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神、ミラノ・チワーナ

「すごい、すごいぞ。力がみなぎってくる。

 これが神の力なのか。これが種族を超越した者の力なのか!」


 大きな二枚の翼に獣の毛が生えた胴体。三つに別れた尻尾に顔からはみだしてしまいそうな牙。

 獣とドラゴンを掛け合わせたようなその姿は、化け物そのものだった。


「止められなかった。お父様とお母様に約束したというのに。

 私に力がなかったせいで、弟をこんな化け物に……」


 光のドームから現れたミラノを見て、シュラノがフラフラと立ち上がった。

 その目は死んだように光を失っていた。


「おいシュラノしっかりしろ。

 ミラノを止めるんだろ!お前が止めるだろ!

 気をしっかり持ってくれよ。」


「そうだな、私が止めなければいけないな。

 そうだな、そうだな……」


 シュラノはうわごとのようにそう繰り返すと、突如シュラノの体が光を放ちだした。

 僕は、この光を知っている。

 シュラノがドラゴンの姿に戻る時の光だ。


「ダメだシュラノ!あんな化け物にかなうわけがない。

 ただのドラゴンの姿じゃかないっこない、ちょっと考えれば分かるだろ!」


 僕は必死にシュラノを止めた。

 ミラノは本当に危険だと僕の本能が告げている。

 あいつの所へシュラノを行かせてしまえば恐らくシュラノが戻ってくることはないだろう。

 それ程までに、シュラノとミラノとの間の差は歴然だった。

 それでも、シュラノは走っていった。何がそこまでシュラノを突き動かしているのか僕には分からない。

 ただ一つ言えることは、その時の僕にシュラノを止めることは出来なかったということだ。

 ドラゴンの姿に戻ったシュラノは、ミラノめがけて矢のように飛び立った。

 一体、あのボロボロの体のどこにそんな力を残していたのか疑問に思うほどのスピードだった。


「ウォォォォォォォォォォォオオオ……」


 シュラノのその叫び声は、人のそれよりも獣のそれに近いものだった。

 シュラノは鋭い牙を剥くとミラノの首へ噛み付きにかかった。

 シュラノの牙は、何か魔法を使っているのか黄色い電光を纏っている。

 ミラノはそんなシュラノを見ても防ごうともせず、ただその獣とも人ともドラゴンとも言い難い体を誇示するように立っていた。

 シュラノはそんなミラノの首筋に勢いよく噛みついた。その瞬間、ミラノの首にシュラノの牙から放たれた電撃が流れた。


「余裕を見せているつもりか。だが、その奢りが余裕が慢心がお前の野望を打ち砕くのだ。」


 シュラノはミラノの首に噛みついた口を放さずに、ミラノの背中に飛び乗った。そして、前足と後ろ足でがっちりとミラノの体を押さえつけた。

 だが、それでもミラノはシュラノを振り解こうとしない。


「ボクちんの野望を打ち砕く……出来るもんならやってみな。

 紛いなりにも神たるボクちんの兄貴なんだ、少しはボクちんを楽しませてよね。」


 その様子は余裕というよりも弄んでいると言った方がしっくりくるのもだった。

 ミラノはシュラノの事など歯牙にもかけていなかったのだ。

 相手にされていないシュラノは、それでもミラノの首にかじりついた牙を放すことなく、自分の体でミラノを包み込むようにしがみついた。

 そして、シュラノは何かを決意したかのように目を閉じるとこう唱えた。


自縛爆ビッグバン


 その瞬間、僕の視界は真っ白になった。僕の眼球が処理しきれない程の光が僕の目に飛び込んできたからだ。

 だが、僕は白くなる視界の片隅で、シュラノの体が爆弾のように破裂するのをしっかりと見ていた。

 何故その光景を見ることが出来たのか、僕には分からない。

 ただ、その光景を目にしたところで僕に出来ることはなく、まもなく僕の体は強烈な爆風に飛ばされた。


 爆発から数分が経った。一体どれだけ飛ばされたのかは分からない。

 真っ白だった僕の視界は徐々に色を取り戻し、耳もちゃんと聞こえるようだ。

 僕は大きな木の幹に体を預け、いつかのように何も出来ずに目の前の光景を眺めていた。

 シュラノが起こした爆発は、僕の想像以上に大きく、ミラノによって壊されたチワーナ家の残骸は跡形もなく消え去り大きなクレーターとなっていた。

 そのクレーターからは、爆発によって巻き上げられた砂塵と煙がキノコ雲となって空に上っている。

 シュラノが居た爆発の中心部は、未だそのキノコ雲の根本に隠れて見えない。

 シュラノは無事なのか?ミラノを倒したのか?勝負の軍配は一体どちらに上がったんだ?

 僕は結果の分からないこの勝負の結末に不安を抱いていた。


「シュラノ……どうしてあんな事したんだ。」


 僕の口から驚くほど弱々しい声が漏れる。

 同時に、頬に涙だ伝うのを感じた。爆発の熱線によって潤いを失った頬に伝う涙は、砂漠に流れるワジのようにすぐに干上がってしまう。

 だけど、すぐに涙の川は氾濫し濁流となって僕の頬を流れた。


「どうしてあんな馬鹿なことしたのさ。あんなの攻撃じゃないよ。ただの自爆だよ。

 そんな事して僕が許すとでも思ってるのか。ミラノを倒したって、君が死んじゃ意味ないじゃないか!」


 涙の堤防が崩れると、箍が外れたように言葉があふれ出た。

 馬鹿野郎、馬鹿野郎と立ち上るキノコ雲見向かって何度も吠えた。

 シュラノの馬鹿野郎!ミラノの馬鹿野郎!僕の馬鹿野郎!世界の馬鹿野郎!

 瞼から溢れた涙は、頬を伝い地面に落ちた。落ちた涙は地面に吸い込まれ、跡には少し色の変わった土が残った。

 僕はその変色した土を思いっきり殴った。

 悔しさともどかしさと悲しみが抑えきれなくなっていた。



 そんな時、僕は僕に近付いてくる足音を聞いた。









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