表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

5. 概ね合ってますか?

 眠い。眠いったら、眠い。

 だが、アラームは無情にも6時半だと叫んでいる。


 春休みなのに……


「駈くん、おはよう」


 目を擦りながら電話をすると、実に爽やかな声が『おはよう、乙葉』と言う。


「朝だよ、起きてね」

「うん。さっきから起きてる。スマホを手にして、待ってた」


 やっぱり、モーニングコールはいらないじゃない。


「そう……うん……じゃあね」


 眠さのあまり、土下座するように布団に頭をつける。スマホは耳に当てたままだ。


「乙葉?」

「ん~、なぁに……?」

「寝てるんじゃないのか?」

「起きてぅよ」

「…………その声、やばっ。直撃」

「えー? 何か言ったぁ?」

「乙葉、起きて」

「うん。はぁい……」

「乙葉、頼むから、俺が本物の変態になる前に起きてよ」

「へんたいぃって何? あれか、モンシロチョウかぁ」

「意味が違うから」

「生物のぉテスト範囲ぃ、そこからだったぁ?」

「おーい、乙葉ぁ! 起きろ!」

「寝てないよぉ」

「寝ぼけてる。新学年テストは英数国三教科だろうが」

「ん~」

「しょうがないな……乙葉、好きだよ。起きて」


 は? 何? 

 今、たった今、耳元で物凄く艶っぽい声が何か言った!


「駈くん! 今のもう一回!」


 私はガバッと起き上がった。


「11時に迎えに行くよ、起きて」


 違う! 絶対違う! なんとなくそれっぽいけど、全然違う!


 駈くんはクスクス笑いながら、『後でね』と、電話を切ってしまった。




 一階に降りていくと、今日も大地がお姉ちゃんと朝ごはんを食べていた。

 若干、大地がモジモジ君になっている。お姉ちゃんは相変わらずだな。


「あれ、乙葉? 大地、今日こそ降るかも。傘、持っていきな」


 失敬な。


「大地、明日の試合何時から?」

 私は、大地に向かって尋ねた。

「10時。市営グラウンドな」

「了解。お姉ちゃんは? 行く?」

「うーん、久しぶりに行こうかな」


 うわ。大地の耳が真っ赤だ。


 今まで大地が『応援に来てくれよな』アピールをしていたのは、私じゃなくて、お姉ちゃんにだったんだよね。昨日初めて知ったんだけどさ。


 まあ、頑張れ。




 11時に駈くんが迎えに来た。

 駈くんのお家は、何回かクラスのみんなで行ったことがあるので、実はお迎えは必要ない。でも、駈くん的には『駈くん、迎えに来て』と、私が言うのが当然らしい。


 束縛系女子への道は奥が深い。


 駈くんの家と私の家は、電車だと一駅違う。が、歩くと意外と近くて、20分もすれば着いてしまう。


 それにしても、大きなお家だなと、いつも思う。

 お掃除が大変だろうなあ、なんて思う私は庶民すぎるのか。


「上がって。俺の部屋に行こう」

「お家の方にご挨拶しなきゃ」

「大丈夫。今日は家政婦さんしかいないんだ」

「じゃ、家政婦さんに――」

「いらない、いらない」

「まさか、駈くん……私をこっそり部屋に連れ込んで、いけないことをしようと……」

「いやいやいやいや、ないから。できればしたいけど、そこまで下衆じゃないから」


 ちょっと、残念。


「そうだよね。まだ付き合い始めたばっかりだもんね。私、好きになってもらえるよう頑張るね」


 目指せ、束縛系女子!


「えーと、俺、伝え方間違ってるかな……」


 駈くんが、複雑そうな顔で首をひねった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ