく。

 ふと目を上げると、真剣な眼差しでうつ向く横顔が見えた。


 ああ、本当にきれい。いつまででも見てられる。ていうか、心のアルバムに納めたい。スマホの中なら尚可。

 何とか隠し撮りする術はないか。この距離じゃ、シャッター音を消したところで、モロバレでしょう。


 心の中で悶えていると、駈くんがこっちを見た。


「分からない?」


 思わず頷いた。


「どの問題?」

 駈くんは私のノートを覗き込んだ。


 分からないのは、この近距離で盗撮する方法なんだけど……言えない。


「ええと、あの、数学の問題じゃなくて、明日――そう、明日は用事があるんだけどいいかな?」

「うん。松岡さんと会うの?」

「愛里もたぶん来ると思う。サッカー部の試合があるんだ」


 駈くんは、バネ仕掛けのように勢いよく顔を上げた。


 うげっ! ブ……ブリザードが……私、何か地雷踏んだ? 駈くんの顔がものすごく怖い。


「田沢の試合?」

「ええと、うん。大地も出るよ?」

「乙葉さ……正直に言って。俺は、当て馬なのか?」


 当て馬? 当て馬って何だっけ??


「要するに、田沢の気を引きたくて俺に告白したのかって訊いてんの」

「……?」


 大地の気を引く必要性が見当たらない。


「田沢のこと、好きなんだろう?」

「えーと、それは異性としてってこと?」

「もちろん。他にないだろう」


 いやいや、あるよ。


「大地は、兄弟みたいなものなの」

「それは前にも聞いた。でも、納得できない」


 か……駈くん、近い。近すぎる。


 余りの迫力に思わず後ずさりすると、一気に距離を縮められた。半分、のし掛かられている状態。


「分かってる? 俺、ずっと乙葉のことが好きだったんだ」

「う……へっ?」

「俺が編入してきた時、クラスに馴染ませようとしていっぱい話しかけてくれたろう?」


 まあ、クラス委員でしたし……


「最初は、可愛いな、くらいにしか思っていなかった。でも、乙葉が田沢と一緒に帰っているのを見かけて、彼氏なんだと思ったら猛烈にあいつに腹が立った。嫉妬したんだ」

「あの……大地と帰ったのは、方向が一緒だっただけで……」


 何せ家は隣だ。


「ああ。クラスの奴らから聞いた。俺にもチャンスがあるんだと思って――」


 そうだね。


「俺、この半年間すっごくアピールしてきたんだけど」

「そ、そうなの?」

「学校行事の度に、乙葉と実行委員やったよね。俺、クラス委員じゃないから、立候補してまでやる必要なかったんだけど」


 イベント好きなのかと思ってた……


「文化祭準備の時も毎日家まで送ったし、自習勉強会の時は必ず乙葉を横に座らせたよね。勉強教えるついでにものすごーくくっついてみたりさ……我ながら泣けるくらいに好意を示してきたのに……いつまでたっても、『白鳥さん』としか呼ばれない。なのにあいつは名前で呼ばれて、『乙葉』って呼んでて、毎日乙葉んちでご飯食べるんだって聞いた」

「えーと、奴は家族枠ということで……」

 今、大地の名前を口にするのは自殺行為な気がする。

「私が好きなのは、駈くんです」


 って、うわっ! 無言で押し倒すの反則っ!


「か、駈くん?」

「何?」

「私の首筋を這っているのは、何でしょう?」

「俺の唇」

「下衆じゃないって言ったよね?!」

「気が変わった」


 ひえっ! 変えないで!


「ちょっ、ちょっと待とうか。いくら好きでも、女の子には心の準備がいるから!」


 後、下着の準備とか。


「心配しないで」


 駈くんはにっこり笑った。


 その笑顔が怖いのは気のせいですか?


「最後まではしないから」






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