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能力が暴走しました

※シュラノの笑い声が不快に感じる事がございます。ご注意下さい。

「い、良いではないかププッ……。

 格好良くてプッ、スタイリッシュな名前ではないかププッ。

 『恥苦笑』なんと、ぴったりな名前だププッ。」


 シュラノは笑いを必死に堪えながら(堪えれてないが)言った。

 てか、この名前考えたのシュラノなんですけど。

 だけど、シュラノはそんなこと意に介さず、僕の能力に付いた変な名前をバカにしていた。

 僕は、手に持った木の葉をくしゃっと潰すと、シュラノを向き指を構えた。


「そんなに笑いたきゃ思う存分笑わせてやるよ。」


「お、おいそれだけは」


 シュラノの懇願を無視し、僕は指を動かした。


「あひひひひひひひひひひあひひひひひあひひひひひ

 も、もうやめあひひひひひひひひひひ

 私が悪かったあひひひひひあひひひひひあひひひひひ……」


 ノンシュガー家の裏山で、一匹のドラゴンの笑い声が響いた。

 その声は、周囲の山々に木霊し、何とも言えない不気味な音になって帰ってきた。

 シュラノの笑い声が何十にも重なって帰ってくるのだ、不気味に成らないわけがない。

 シュラノの気持ち悪い笑い声のせいで、頭が痛くなってきたので、僕は渋々指の動きを止めた。


「あひひひひひも、もうやめてくれあひひひひひあひひひひひ」


 ……指を止めた。


「あひひひひひあひひひひひもう罰は受けたあひひひひひあひひひひひ」


 止めてるよな?うん、僕の指はピクりとも動いていない。

 指が動いていないという事は、もうシュラノが笑うはずがない。


「あひひひひひもう限界だあひっ殺せ!あひひひひひいっそ殺してくれ。」


 僕がくすぐっていないのにシュラノは笑い続けている。

 と、いうことはつまり……。


 シュラノが壊れた!!


「お、おいシュラノ大丈夫……じゃないよな?

 どうしたって言うんだよ。僕はもうくすぐってないぞ。もしそれが演技なら早くやめろ時間の無駄だ。」


「あひっあひっ演技なんかあひっじゃない。

 なぜかあひっまだくすぐったいのが収まらないんだあひっ。」


 シュラノは、笑うと言うより痙攣に近い声を上げながら、かすれ気味の声で言った。

 よほど苦しいのか、顔からは脂汗が滲んでいる。

 だが変だ、まだくすぐったいのが収まらないというのは、おかしい。

 だって、僕はもうくすぐっていないのだ。

 恥苦笑を発動させていたのは、初めの数秒だけ。

 だが、シュラノは既に五分以上笑い続けている。これは本当におかしな事だ。

 今までは、擽るのを止めると相手も笑いを止めた。今朝だって、中庭でシュラノをくすぐった時はすぐに笑いは収まった。

 と、言うことはこの変化が起こったのは、今朝から今にかけての間で、と言うことになる。

 ……うわっ、めっちゃ心当たりあるんですけど。


「もしかして名前付けたから?

 名前付けただけで、こんなにパワーアップするものなの?」


 返事はない。

 そりゃそうだ、シュラノはもう笑うことすら出来なくなって、青い顔して泡を吹いている。

 そろそろ本格的にヤバそうだ。

 でもなぁ、止め方分からないしなぁ。

 いきなりパワーアップされても、困るっての。

 元々得体の知れない能力だったのが、恥苦笑と言う名前を得ることによって、持続時間、笑わせ度が共に協力になっている。

 あ、笑わせ度というのは、能力を行使した相手の笑い方の度合いだ。たった今思いついた。

 と、そんな事を考えている間にもシュラノの容体?はさらに悪くなっていた。


「あ……あひっ、あひっ、あひっ……」


 もうこれは笑っているとかではなく、しゃっくりをしているかのようだ。

 これをどうやって止めろと言うのだ。


「笑いよ止まれ!

 止まれ恥苦笑!

 恥苦笑解除!

 笑うの笑うの飛んでけ!」


「あひっ……あひっ…………あひっ………」


 ダメだ止まらん。

 停止の呪文でもあるのかと思って幾つか叫んでいたけど、どうも違うようだ。

 というか、さっきよりもさらにしゃっくりに近付いたな。

 こうなれば、ものは試しだ。

 しゃっくりを止める方法を実践してみよう。


「わっ!!」


 まずは、大声を出してびっくりさせてみた。


「あひっ……あひっ……」


 ダメだった。

 となると、次の手は……


「お~いシュラノ、息を止めろ限界まで止めてみろ。」


 だが、シュラノは息を止めない。

 まぁ、当たり前と言えば当たり前だ。

 シュラノは、只今絶賛呼吸困難中なのだから。

 となると、次の手は……


「コップの上に箸を十字にして置いて、それぞれの隙間から水を飲めばしゃっくりは治まるんだけどなぁ。」


 これは、お婆ちゃんの教えだ。

 事実、僕はこの方法で毎回命を救われている。

 しかし、ここにはコップが無い、箸も水もない。

 となれば、最終手段だ。


 パチンッ


 万策尽きた僕は、ヤケクソになってシュラノの頬を平手打ちした。

 元気ですか~?!でおなじみの闘魂注入と言う奴だ。

 無論、僕はプロレスラーではないので、大した威力はだせない。

 それでも、何もしないよりはマシだろう。


 パチンッパチンッパチンッパチンッ


「シュラノ目を覚ませ!」


 パチンッパチンッパチンッパチンッ


「起きろって」


 パチンッパチンッパチンッパチンッ


「もう笑うな」


「だ、大丈夫だ、もう笑いは止まって……」


 パチンッパチンッパチンッパチンッ


「田舎のお袋さんが待ってるぞ。」


「私の母はもうしん……」


 パチンッパチンッパチンッパチンッ 


「寝るなー寝たら死ぬぞ!」


「私は寝てなんかいな……」


 パチンッパチンッパチンッパチンッ


「立て立つんだジョー」


「私の名はシュ……」


 パチンッパチンッパチンッパチンッ


「シュラノ、カムバァ~~ック。」


 僕はそう叫びながら、シュラノの頬を叩こうと右手を挙げた。

 しかし、その右手は突然伸びてきたシュラノの手によって阻まれた。

 驚いてシュラノをみると、真っ赤に腫れて少ししか開かない目の隙間から、ギロッと光る眼光が覗いた。


「いい加減にしろぉ!!」


 シュラノの笑いが止まった。












なんだかシュラノが気持ち悪いことに……


こんなはずではなかったのに……


シュラノはハードボイルドキャラに成るはずだったのに……


思い通りに進みません。

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