シュラノとミラノの昔話
王族警護隊第四詰め所を後にした僕とシュラノは、近くにあった山に登った。
何故わざわざ山へ登ったかというと、シュラノがドラゴンの姿に戻るためだ。
シュラノは人目がある場所でドラゴンに戻ることを頑なに拒んだ。
ドラゴンのシュラノはかなりの巨体だ。目立ちたくないという気持ちも分からなくもなかったので、僕はシュラノの我が儘に付き合った。
第四詰め所に拘束されていたコーヒは置いていくことにした。
僕は色々と聞きたいことがあったのだけど、シュラノがそれを止めた。
コーヒがいつ暴れ出すか分からないから、連れて行くメリットは無いと言うことだった。
と、その様な過程があって、僕は今シュラノの背中に居た。もちろん、ドラゴンの姿のシュラノだ。
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「これから向かうのは、私の家だ。
浩介に全てを話すには、やはりそこが一番だと思うからな。」
僕を背中に乗せ、雲の上を高速で飛行しながらシュラノは、ゆっくりと話し出した。
雲の上は地上よりも空気が冷えていて、顔に当たる凍えた空気のせいで目が開けれない。
目を閉じた僕の耳にシュラノの声が不思議なほどハッキリと届いた。
すぐ横で大きな二枚の羽の生えていない翼が、風を切る轟音がしているはずなのに、僕の耳には届かない。
ピンと張り詰めた冷たさの中で、僕はシュラノの言葉に耳を傾けた。
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すべてを話すには、まず私とミラノについて語らなければならないな。
前にも話した通り、私は竜族の有力一族チワーナの生まれだ。
竜族の寿命は平均して1000年。私は今、366歳で弟のミラノは356歳だ。
私達兄弟は、ドラゴンの兄弟にしてはお互いに歳が近いこともあり、とても仲が良かった。
私達は、父親が仕留めてきた大蛇や、大家守の朝食を食べると、毎日日が落ちるまでいろんな空を飛び回った。
大亀の湖、ドワーフの洞窟、巨人の森、エルフの谷、人間の街、妖精の花畑……
この世界に、私達兄弟が足を踏み入れたことのない場所など無いほどだ。
だが、私達のその行動こそがそれから起こるすべての災悪の原因となったのだ。
あれは、暗くて分厚い気性の荒い雲が空を覆い隠していた日のことだ。
私とミラノはその雲の中を競走していた。
視界は雲で遮られ、体は雲の中の水滴でずぶ濡れ、だがその悪条件が私達の気持ちを妙に高ぶらせた。
私とミラノは、調子に乗って雲のより厚い場所へ向かって飛んだ。だが、それがいけなかった。
より厚く、より暗い雲を探している内に、私達はカミナリ雲へと入ってしまっていた。
その雲へ入った途端、辺りが急に明るくなったのだ。
夜の闇のように暗い雲の中で、まるで昼間のような光が私達を包んだのだ。
私がカミナリに打たれたと気付いたのは、次に目を覚ました時だった。
私はまず、焦げ臭い臭いで目を覚ました。
そして、その次に二つのことに驚いた。
まず一つ目は、体の感覚だ。さっきまで空を飛んでいたはずなのに、私の体には地面の感触があったのだ。
つまり、私はあのカミナリに打たれ意識を失い、真っ逆様にこの地面に叩きつけられたのだ。
幸いなことに、その地面は降り続く雨の影響でひどくぬかるんでいた。そのおかげで私は一命を取り留めたのだ。
だがその時、私にはもう一つ別の命の危機が迫っていた。
それが二つ目の驚きだ。
二つ目の驚き、それは音だった。
初めは地面に打ちつけられる雨音だけが響いていた。
だが、しばらくしてその雨音の間から大勢の足音が聞こえてきた。
本当に多くの足音で地響きがするほどだった。
私は痛む瞼をうっすらと開き、近づく足音の正体を確かめた。
その時には、地面に横たわる私とミラノの周囲をその足音が取り囲んでいた。
私はその正体を目の当たりにした瞬間、背筋が凍りついた。
足音の正体、それは人間だった。
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「どうして人間だったら背筋が凍りつくのさ。
人間と竜族は友好関係を築いてるんじゃ無かったのか?」
高速で飛行するシュラノの背中の上で、僕は風に負けないように大きな声で叫んだ。
ずっとシュラノの話を聞いて黙っていたせいで口が動きにくい。
「ああ、確かにそう言ったな。
だが、それはあくまでも"今"の話だ。
その当時、今から250年以上前のこの世界は乱れに乱れていた。
人間と竜族は500年続く戦争の中にあったのだ。」
さぁいよいよ物語の核を書く事になりました。
正直、ワクワクしてます。
どうか、最後までお付き合い下さい。




