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雨宮、消しゴム貸して。

作者: 柏木 柚葉

◆登場人物


雨宮 七虹(アマミヤ ナナコ)

河本 悠(カワモト ユウ)

「雨宮、消しゴム貸して。」

「また?!あんた、持ってくる気ないでしょ?」

「ごめんって!ついつい忘れちまうんだよ...。」

「ったく。明日はちゃんと持ってきてよ-?」

「ほ-いw」


 こいつ...。

絶対持ってくる気ないな。

たぶん、一生持ってこないだろう。

毎日毎日消しゴムを忘れてくるこいつ。

席替えで隣になって、クラス委員長もやってるしいい人かと思ったのに消しゴムだけは忘れてくる。

時々ワザとなんじゃないか、って思うくらい。

しかも遠慮なしに使うっていうね。

貸すのやめよっかな、って思うけど、私はなぜか貸してる。

たぶんそれは、河本が好きだから。

河本との、たった一つの接点だから。


「ねぇ、なんで河本は私にばっか消しゴム借りてくるの?」


 一度だけ、こう聞いたことがあった。

少しだけ期待した。

“河本が好きだから。”って。

でも、そんなわけなかった。


「は?そんなん決まってんじゃん。お前くらいしか借りれる人いないから。)

「へ?」

「だって人の消しゴム借りたら遠慮して使わないといけないだろ?だけど雨宮の場合遠慮しなくてもいいからさ!」


人のことをなんだと思ってるんだ。

その時点で失恋したと思った。

私は河本の恋愛対象には入っていない。

普通、好きな子の消しゴム遠慮なしに使えるわけないじゃん。

失恋してるってわかってるけど、やっぱ消しゴムは貸しちゃう。

だってそうでもしないと河本と喋れない。


「雨宮、消しゴム貸して。」

「今日はあと1回だけね。」

「えぇ?!なんで?!あと2時間も授業あるのに!!」

「持ってこないあんたが悪いでしょ。私だって使うんだから。消しゴムすぐになくなると困るの。」

「え-。まぁそうだけどさぁ...。」


 毎日のように私に消しゴムを借りてくる河本。

だけど、ある日を境に急に借りてこなくなった。

どうしてか思い当たることもなく、思い切って聞いてみた。


「今日も消しゴム借りないの?」

「...だってお前、俺に消しゴム貸すの嫌なんだろ?」

「え?」

「この前、新谷(ニタニ)と話してたじゃん。休み時間に、俺が消しゴム貸してって言ってきて、ウザい。って。」


そういえば、そんなことを話した気がする。

あれは、失恋したことを葉菜(ハナ)に愚痴ってただけで...。


「ウザいっていうか...。」

「でも、嫌なんだろ?ごめんな、今まで借りてばっかで。ありがとう。」

「えっ...。」


 それからというもの、本当に河本が消しゴムを借りてくることはなくなった。

それがなんだか寂しくて、切なくて。

河本は、話しかけても来なかった...。


 そんなある日、河本が急に話しかけてきた。


「今日の放課後、話あるんだけどいい?」

「え?あ、うん。」

「じゃあ体育館裏で待ってるから一人で来て。」


話?

なんだろ...。

告白...なわけないし。

ひとまず、放課後に体育館裏に行ってみた。


「あ、来てくれてありがとう雨宮。」

「うん...。えっと、話って何?」

「あのさ...その...まだ早いんだけど、誕生日おめでとう。よかったらこれ、受け取って欲しい。」

「えっ?」

「明後日の日曜日、雨宮の誕生日だろ?明日から三連休だし、早いほうがいいかなって思って。」

「え、でもなんで?」

「...わかんないの?」

「う、うん...。」

「わかんないなら、教えてやるよ。それは、俺がお前を好きだから。俺と、付き合ってください。」


顔を真っ赤にして河本はそう言った。

私はなぜだか、涙がこぼれ落ちた。

嬉しくて泣いたのか、悲しくて泣いたのかはわからないけど。


「お、おい?!何で泣いてんだよ?」

「わかんないっ。でも、ありがとう...。私も、河本が好き。」

「え、マジで?」

「うん。ずっと前から。」

「じゃあ...。」

「これからよろしくね。恋人として。」

「あ、ありがとう。その...プレゼント、今開けてくんねぇか?」

「う、うん。」


小さな箱に入っていたプレゼントの中身は、なぜか消しゴムだった。

しかもご丁寧に3個も。


「け、消しゴム?」

「いや...その...。今まで借りてばっかでさ、何か消しゴムにした。」

「あははっwわけわかんないしwっていうか、こんなことするなら自分のために持ってきなよw」

「俺は持ってこねーよ?少なくとも、お前と席が近い間は。」

「えっ?!」

「その間はずっと、お前に消しゴム借りる。」

「何それw真顔でそんなこと言わないでよw」

「俺がお前にあげた消しゴムを、俺がお前に借りる。」

「バカみたい。っていうか、完全なるバカだね。」

「別にいいじゃん。」

「というかそれって、私損してるだけじゃん!!」

「細かいことは気にしない~。」

「ひどっ!」


それでも嬉しかった。

恋人になって、これから接点は増えるだろうけど、

消しゴムつながりの接点がなくならないことは、なぜか嬉しかった。


 彼は毎日私にこう言ってくる。


「七虹、消しゴム貸して。」

読んでいただきありがとうございました。

相変わらずの駄作ですが...。


ちなみに、悠(河本)の最初のセリフと最後のセリフが違うことに気付いてもらえたでしょうか?

最後は名前呼びにしてみました(付き合ってるので)



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