夕 After school
夕は部活などには全く入っていないため、学校が終わったらすぐに帰路につく。
学校から徒歩十分の所にあるアパートが今の夕の住まいだ。
理由あって一人暮らしをしている。
今日の夕飯は昨日の残りだけで大丈夫だなーなどと考えながら歩いている夕は見た目だけはかなり綺麗な少女である。
透き通るような、それでも決して病弱には見えない白い肌や、癖っ気が全くない艶やかな黒髪に結構整っている顔立ち。そして外見だけなら華奢な体つき。
その二次元には多々在るものの、現実世界では希少な外見に彼女の性格を多少でも知る者は「見た目だけなら綺麗なのに」と必ず思う。
さて、夕は今狭い路地を歩いているが、前方には少女が一人歩いていた。
その少女はある曲がり角を右へ曲がり、夕もその角を右に曲がった。
曲がって、さっきの少女の姿が見えない事に気付いた。
しかし、この道は右手にはどっかの家の塀が、左手には空地(というか売地)が広がっている。
よって少女が全力ダッシュでもしない限り姿が見えるはずなのだが――――
夕はそんな事を気にもせずに帰り道を急いだ。
光など一切無い世界、
夕はまたあの闇の中にいた。
―――夢、か。
「また会えたわね、夕」
あの時と同じ少女の声。
「貴方は誰ですか?此処は何処ですか?」
涙こそ出ないが、この温かさも、安心感も、懐かしさも、あの時と同じ。
「此処は小夜の空間よ。世界と言ってもいいかもしれないわね」
「………小夜の世界?」
―――この闇と夕と小夜しかいない世界が?
「そうよ。―――貴方のもう一つの問いに答える前に一つ昔話をしましょうか」
「は?……昔話?」
―――何故そんな単語がここで?
「そう、昔話。三千年くらい前だったかしら」
―――三千年前……それは――
「神が世界創造をした頃の話。そして神が天使を創った話」
彼女の声は真剣そのものだった。口を挟もうとは思えない程に。
「神様は世界を創ろうと思いました。
まず天と地を創りました。
地は海と陸に分け、天には太陽と月を創りました。……………」
その声を聞いている内にだんだん夕の意識は薄れていき、そして――――――――