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修行パートってどうしてつまらなくなるのだろう

「しゅ、修行?

 どういう意味だよ。なんで僕が修行なんかしないといけないのさ。」


「それは浩介が一番わかっているのではないか?」


 僕の目の前に立ちはだかったシュラノは、いつものふざけた様子ではなく、昨日一瞬見せたあの真剣な顔で迫ってくると、訳知り顔で僕の顔を覗き込んできた。

 身長の高いシュラノが僕の目の前に立つと、僕の頭はシュラノよ肩の位置になるので、シュラノが僕の視線に合わせた格好だ。

 僕はそれがすごく屈辱的に感じた。


「なんだよ!シュラノは何が言いたいのさ!

 言いたいことがあるならはっきり言ったらどうなんだ!」


 同じ高さにあるシュラノの瞳をにらみつけ、僕は怒鳴った。

 すると、シュラノが鼻と鼻とがぶつかりそうな距離まで顔を近づけてきた。


「だから言っただろう。

 それは私より、浩介がよく知っているだろ、と。」


 僕が知ってる?

 僕はシュラノの言葉を心の中でなぞった。そして気が付いた。

 その瞬間、僕はゆっくりと自分の両手を見た。


「やっと気が付いたようだな。まったく、お前は本当に鈍い男だ。」


 シュラノは顔を離すと、ふぅと息を吐いた。

 僕はそんなシュラノに、疑問を投げかけた。


「でも、シュラノはさっき修行がどうのって言ってたよね?

 修行するったって、あの能力もう僕には無いんだよ。それなのに、何を修行するって言うのさ。」


 そうだ、僕にはもう、ドラゴンのシュラノを屈伏させるような能力は無いのだ。

 能力を持っていないのに、修行なんてしたって意味なんか無い。


「いや、あるんだ。浩介の能力はまだ存在している。

 ただ、あの幼女がかけられた呪いの方が、浩介の能力よりも強かったのだ。だから、能力は発動しなかった。ただ、それだけの事さ。」


 シュラノは、やたらと確信を持った声でそう言った。


「本当に?」


「ああ、本当だとも。」


 シュラノは大きく頷いた。

 その仕草。その表情。その声。

 どれをとっても、シュラノが嘘を吐いているようには見えなかった。


「分かった。シュラノを信じるよ。」


 僕はそう言って、シュラノに手を伸ばした。


「ん?なんだ握手なんて改まって。」


 シュラノはそう言いながらも、少し嬉しそうに僕の手に手を伸ばした。

 だが、僕はその手をひょいと交わすと、シュラノに目標を付けた。

 そして━━


 こちょこちょこちょ


 ノンシュガー家の中庭で、一人の男性が失神しました。


♦♦♦♦♦


「まったく。私が折角真剣に話してやっているというのに、あんな事をするなど……」


 シュラノはまだ怒っていた。


「そんなに怒るなよ。僕はシュラノの言葉を信じて行動しただけなんだから。」


「だから、信じたからと言ってなんで私をくすぐるのだ!」


「だって、能力を確かめるにはそうするしかないだろ?」


「確かにそうだが……」


 シュラノはそう言って黙ってしまった。

 どうやらこの口論は僕の勝ちのようだ。

 話の主導権を握れたので、僕は本題を切り出した。


「ところで、修行ってどうするんだよ?

 僕の能力の正体は、シュラノも分からないんだろ?

 分からないものをどうやって鍛えるって言うのさ。」


 僕の能力が消えていなかったのは分かった。だが、もう一つ大きな問題がある。それが、これだ。

 自分で言うのもなんだが、僕の能力は得体が知れない。

 使っている僕自身も、どういった原理で能力が発動しているのか分からない。

 コーヒにかけられたものが呪いだと見抜いたシュラノですら、僕の能力には見当すら付いていない。

 グルグルした実を食べた訳でも、学園都市で超能力を学んだわけでもない。

 気が付いたら身についていたのだ。

 そんな能力をどうやって上達させようと言うんだ。


「まぁ、確かに私もその能力はさっぱり分からない。

 だが、私には浩介の能力を知る方法がある。」


 シュラノは悪ガキのようにニヤッと笑った。


「……方法?」


 なんか、いやな予感しかしないんだが。


♦♦♦♦♦


「ここでは話もしづらいし、修行にも向かんな。」と、シュラノが言ったので、僕とシュラノはノンシュガー家の裏に広がる山へ向かった。

 裏庭と山との間に塀がなかったので、多分ここもノンシュガー家の一部なのだろう。

 どんだけ広いんだこの家。


「さあ、そろそろ教えて貰おうか、シュラノの言う修行って奴を。」


「まぁまぁ、そう焦るなよ。

 まずは、これを見ろ。」


 シュラノはそう言って、懐から朱色の巻物を取り出した。

 そこには筆で文字が書いてある。読めないけど。

 見たことが無い字で書かれている。いや、もし読める字で書いてあったとしても読めなかっただろう。

 なぜなら、その巻物は今にも崩れてしまいそうなくらいボロボロだったからだ。


「なんだよその巻物。えらく古そうだけど。」


「そりゃ、古くて当たり前さ。なんせ、この巻物は何千年も昔に書かれたものだからな。」


 シュラノはそう言うと、ゆっくりと巻物を開いた。










先日、この話の完結までの大筋を決めました。

これで、物語が作者の予想外の方向へ進むことはなくなると思います。

あ、更新スピードは変わりません。

これからものんびり更新していきます。どうかお付き合い下さい。

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