事件の決着
前回からの続きです。
《十七着目》
吸血鬼に事情を聞かれた店主は、彼にこれまでの経緯を、
「………という訳で、粕田くんは天に召されましたとさ。めでたしめでたし。」
と二行で説明した。
まぁ、流石にこれには、
「いや、どういうわけでだよ! 」
と音速のツッコミが飛んできたんだけども。
《十七着目 事件の決着》
それには構わず、
「全部話してたら長くなるだろ。お前、変質者なら『………』で察しろよ。」
と店主は呆れたようにため息をつく。
「『変質者なら』ってなんだよ! 別に変質者が全員、読心術使えるわけじゃねーよ! むしろ使える奴を見たことがねーよ! 」
吸血鬼はもう、自身が変質者であることを否定しないが、かといって適当すぎる店主の言葉に納得もするわけにもいかない。
仕方がないので、袴は説明を加えた。
「つまりだ、粕田くんは簪くんに抹殺されたってこと。」
しかし、この説明にはすぐさま、
「だから、死んでませんって! 白くてふわふわした何かが口から出てるだけですから! 」
と簪が茶々を入れる。
「嬢ちゃん、それ死んでるぜ。」
吸血鬼は来たときと同じくハンカチを口にくわえて、無表情だった。
その態度が気に食わなかったのか、簪は吸血鬼に嫌悪の眼差しを向ける。
「何適当なこと言ってるんですか! 後、それ何くわえてるんですか! 人の話中ですよ、なめてるんですか! 」
そして、怒りのままに吸血鬼の口から赤黒いハンカチを奪い取った。
急にハンカチを取り上げられた西洋鬼は、ぱちくりと目をしばたかせる。
「血を染み込ませたハンカチだけど。」
「きもっ! 」
簪は吸血鬼の言葉を聞いて、すぐにそれを店主の顔にぶん投げた。
そして勿論、店主は簪を怒鳴り付ける。
「ちょっと簪くん! なんで私の方に投げてくるわけ!? 」
だが、簪は冷静だった。
「私からの心ばかりのプレゼントです。」
「こんないかがわしい品貰って喜ぶ奴居ないよ! しかも盗品じゃん! 」
袴は吸血鬼にハンカチを乱暴に返しながらも涙目だった。そんな袴を慰めるように、吸血鬼はぽん、と袴の肩を叩く。
「旦那、俺なら貰って嬉しいぜ。」
当然、その手はすぐに振り払われたが。
「お前には聞いてないんだよ! それよりも、血の入手経路の方が問題だ、何処で誰を殺して来やがった! 」
吸血鬼は袖口からスマホを抜き出した袴が、警察に通報しようとするのを止めながら、
「なんで殺人が起こってる前提なんだよ! 少なくとも今回は殺してねーよ!? 丁度いいところに血溜まりがあったんだよ! 」
と弁明する。
まぁ、勿論そんな訳のわからない言い訳が通るわけもなく。
「そんなものあったら京都に人来ねーよ! 」
「そうですよ、分かりやすい嘘をつくよりも早く余罪も含めて罪を償ってください。」
と二人に囲まれるのだった。
そうして今にも飛びかからんばかりに睨み付ける簪と袴に、吸血鬼は必死に反論する。
「いやいや待ってくれ! なんで急に俺の罪を追求し出したんだよ、さっきまで嬢ちゃんの話だっただろうが! 」
しかし袴は冷たい笑みを浮かべて、こう言い放った。
「粕田くんは怪奇現象によって倒れた、そうだろ? 」
「現実逃避してんじゃねーよ! 」
吸血鬼は半泣きになりながら、袴の肩に掴みかかるが、店主の言葉に追い討ちをかけるように、簪が分かりやすい泣き真似を始めた。
「私、吸血鬼さんに脅されて怖くて………それで仕方なく、黙っていたんです。」
袴は吸血鬼の目を見据えながら、ゆっくりと語りかける。
「お前がやったんだろ? 」
「冤罪だっ! 嬢ちゃん、めんどくさいからって俺に罪を擦り付けるんじゃねーよ! 」
吸血鬼は簪を指差しながらきゃんきゃん吠えた。まぁ、簪はそっぽを向いて、口笛を吹いていたけど。
そこに、戸を開ける音が響く。
「やべっ! 」
音を聞いた吸血鬼は即座に翼をマントに変えた。
自室と店を繋ぐ襖は、既に吸血鬼の来訪によって半開きにされていたので、ふらふらとした足取りで敷居を跨いだ人物はすぐに分かった。
「あ、カズくんだ………。」
それはこの事件の被害者、粕田足斗だった。
続く!
この後、事件は意外な展開をみせる!?
次回乞うご期待!




