異世界のお屋敷で幼女に出会いました
幼女がいた。
驚いで二度見したが、やはりそこには幼女がいた。
幼女は、大きな天蓋付きのベットがある部屋にいて、窓際に置かれたロッキングチェアに座っていた。
身長が足りないせいで足が床に付かずふらふらと揺れている。
弓形にしなった形をした脚が、幼女の足に合わせてゆっくりと揺れていた。
「お、おいミミ、まさかとは思うけど、ほんと、そんなことは無いと思うんだけど、一応聞くよ。
この子がご主人様な訳ないよね?」
僕はさっきの質問同様、分かりきっていることを聞いたつもりだった。
だって、ミミの話からするとご主人様はかなりのご高齢のはずだから。
だけど、ミミの答えは僕を裏切った。
「いいえ、この方こそが私のご主人様、ノンシュガー・コーヒ様です。」
ミミは、ハッキリとその幼女を見てそう言った。
そのロッキングチェアに座る幼女こそが、ミミを広い、育てた、貴族の方々から大婆様と呼ばれている、大貴族だと。
「……はぁ、何言ってるの?そんなわけ無いじゃん。
だってあの子、どう見ても小学一年生くらいだよ?あ、小学一年生ってのは6歳くらいなんだけど。
ミミ、君は何歳なの?
14歳?それじゃあやっぱりおかしいよ、なんで6歳の子が君を拾うのさ。
なんで6歳子が大婆様なんだよ。
ミミ、君熱とか無い?じゃあ体調が悪いとかは?
もしかして、幻覚が見えるような薬には手を出してないよね?
なんでもいい、とにかく横になった方がいいよ。
君は疲れているんだよ。」
そうだ、ミミは疲れているんだ。
山賊に襲われるという、かなりの心的外傷を負う出来事に見舞われ、気が動転しているのだ。そうに違いない。
そう思って、部屋にある天蓋付きのベットを勧めたが、ミミは頑なに首を振った。
「私は、確かに疲れてはいます。ですが、気をおかしくしてはいません。
ちゃんと正気で、あのお方がご主人様だと言っているのです。
先程、見ていただかなければ分からないと言いましたよね。その理由がこれです。
ご主人様の姿を知らない方にいくら説明しても信じてはいただけないと思ったので。」
ミミはそう言って、さっき説明しなかったあの夜の出来事を話し出した。
♦♦♦♦♦
「始めにドンッという振動がありました。初めは岩にぶつかってしまったのかと思ったのですが、いつまで経っても走り出さないので不思議に思っていました。
それに、もし岩か何かにぶつかったのだとしたら、護衛の方が何か言ってきても良いはずです。しかし、それもありませんでした。
今思えば、とても普通ではない状況でした。でも、その時私達はチャーラー皇太子様の生誕祭の疲れもあり、その状況にあまり疑問を持ちませんでした。
私達が異変に気付いたのは、それから10分程がたった時のことでした。
まず私は、辺りがとても静かなことに気付きました。
私達の周りには、十数名の護衛の方がいらっしゃったはずです。それなのに足音はおろか、話し声や息をする音ですら聞こえないのです。
辺りは、不気味なほどに静かでした。
そのことに気付いて、やっと私とご主人様は何かが起こっていると気付きました。
それと共に、言いようのない恐怖にもかられました。
まるで、真っ暗な何もない闇の底へ投げ出されたような、そんな感覚に陥りました。
私達は、どうしても屋形から出る気になれず、二人で身を寄せ合い震えていました。
その時です。急にキーンという耳鳴りがして、どこからか、嗄れた低い声が聞こえてきたのです。
『世界を変えし二つの心を持つもの、こんな所で会えるとはな。
初めての出会いから千年。貴様と相対するのも、これで五度目、百年ぶりだ。
今回こそは、貴様らのその力、我が物にせん。』
確かにそう聞こえました。
その後のことは、本当に覚えていないんです。
急に意識が朦朧として……。
気付いたときには、屋形の中でご主人様と眠っていました。
その時にはもう、ご主人様はあのお姿に。」
おいおいおいおいおい……。
急に異世界冒険らしくなってきやがったじゃないか。
本当に飽きないな異世界は。
ドラゴンに出会うし、変な能力身に付くし、山賊には襲われる。そして、今は厄介そうな問題を抱えた美少女に助けを求められている。
こりゃあ、家への帰り方を見つけるのは当分先になりそうだな、と僕は心の中で思った。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
最近アイデアに詰まり気味です。
頑張って書いてますが、正直パワーダウン中です。
もっといい文章を書けるよう、これからも頑張ります。