もしかして、あなたもグルなの?
香さんは果たして・・・
「ちょっと家出てるけど・・・どうしたの?」
電話を掛けてくるにしてもタイミングが良すぎて「岡崎 樹」ともグルなんじゃ?と疑ってしまう。
まさか一緒に居るなんて事はないよね?だって香は和合さんと結婚式の打ち合わせをするって一緒にいるはずなんだから、そんな事は無い事を祈るしかないか・・・
何しろ香は好奇心の塊みたいな所があるからなぁ。心の中で溜息を吐いて香の返答を待った。
「亨がね、祥子も追っかけ式を挙げるからいろいろ聞いてみてもいいんじゃないかって言うから電話してみたんだけど、今、岡崎さんと一緒にいるの?」
亨ってのは和合さんの事だから、とりあえず「岡崎 樹」と一緒に居る訳じゃないことにホッとした。
でも、こちらとしては一番聞かれたくない事を聞かれて言葉に詰まる。別に誰といてもいいんだろうけど、一人で居るって事は問題だったかな・・・。
下手にワンルームマンション借りて一人でいるなんて言ったら、きっと乗り込んで来られるのは避けられないだろうし、そんな事になったら、すべての事を暴露しなくちゃいけなくなる。そんな事になったら大問題になるのは間違いない。
うん。さっき買い物してたからウインドウショッピングしてたって言っても、あながち嘘でもないし、そういう事にしておこう
「いや、今日はちょっとウインドウショッピングの気分だから一人でブラブラしてただけ。」
冷や汗をかきながらそう言うと
「そっかぁ。ごめんね。最近誘えなくて。でも、あの占い当たっちゃったんじゃない?」
嬉しそうに笑う香がうらやましい。あり得ない話に、つい眉間にしわが寄ってしまう。
もし、私が本当にそう思っていたら、どんだけおめでたい奴なんだか。「岡崎 樹」にはお見合いの日以来話したことも無い。もっとも話したくもないから困りもしないけど。お互いがお互いを「利用し、利用される」関係だからそれでいいと思っている。
「そうかもね。」
思ってもいないセリフを親友に吐くのには些か心が痛むけど、仕方ないか。
「ところでね、もうドレスとかブーケとか決めたの?」
ドレスを決めるのもブーケを決めるのも二人ですると思っているのか、それと私が選んで押し切ると思ってるのか、香の考えをいまいち掴めないけど、決める時期に来てる事だけは確かなんだな。漠然とそう思って、
「まだ完全に決めてはいないんだけど、希望はね・・・」
昔みた映画の主人公が着てたウエディングドレスを思い描いてみる。私だって女の子だもん素敵なものを選びたい。
でもブーケは持たずカラーを持ちたいと思ってる。
カラーは海外ではお葬式に使う花らしいから、人生の墓場に丁度いいんじゃない?日本ではそんなこと関係なさそうだから、ささやかな私の嫌がらせにあの人は気付くかな?
香にも本当の事は言えないけど。話しながら一人ニヨニヨしてると
「だってさ。どう思う?」
「んーそうだなぁー」
って誰と話してるのよー。さっきからやたら復唱するなぁと思ってたら、誰かに聞かせてたって事?
香さんと一緒にいるのは誰なんでしょう