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編集中3

四着目


「旦那忙しそうだねぇ」

腰掛けに足を組んで座っている吸血鬼が言った。

袴は手元で作業を続けながら答える。

「ああ、まぁな、最近はやれセーターだの、やれ鎧だの、めんどくせぇ仕事ばっかり増えやがって、忙しいったらねーよ。」


吸血鬼は目をそらした。

「…ま、まぁ、仕事があるだけいいじゃねーか。」

(やっべ…他のやつにも紹介しちゃったよ。)


「そんなに忙しくて堪らないなら、バイトでも雇ったらどうだ?」

吸血鬼が思い付いたように言った。

「え、いや、そういうのは…」

それを聞いた袴はなぜが焦る。

「なんだ、給料出せないのか?」

吸血鬼はにやにやと聞く。

袴はすぐに大声で反論した。

「馬鹿にしてんのかっ!給料だせるくらいは稼いでるわっ!」

吸血鬼は袴の反応を面白がって、

「じゃあなんだい?あっ!もしかして、あんたの行きすぎた着物オタクに嫌気がさして逃げたとかか?」

と冗談を言った。が…。

「…………。」



「え、まさか旦那…図星…。」

吸血鬼は袴の方を見た。袴は目を伏せ、薄い笑いを浮かべる。

「いや、今そいつ精神科行ってるだけだよ」

「より問題じゃねーか!!」


《四着目 百々目鬼(とどめき)


まぁ、なんやかんやありまして。

バイトの募集を始めた付紋呉服屋である。


そしてその週の中頃、

「ちーっす、ビラ見て来たっすー」

と早速一人目が来た。


「そうですか、どうぞ、入って下さい」

袴は不安と期待に胸を膨らませた様子で、着物を福々と眺めながら言った。

…あ、いや、やっぱ期待とか不安とかそんなことはないや。

いつもどおりの袴である。


が、その数秒後、というか戸が開いてすぐ、袴の表情は凍りついた。


入ってきたの男の身体中には目玉がところ狭しと並んでいる。


が、それはそれ、袴が驚愕したのはそこではない。

(やばい!コイツチャラそう!!)

その目の一つ一つにはラメやら、ストーンやら、マスカラやらが施されていて、超絶ごてごてしていたからだった。

(…いや、でも大事なのは中身だよな。うん。彼は凄く爽やかな青年なんだ…たぶん。)


「えーっと、俺っち“百々目鬼”っす。

仲間内ではとどちゃんって呼ばれてるっす。宜しくっす。」

驚く…というかドン引きする袴を気にする様子もなく、男は頭をかきながら自己紹介をした。

(中身もチャラかったぁあああ!!!!)

袴は心中で叫んだ。

壁に拳をガンガンぶつけた。

そして、こいつ駄目かもしれないと思った。


でも袴は、

(いや、でもなんか特技があるのかも、接客得意とか、早食いとか…。)

と思い直し、

「え、えーとじゃあ。

次は特技を教えてくれるかな?」

袴は苦笑を浮かべながらも面接を続ける。


男は答えた。

「特技は人に化けることっす。」

(あ、思ったよりまともだ!)

ガッツポーズをする袴。

うきうきと、

「じゃあ、やってみてくれるかな。」

と言ってみた。が…。

「え?今やってるっすよ?」

「…………。」

(丸出しじゃねぇええええかぁああ!!)

やっぱ、こいつ駄目かもしれないと思った。


それでも袴は、

(ま、まぁでも、大事なのは目的だよね。この辺の人達は化け物平気だろうし、着物が好きで来たって言うなら文句ないし、むしろ歓迎だし…。)

と思い直す。


ちなみに化け物相手に驚かないのは実際は袴くらいなのだが、まぁ、いっか。


「あ、自分は店長が着てるやつに入ってるみたいな刺繍やりたくて来ました。」

と男は言う。

(あ、よかった…まともだ。

刺繍は専門じゃないけど、出来なくはないし、着物にも大事だよね。)

袴は安堵するが…!


男は信じられない言葉を発した。

「俺っち、特攻服作りたいんす。」

「はぁ!?」

驚愕する着物オタクF。


「服といえば特攻服(ヤンキーとかが着てるやつ)っすよね。

店長のやつも気合い入ってるっす。」

にやける男。

「え、いや…。

特攻服は着物ではないよ!?

うち着物専門だからね!?」

狼狽える袴。

対して男は

「え、まじすか!?」

(なにしにきたんだこいつはぁあああ!!!!)

これには流石に、袴も心の鼓膜が切れそうなほどシャウトするのだった。

百々目鬼の元ネタでは彼は女性らしいです。

が、私は男性にしてしまいました。

すまん、本格妖怪ファンの方々。


スライディング土下座するので許してください。

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