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縊鬼と針女

現代には、妖怪を再現できる色々な機械がありますが、貴方は素直に驚く派? サラッと避わす派?

《二十一着目》


予定の時間を少し過ぎ、参加者が集まったところで、(はかま)は話を始める。


「えー、皆さま、本日はご参加頂きありがとうございます。早速、出発、と言いたいところですが、まずは雰囲気作りと称した悪しき風習に習って、私が体験した恐怖を語りたいと思います。」


すると会場からは疎らな拍手が沸いた。

参加者の一人の小学生が手を挙げて袴に質問してくる。


「今回も、この担当を町内会の人に押し付けられたっていうお話ですかぁ? 」


袴は小学生の質問に首を振った。


「いいや、それは去年話したから流石にしない。でも良く覚えておくんだぞ、一番怖いのは人間だから。」


そして、小学生に対してこの説明である。謎の返答をされた小学生は、文句ありげに声を上げた。


「それ言ったら、雰囲気ぶち壊しじゃないですか。せめて『人の心がお化けを作るんだ』くらいの、夢を残した話をしてくださいよ。」


それに対して袴は、


「いいか、少年。この世に夢を肯定する慈悲なんてものは元々存在しないんだ。慈悲が欲しければ自分で足掻くようにしなさい。はい、この話おしまい。」


と大人の黒さが滲み出る回答。

確かに、こんな奴が子供中心の行事をやっているのだから世界は無慈悲である。

しかもあろうことか袴は、まだ何か言いたげな少年を遮って、そのまま本題に入った。


「今回お話しするのは、そんな人間から離れて、ダクトに入り込んだコウモリがうざかったというお話です。数日前私は………。」


《二十一着目 縊鬼(いつき)と針女》


最初に出発した、高校生の男女二人組は、街頭が頼りなく照らす道を歩いている。男の方が女に言った。


「いやー、まさかあれがそうなってああなるなんて…………。今回の話は割りと怖かったな。」


女は男に頷く。


「あれ、実話じゃないよね? 実話だったらあの人の正気を疑うエピソードなんだけど………。」


そんな談笑する二人の内、女の方が、前にあった何かにぶつかった。当然、女は何にぶつかったのかを確かめるために顔を進行方向に向ける。


「え? なにこれ? 縄? 」


そこにあったのは、首吊り用の縄だ。

そして、彼女の頭に不気味な声が響く。


『吊れぇ、首を吊れぇ。』


男は女が縄の前で立ち止まっているので、声をかけた。


「どうした? 何かあった? 」


女は目をしばたかせた。

男の方には声が聞こえていないと分かったからだろう。しかし、怯えはしない。


「良い音響機材仕入れたみたい。頭に直接話しかけてきた。」


それは特定の人物にだけ声を聞かせるシステムが最近はあることと、今は肝試し中だと分かっているからだ。


男は、女の話を聞いて笑った。


「ははっ、なんだそれ。『くっこいつ直接脳内に………! 』ってやつ? おもしれぇ。俺も聞きたかったな。」


その後、二人は何事も無かったように縄をスルーする。


それを後ろの方で見ていた袴は、縊鬼(いつき)を振り向き見た。縊鬼はすっかり落ち込んで、なぜか路地の隅っこに体育座りしている。可哀想に思った店主は縊鬼に声をかけた。


「いや、そんなに落ち込むことないじゃん。こんなもんだよ、毎年。」


しかし、それが縊鬼の傷を抉ってしまったのか、彼は益々負のオーラを振り撒く結果に。彼は途切れ途切れに呟く。


「………現代人怖い。」


「それな。」


店主は多いに同意した。

会話のあと、そんな二人に背後から声をかけたのは、針女である。彼女は自信満々に言った。


「なにやってんの、この恥さらし! 次は私がやるから良く見てなさい。人間が恐怖のどん底に落ちていく様をね。」


しかし、その数分後。


なぜか彼女は来場者の男に抱擁され、良い雰囲気になっている。袴は思わず呟いた。


「どうしてこうなった。」


隣で同じようにその様子を覗いている縊鬼も両腕を体の横で折り畳んで、掌を上にして持ち上げ、分からないという動作をする。彼は言った。


「どうでもいいが、大きな口を叩いておいてあの体たらく、あのアマ、後で許さねぇ。」


彼女は最初、意気揚々と男の前に飛び出して、怖がらせ、あわよくばお持ち帰りしようと、自慢の針の様な髪で男を縛り付けたのだが。その男が中々肝の座った奴で、彼は彼女を怖がるどころか、


「君はとっても演技派なんだね、でも、笑ってる君の方が僕は好きかな? 」


などという普通なら言えない臭い台詞を吐き捨て、彼女はそれに(なび)いてしまったのだ。まとめてみても意味不明な状況。


しかし、そんなことは関係ないようで、針女を抱擁していた男は、当たり前のように彼女に言った。


「ねぇ、ここからはお化け役じゃなくて、僕と一緒に廻らない? 」


彼女は彼の言葉によそよそしく頷く。


そして、二人は並んでその場を立ち去った。

店主は呆気にとられる。


「………え、手伝いは? 」


袴の肝試しはまだ、始まったばかり。



-つづく-

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