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三日月  作者: まねきくま
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おーっと、突然ですがこんな事ってあります?

「あーなんかムカつく。どうしてあんな勝手な事が言えるのよ。」


怒り心頭で誰も聞いていない独り言を言いながら歩いている私は傍から見たら充分危ない人だと思われているかも知れないけど、文句をぶつけるべき人はさっさと置いてきたからこんな状況にある訳で。


岡崎 樹と別れてから不機嫌なまま仮住まいに足を向けているのに、ポップな着信音が聞こえてきた。けど今日に限ってバックの奥底に突っ込んでいたせいですぐに出られなくて切れてしまう。誰だよこんな時に電話かけてくる能天気な奴は。そう思って着信履歴を見てみると全く見たこともない番号で、なんだ間違い電話かと思ってスマホをしまおうとすると、また同じ番号から電話がかかってきた。誰だろう仕事の電話じゃないといいなと思いながら電話に出ると


「よう。祥子元気か?」


ってこの声は・・・


「薫先輩?」


「そう。当たり。よく分かったな?何年ぶりだ?前にたまたま仕事で世話になったけど、この頃会った事ないから、かれこれ・・・3年ぶりくらいかな。覚えていてくれて良かったよ。」


その声は某有名声優に似ていて、どこまでも優しくてどこかホッとする響きで落ち着くんだよね。あーイライラが癒されていくよー。なんて感慨にふける前に


「おーい、大丈夫か?」


と言われて返事をしてなかった事に気が付いて


「ええ大丈夫です。」


と慌てて返事をしてしまったけど


「そう言うとこ変わってないな。」


と電話の向こうで苦笑されたのが分かって


「いやいやあの時よりは大分大人になりましたから。」


と言いながらも、ホントそうゆうとこ私ってなにも変わってないなーと思って、ちょっとだけ居たたまれない気分になってしまった。


「でさ、突然だけどオマエ、ケーキ屋のオーナーになる気ない?」


「は?なんですって?」


「だからさーケーキ屋のオーナーになる気ないかって聞いてるんだけど。」


「そんな事突然言われても。」


「まぁ そうだよな。あの頃とは大分状況も変わってると思うし、いきなりそんな事言ってもダメか。ただ、今だとチャンスなんだよね。うちの自社ビルの一角が開いててケーキ屋するには丁度いいスペースだと思ったんだよね。そう思ったら、いつかケーキ屋開きたいって言ってた祥子の事思い出してさ。せっかくパテシエできる免許も持ってるわけだし、人のプロデュースしてるよっか自分の店持ったらいいんじゃね?って思ったわけさ。センスの良さは折り紙付きみたいだし。」


パテシエになるという一度捨てた夢をもう一度見てもいいのかどうしようか・・・でも、今すぐには返事できない。


「ちょっと考えさせてください。急過ぎちょっと思考が追いつきません。」


「そうだよな。すぐにとは言わないから前向きに検討してくれ。ぶふっつ「もしもし祥子ちゃん?本当に前向きに考えてみて。もうあのコクのあるクリーム作れるの祥子ちゃんだけになっちゃったのよ。」


「どう言う事ですか?ってかあなた誰ですか?おじいちゃん先生の息子さんが継いで下さったんですよね?」


突然の乱入で更に驚いた上に驚きの返事が返ってきた。


「あの人ガンが見つかって、もう長くないらしいの。ずっと独身だったから後継者も育ててなくて、おじいちゃんが可愛がってたあなたになら、店の味を託せるって・・・。」


「そんな・・・デセールなくなちゃうんですか?」


子供の頃からお世話になってたご近所さんで、よく通っていた洋菓子屋さんが私の知らないうちにそんな事になっていたなんて。


「とにかく、前向きに考えてみて。こちらもできるだけの協力を惜しまないつもりだから。連絡先はこの携帯の番号にしてくれると早いから。」


彼女はそう言うと電話を切った。うーん。すぐに答えが出せる問題じゃないけど、出来るなら私が引き継ぎたい。うちが引っ越しするころ、ちょうど息子さんが帰ってきて店を引き継いだところだったのに。ここしばらく疎遠になっていたから知らなかった。


大学卒業するとき料理のプレゼンテーションに興味があった私は、息子さんに、


「こんな小さい洋菓子店じゃなく、もっと大きな世界で自分の腕磨いてみたらいい。」


とアドバイスされて今の会社に就職した経緯がある。さんざんアルバイトと称して修行させてもらったくせにだ。

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