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三日月  作者: まねきくま
15/32

困惑しちゃいますよ?

お宅訪問したんですが、どうしましょ

ぶっきらぼうに答える息子に溜息を吐き、それでも一瞬眉を寄せた私に気が付いたのか


「本当にごめんなさいね」


そう言って申し訳なさそうに謝られても


「いいえ。そんなことないです。」


としか言えない訳で、心の中で「ビミョー」と思ったのは、きっと私だけじゃないはず。


誤魔化すために愛想笑いをしていると


「やぁ、祥子さんいらっしゃい。間に合って良かった」


そう言ってリビングに入ってきたのは、お見合いの時に前の席に座っていたロマンスグレー。「岡崎 樹」のお父さんとも言える。かわいい感じのお母さんの隣に笑顔を浮かべて並んで座ると、うーん目が喜ぶ構図ですな。眼福。眼福。


こんなに優しそうな両親からどうしてこんなひねた息子が出てくるのか些か疑問ではありますが、お父様にそっくりな所を見ると間違いなく親子なんでしょうな。どうせなら性格も似ていれば良かったのにね。なんて思いながらも


「父がいつもお世話になり、ありがとうございます。すっかりご無沙汰して申し訳ありません。」


当たり障りのない挨拶をして座りなおした。


なんてったってこの人はウチのお父さんの上司。代表じゃないけど取締役って肩書だったと思う。醸し出す雰囲気がいかにも偉い人って感じを彷彿とさせるから、なんだか緊張しちゃうよ。これならお父さんが断れなかったのも納得できるかもね。


掌にじんわり汗をかいて、どうやら無意識にスカートを握りしめてたみたいで


「あら、そんなに緊張しなくてもいいわよ。」


ポヤンとしたお母様の声がその場を和ませようとしたのが分かった。でもここで黙り込んでしまうのは得策じゃ無い気がして、気の利いた適当な話題が無いか必死で頭の中を検索してみるけどオーバーヒート気味な上に緊張マックスのために脳内検索エンジンは完全にフリーズしている。


「あぁ、そう言えば。」


ん?天の助けか?何を言うのかは分からないけど、とりあえずこの状況を何とかしてくれるのかと期待を込めた目で「岡崎 樹」を見詰めた。でも何を思ったのかいきなり席を立つと部屋の外に出て行ってしまった。呆気に取られてその後ろ姿を見送ると


「本当に勝手で申し訳ないわ・・・。祥子さんといる時もあんな感じなの?」


困った表情のままお母様に聞かれたけど、何しろ「岡崎 樹」とは殆ど話した事が無いから


「えぇ?まぁ・・・。でも、すごく優しくて頼りになります。」


と言って誤魔化すしかない。何しろ美香ちゃん情報でしかどんな人なのか知らないんだから答えようが無いんだよね。まさかこんな所からボロが出るとは思わなかった。自分のボキャブラリーの無さに嫌気がさすよ。


気まずい雰囲気が流れる中、「岡崎 樹」張本人は何か冊子みたいのを抱え悠然と戻ってきて


「これ会場のパンフ。二次会の顔合わせもここでいいだろ?」


目の前にパンフレットを差し出された。まぁ、どこか投げやりな感は否めないけど、一応予告通り会場とか決めてきた事は評価しよう。


「そうですねー。うん。いいんじゃないですか?」


御両親の前ではあるけど、パンフレットをピラピラ捲りながら返事をすると


「挙式日は11月23日しか取れない」


「分かりました」


約束の半年後よりは遅くなるけど、きっと何かしら理由があるだろうから突っ込まないでおいた。私的には、別にこんな茶番劇いつだって構わないから困らないしね。

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

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