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夢オチからのシリアス展開

「夢……オチ?」


 僕は、あたりを見回してそう呟いた。

 ここは、灼熱の地獄ではない。

 シュラノの家の人間用応接室だ。


「何だったんだよあの夢は……。

 あんな馬鹿な夢を見るなんて、相当疲れてるんだな。」


 僕は大きく伸びをしてから立ち上がると、軽くストレッチをして体をほぐした。

 首と肩の所の骨がポキポキと鳴る。

 座ったまま寝ていたので体が固まってしまっていた。


「それにしても、夢でもシュラノは偉そうだったな。」


 シュラノじゃなくて、シュラヌだったっけ?そんなことはどうでも良いか。

 とにかく、あの悪魔のコスプレをしたシュラノの顔は本当に憎たらしかった。

 と、そんなことを考えていると、シュラノがまだ戻ってきていないことに気が付いた。


「あれ?結構な熟睡感があったんだけどな。

 お茶入れるのにこんなに時間がかかるなんてこの家どんだけ広いんだよ。」


 その時僕は、シュラノが帰っていないのをこの馬鹿でかい家のせいだと考えていた。

 だけど、その考えは間違っていたのだった。

 この時、シュラノの身に大変なことが起こっていたことを、僕は知らなかったのだ。


♦♦♦♦♦


「いくら何でも遅い!」


 僕が異変に気が付いたのは、それから暫くしての事だった。

 この部屋には時計がなかったし、僕も時計なんて持っていなかったけから正確な時間は分からなかったけど、一時間近くシュラノは帰ってこなかった。


 もしかして、僕のこと忘れて昼寝でもしてるんじゃないか?それともトイレで粘ってるのか?

 色々な理由を考えては見たけど、どれも一時間も席を空ける理由にはならなかった。

 流石に僕の忍耐も限界に達したので、僕は部屋を出てシュラノを探すことにした。

 勝手に人の家をうろつくのはマナー違反かとも思ったけど、人を招いておいて一時間も待たせる方が悪いと結論付けて僕は立ち上がった。


 そして、応接室の扉のドアノブを握った。




 "その瞬間、壁に掛けられていた写真が全て床に崩れ落ちた"



 一瞬の出来事だった。

 僕の手の指先の薄い皮膚がほんの少し触れただけで、ゴォォォと音を立てて写真が崩れ落ちた。

 いや、写真がと言うのは正確ではない。正しくは、壁が崩れ落ちたのだ。

 僕が今まで居た部屋が、まるで砂か灰で出来ていたかのようにあっさりと崩れ去ったのだった。


「なっ!」


 僕は突然のことに逃げる暇もなく、腕で頭を庇うことしかできなかった。

 身構える僕の両腕に天井の残骸が当たる。

 辺り一帯は砂塵が舞い上がり、目が開て居られなくなった。

 僕は目と口を閉じると、部屋が崩れる衝撃が収まるのを待った。


 するとその時、何時か聞いた笑い声が聞こえてきた。


「あはははははは、無様無様。

 君の力じゃその程度のことも防げないんだね。弱すぎて逆に笑えるよ。

 兄貴も、こんな軟弱君がボクちんを倒せると本気でそう思ってたのかな?

 ま、今となっては聞けないけど。」


 目を開いていなくても、僕にはその声が誰の物なのかすぐに分かった。

 この声はコーヒの館で聞いた、ミラノの物に間違いなかった。


「お前はミラノだな!

 なんでお前がここにいる!一体何をした?」


 砂塵が収まりかけたのでうっすらと目を開と、やはりミラノの姿が目に映った。


「おいおい、ここはボクちんの生家でもあるんだぜ?

 ボクちんが居てなにが悪い。」


 ミラノは清々しいほど端的にそう答えた。

 確かに、言っていることは筋が通っている。ただ、何かが決定的に間違っている気がした。

 そう、思い出した。この男はこの世界を滅ぼそうとしているのだ。

 そんな男が里帰りなどするはずがない。


「お前がここに居ることは、この際置いておくよ。

 だからもう一つの質問に答えろ。お前は一体何をした。」


 ようやく砂塵が収まったので、僕は目を見開き、ミラノを睨みつけた。


「そんな言わずもがななこと聞いてくるなんて、君って力だけじゃなくて頭も弱いんだね。

 ボクちんが何をしたのか知りたいのなら、黙って周りを見回せばいいよ。」


 周り?

 ここはシュラノの家の中なんだから、周りは廊下と壁なんじゃ?

 そう思って見回した僕の目に、衝撃的という言葉では言い表せないほどの光景が飛び込んできた。

 結果から言うと、あれだけ大きかったシュラノの家が、丸ごと全部大量の瓦礫へと変わっていたのだった。


「な、なんだよこれ。何がどうなってんだよ。」


 周囲360°見渡す限り全てが崩れ去っていた。

 まるで、僕が部屋に入っていた数時間で、部屋の外では一億年近くたってしまったかのような変わりようだった。

 僕は何度も何度も自分の目を信じられず辺りを見回した。

 それでも、廃墟と化したシュラノの家の景色が変わることはなかった。


 驚き戸惑う僕を見て、ミラノはにやっと笑うと狡猾な声でこう言った。


「さっきも言っただろ、ここはボクちんの家でもあるんだって。

 自分の家を壊してなにが悪い。他人の君に口出ししてほしくないな。」




 このとき僕は初めてわかった。

 コイツは本当に危険だと。














最近総合ポイントが下がっています。

書き続けるためのエネルギーが不足しています。

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