表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/26

店じまい

今回はちょっとシリアス。

《二十七着目》


「上手くいかないなぁ………」


明かりの少ない町を歩く(かんざし)は、空を見上げて長い息を吐き、弱々しい声を上げる。


「今日も面接に落ちちゃうし、私の何がいけないんだろう? 」


呉服屋を辞めてから、嫌なことばかりだ。仕事は決まらないし、警察沙汰になりかけるし、仕舞いには問題行動があるとか、イカれてるとまで言われる始末。

簪にはそれが何故なのか全く分からない。


「あーあ、呉服屋に居たときは楽しかったなぁ」


店長なら絶対にそんなことは言わないだろう。


「帰りたい………」


思えば思うほど、足は呉服屋の方に向いていた。


《二十五着目 店じまい》


「えっ!? 」


歩いてたどり着いた場所に、彼女は驚愕する。自分は確かに呉服屋を目指して歩いて来たはずだ、なのに。


「どうして、無いの………? 」


そこに呉服屋は無かった。

ただ、そこにあるのは黒焦げになった木の骨組みの一部のみ。状況を飲み込めない簪に、怯えた様子の男性が駆け寄って来て、今すぐ帰るように言う。簪は彼の差し出した手を払って、聞いた。


「ここで何があったんですか? 」


彼いわく、昨日、ここでは火事があったらしい。そして、それは付け火で、犯人は小学生の少年だと男性は付け加える。


「まぁ、お姉さんの件もあるし、町の人達も味方するだろうから、小学生の子は軽い罪か、上手くいけば無罪だから安心していいよ」


簪は笑う男性に質問を重ねた。


「ここに住んでた人は………? 」


すると、男性は怪訝な顔をする。


「ああ、あいつか。さぁな、でも、死体は見つかってないし、何処かに逃げたんじゃないか」


彼の頭には、未来ある小学生のことしかないようで、店主のことは分からないらしい。簪はうつ向いて言った。


「そう、ですか。あの、私も直ぐに帰りますので、暫く放っておいてくれないですか? 」


男性は少しごねていたが、暫くするとそこを去った。一人になった簪は、無くなってしまった呉服屋を眺めて言う。


「………他人は冷たいですね、店長」


とうとう、自分の考えを認めてくれる味方は居なくなってしまった。彼女の目にはいつの間にか涙が浮かんでいる。

そんな時、簪の背後から聞きなれた声がした。


「あ、簪くんだ。何してるの? 」


「え? 」


振り向いてみると、声の主は確かに呉服屋の店主、袴である。彼はにっこりと笑って、此方に手を振った。


「いやぁ、なんか久々だね。どうしてた? 就職先決まった? 」


簪は思わず叫びを上げる。


「えええええ!? 店長、無事だったんですか!? 」


店主はいきなりの事に驚いて、バックステップを刻んだ。


「え、うん。全然無事だけど。なんなのその反応………。君的には死んでて欲しかったの? 」


簪はそんな店主の腹を叩く。

途端に押さえていた涙が吹き出した。


「そんな訳ないじゃないですか! 私を何だと思ってるんですか! 」


店主は泣きじゃくる簪に困惑しながらも、意見を言う。


「人が死んだら邪魔者が消えたって笑うタイプの人間」


簪は亜高速で、


「それ、ただの悪魔ですよ! 」


とツッコむが店主は、


「え、違うの!? 」


と逆に驚いた。

簪は袴に蹴りを入れてから、気になったことを聞く。


「それで、店長はどうしてここに? 」


袴は瞬きを幾つかして、


「ちょっと荷物を取りにね」


と曖昧に返した。

簪は、その言葉に質問を重ねる。


「どこか行くんですか? 」


店主はこくりと頷くと、


「吸血鬼がタダで場所を繕ってくれるみたいだから、ほとぼりが冷めるまで、魔界? で心機一転、やり直そうと思ってるんだよ。」


と今度は丁寧に答えて、簪に提案をした。


「そうだ、君も来る? まぁ、就職先が決まってなくて、粕田くんの許可が下りればだけど」


簪は一瞬固まるが、直ぐに笑顔になって答える。


「はいっ! 行きます! 」


だが、そのまま行くと思いきや、そうではなく、店主はその返事を聞くと、柔らかい笑みを浮かべて、シャベルを簪の胸の辺りに届くように投げた。簪は思わず次の言葉に困る。


「て、え? これは? 」


店主は動揺している簪にグーサインと共に言った。


「ほら、荷物取りに来たって言ったでしょ? だから、掘り起こすの手伝って」


唐突な労働。

当然、簪は悲鳴を上げる。


「ええ!? いきなり仕事ですか! というか何をどこで探せばいいのか分かりませんけど!? 」


「中に着物入った桐の箱が、敷地内に埋まってる、はず! 」


「敷地内の何処ですか!? 」


「………忘れた! まあ、敷地内全部探せばいい話じゃん。楽勝だね! 」


「いや、結構広いじゃないです! 」


「大丈夫、深さは1メートルくらいしかないし。30センチくらいの箱だから」


「しかも深っ!! そして、箱小さっ! 」


文句をいいながらも探す二人。

こうして、今日も呉服屋は平和です。



《つづく?》

字下げが出来てない? これも怪異の仕業? いいえ、作者のせいです。やり方が分からぬ。

次回はおまけを作りました。

魔界でもなにかが起こる?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ