ハンターと少年
今回は矢原サイドのおはなし。
時間は少し過去に戻ります。
《二十四着目》
昼過ぎ頃、自称怪異ハンターの矢原 木霊 は、新聞記事の内容を頼りに女性が失踪したとされる隣町の、寂れた公園の前までやって来た。
「ここが神隠しの現場か…………。」
だが、まだ日の高い時間だからだろうか、周囲を見渡しても特に変わったところはない。悔しがる矢原に、後ろからついてきていた狛犬の御霊が声をかける。
「まぁ、焦っても仕方あるまい。どれ、ここは一つ冷静になって、ステーキハウスと洒落こまんか? 」
矢原は後ろを振り向いて、怒鳴った。
「まだステーキハウスのくだり引き摺ってたのかよ! 行かねぇよ、金ないし! 」
そして、見るからにしょんぼりした御霊から目を背けながら質問する。
「お前はなんか心当たりないのか? 人が消える原因みたいなやつ。」
狛犬は少し考えてから、残念そうに首を振り、愚痴った。
「駄目じゃな、腹が減って思い出せん。あーあ、この辺りに出たっていう鬼灯籠は旨いもん食っとるんじゃろうなぁ。」
そんなとき、
「あのう………。」
公園の方から声をかけられる。
《二十四着目 ハンターと少年》
矢原が驚きながらそちらを振り向くと、そこには見慣れない小学生くらいの少年がいた。彼はなにかを言いたげに口を小さく開閉させている。矢原は咳払いをして、少年に聞いた。
「この怪異ハンター、矢原木霊に何か用か? 」
少年は一旦「かいいはんたー………? 」と矢原の肩書きに疑問を持ってから、そんなことはどうでもいいとばかりに首を振って、矢原に質問を返す。
「ええと、よく分かりませんけど、お兄さん、さっき失踪事件の話してませんでした? 」
矢原は少年の言葉に頷いた。
「ああ、してたよ。それがどうかしたのかい? 」
少年は矢原の返答に安堵したように息を吐いて、説明する。
「その失踪事件の被害者、僕の姉なんです。それで、出来る限りの事が知りたくて………。」
そして、頭を下げてこう続けた。
「僕が出来ることならなんでもします。だから、お姉ちゃんのことで何か知ってるなら、教えて下さい! 」
強い決意を感じる言葉。
矢原はその目を自分のものと重ねて、なんだかやるせない気持ちになる。
「悪いけど、僕は調査を始めたばかりなんだ。君よりも知っていることは少ないと思う。」
力になってやりたいが、自分には彼に渡せる程の情報がない。矢原に今出来ることと言ったら、せいぜい………。
矢原は、落ち込む少年に提案した。
「君が知っている情報を教えてくれないか。僕が出来る限りの調べて、きっとお姉さんを見つけてみせるから。」
少年はそれに泣きそうな顔で頷き、矢原に自分が知っている限りのことを話してくれる。
少年の話によると、失踪した姉はその日、赤い靴を履いて出掛けていたのだが、その片方しか失踪現場では見つからず、今はそれが最重要の手掛かりだとされているらしい。
「………それで、僕は少し前に噂を聞いたんです。その見つからなかった靴と同じ赤い靴が《呉服屋》にあるって。」
矢原は嗚咽混じりに語る少年の頭を撫でて、御霊に言った。
「なるほどな。あの店には僕も行ったことがあるよ。御霊、やっぱあの店、《付紋呉服屋》はヤバい場所なのか? 」
御霊は矢原の足にすり寄りながら、同意する。
「まぁ、ヤバいと言えばヤバい場所じゃの。あそこに出入りする連中なら人一人くらいは楽に消せるじゃろ。」
矢原は拳を固めて、呟いた。
「そうか、やっぱり。行って確かめるしかないな。」
すると、少年がきょとんとして矢原に聞く。
「矢原さん、誰とお話してるんですか? 」
矢原は言葉を失った。
「………え? 」
-つづく-
神社の狛犬は同じようで、少しずつ違っていることがあります。例えば、私が知っているのだと虎を象ったものとか、ネズミを象ったものとか。あれ?これって狛《犬》なのか!?要審議ですね………。




