一応の目途は立てておかなきゃいけないよね?
悶々としながら隠れ家に着いて
「取り合えず状況の確認してみなくっちゃ」
とバックからボールペンと手帳を出してみたけど、こんな小さいメモじゃいくらあっても足りなさそうで、ちょうど式場のお姉さんがくれた今日の打ち合わせとか書いてある紙の裏側に書いてみた。
「まず、息子さんが末期のガンだってこと。まったく、あれだけ体には気を付けて具合悪いときはすぐ医者に行けって言ったのに、もう。それから後継者が居ないって事。それだって従業員とか雇えばお願いできたかもしれないのに一人で全部やろうとするから。えーと、元々あの店はたしか借り店舗だから継続で借りることは難しいかも知れないって事。まあ、それはしょうがないかな。で、たぶん、息子さんの事だからあんな事言った手前私に直接は連絡出来なくているって事。何かあったら連絡してね。って言ったのに。うん?でも、先輩ってどうして息子さんと知り合いなんだろ?まあいいや。とにかく私、開業するにしたっていくら持ってる?あー結婚するって言わなきゃよかった。それだけでいくらお金浮いただろ。あー失敗した。大体今から婚約解消してなんて言って出来るのかなー。絶対に無理っぽいよね。それに違約金山ほど請求されたらどうしよう。」
もう書き切らなくてパンフレットの空いてる部分にいろんな計算とか入れてみる。幸い外食系の大体の見積もりパターンは出したことがあるから用具とかの大体の計算は分かるつもりだけど、家賃がいくらなのか分からないし一番の問題は先立つものが足りないって事。
ほんの僅か足りないとかそう言う問題じゃないところが辛い。会社辞めたら退職金っていくら出るんだろ?ちょっと考えが行き詰ってきて転がってウダウダして、はっとした。
「肝心な事忘れてた。明日デセール行って確かめてこなきゃ。ちょっと腹ごしらえしてから電話してみよっと。」
先輩(正確には彼女の)情報しか分からない状態じゃ本当かどうか分からないじゃないか。自称バックパッカーだった息子さん、実はまた旅に出たい病が発症したのかも知れないし。なーんてお気楽な事考えたら物凄くお腹が空いてきたけど、今更出かけるのも面倒で買い置きしてたカップ麺にお湯入れながら
「やっぱ、ご飯奢ってもらえばよかったかなー。何ご馳走してくれるつもりだったのかなー。あー失敗したな。でも奢ってくれるとは一言も言ってなかったから割り勘だったりしてねー。面倒だけどデセールにも岡崎 樹にも連絡しなくちゃいけないよ。」
家に帰ってケーキ屋継ぐ宣言する時
「祥子はそれでいいだろうけど岡崎さんもそれでいいの?」
って間違いなく言われる。まだ言ってないなんて絶対言えない。
「昨夜は一緒に居たんじゃないの?」
から始まってこっちが取り繕うとすればするほどボロボロと足元から崩れていくのが目に見えている。さっきあれだけムカついていたのに、ちょっとへこみながら一人寂しく麺をすするしかなかった。
その後デセールの息子さんに電話を掛けてみたりメールしてみたり岡崎 樹にメールを入れてみたけど、いずれも返信がなく、岡崎 樹に関してはまたどこかのお姉ちゃん引っかけてるんだろうけど、メールの返信ぐらいしたらいいのに使えねー奴だなとイライラしながらポテチのやけ食いしたのはしょうがないよね。明日の朝の胃もたれは決定だけど。
祥子が一人で考え中。
でも、前に進むためには状況把握は大事。
暴走しがちな祥子に両親は振り回されて来ました。「報連相」これ大事。