表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

episode5【夜。道を歩くときは不審者とバナナの皮に注意するべし♪】

〜組織説明〜


・【CROSS-ROAD】

(クロスロード)


†構成員†

・ホーリー=綾瀬川聖

・クローバー=白草湊

・バーサーカー=東雲凉

・ホークアイ=成瀬杏


そのほかに2名のメンバーがいるが詳細不明



†存在目的†

不知火市において重犯罪(主に殺人)を犯した人間を調べ、犯人を捕縛【咎人】にした上で特殊事件捜査班係に引き渡すこと。



†組織の特徴†

主に人間が寝静まった深夜12時に活動を開始する。

そのため主に仕事中の彼らの格好は夜に紛らわさせるために漆黒で固めている。

仕事前の集合場所には不知火タワー。

仕事ごとにリーダーが変わり、リーダーになった人間が主に犯人と戦闘を行い、そのほかのメンバーが足止めとうをする。

また、特殊事件捜査班係とはライバル関係にあり特殊事件捜査班係からはコードネームとは別に呼び名がある。



†組織内規定†


“我らの道が交わった”という言葉で昼と夜を入れ替える


仕事開始一秒前はリーダーが“今宵も愚かな愚者に暗黒を……”そのほかのメンバーが“CROSS-ROADの名の下に……”と呟く


今現在の設定はここまで



†メンバーの格好†


ホーリー=綾瀬川聖

:黒のオーバーコートに白い仮面


クローバー=白草湊

:黒の動きやすいドレスに白い仮面


バーサーカー=東雲凉

:肩を出した黒のチャイナ服に白い仮面


ホークアイ=成瀬杏

:黒のミニスカート状の着物に白い仮面


そのほかのメンバーの格好は不明




聖「俺達の最大の秘密だな」


湊「ちなみに凉君の彼女さんもメンバーの一人なんだ♪」


凉「え!?何さらっと上で明かされなかった情報をさらしてるんですか!?」


杏「ちなみに番外編で湊が“お姉ちゃん”て呼んでいた人物よ」


凉「またさらっと何明かしちゃってるんですか!?」


聖「……俺空気?」



††††††††††††


ここは不思議で奇怪な事件が大量に起こる不知火市


今宵。この街に待ち受けるのは――絶望



彼らは間違いなく絶望という名の制裁を【愚者】に与えるだろう…




それが彼らの存在意義であり――復讐なのだから…






「今宵も愚かな【愚者】に暗黒を……」


『『【CROSS-ROAD】の名のもとに…』』






4人の若き堕天使は黒き冷たく邪悪な右翼と、白き温かく優しい左翼を広げて闇へと舞い上がる。




愚かな愚者を暗黒に引きずり込む堕天使として…










〜4月5日・AM0'11〜


???side


「…誠先輩?なんで皆さんはこんな時間まで残っているんですか?」




特殊事件捜査班係の新米刑事である雅は今までにないほど緊迫した空気で夜遅くまで残っている同僚の刑事達を不思議に思っていた。


だがそれも当然である。いくらこの街の出身で契約者に対する知識があるとはいえ【CROSS-ROAD】の知識は皆無であった。


彼らがどれくらい危険でどれくらいの人数でどれくらいの存在なのか…。


しかし雅にとってみれば彼らのこの完全なる厳戒体制に不信感を抱く。いくら相手が強力な契約者でもここにいるのは普段から犯罪を犯した契約者を取り締まるこの街出身の精々50人。


中にはそれなりに経験や修羅場を積んでいる契約者も大勢いる。そんな彼らがここまで警戒しているのだ。それが不思議でたまらなかった。


そしてその中で唯一話せそうなのは目の前でたばこを吹かしている男だけだった。



「フー…奴らが動き出すのは日付が替わってから」




たばこの煙を真上に吹きながらその男――綾瀬川誠は雅の質問にそれだけの言葉で応える。




「確かに今の状況は12時を過ぎてから一層強くなった気がします」


「みんなそれなりに緊張してんだよ。たぶんあいつらを見るだけでもこの街では珍しいことだからな…」




誠のその受け答えに雅は少し疑問を浮かべる。


珍しい。その単語が意味するのは相手が少数であるということ…。


しかし新米とはいえこの特殊事件捜査班係に配属されたエリートである雅はこれから会うであろう相手を知るために誠になげかけるのだった。





「誠先輩。ちなみにあいつらと言いますがCROSS-ROADには一体何人の契約者がいるんですか?」


「フー…」




たばこを吹かしながら誠は雅の顔を見る。



その表情は雅にこう訴えていた。【本当に知りたいのか?】と――




実は誠はこの質問を予想していた。雅は今までに類を見ないほどの秀才で期待性も抜群。才能だけで言えば自分を軽く超える存在だと。


そんな雅がこのことを疑問に思うのは当然だと…。


しかしそれとこれとは別である。この質問の答えはこの街のエリートである自分達特殊事件捜査班係のプライドをズタズタにするもの…。


でもいつかは知らなければいけない事実。だから誠は一度顔で問いかけるのだった。




「…覚悟はできています」





そして誠の表情を受け止めた雅はゆっくりと頷く。


肯定だと受け取った誠はその事実を語った。




「現在確認されているやつらの人数は6人…その中で普段から現れる堕天使は【クローバー】【ホークアイ】と呼ばれる少女達と【バーサーカー】【ホーリー】と呼ばれる少年達の合わせて4人だけだ…」




誠はそう淡々と語った。少女達というところで固まってしまった雅を無視して…。




「…え?…え?…え?まさか【CROSS-ROAD】のメンバーって…?」




あまり頭の整理が出来ていないまま帰ってきた雅が慌ててそう聞き返す。


そして予想通りすぎる雅の対応に誠は真実を突きつけるのだった――



「あぁ…お前の考えているとおりだ。相手はお前より年下の子供。しかもたった4人に俺達は…やられているんだよ」


「そ、そんな…」




――ヴー!!!!ヴー!!!!




ショックを受ける雅に追い討ちをかけるように鳴り響く警報機。


それと同時に特殊事件捜査犯係のメンバーに緊張が走る。



――これからが真の夜の始まり、堕天使の降臨を知らせる魔の知らせであった。





〜4月4日・AM0'16〜


浩side



――カッカッカッカッ…



この街を歩くのは何年ぶりかな?しかも真夜中の灯り一つない道を歩くなんて…。


すごくゾクゾクするぜ。




――カッカッカッカッ…




もうすぐ。もうすぐでやつの家につく…。


親父が冤罪の罪で解雇されてしまって恨みに恨んでいる成瀬財閥の社長の家に…。


そこにいる娘――成瀬杏を殺したら俺は…俺は…。





「ひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!!」




おっといけねー…ついつい笑いが止まらなくなってしまったぜ。


この暗殺は絶対成功させなければいけねー。じゃないと親父に認めてもらえねーからな。




――カッカッカッカッ…




あとちょっと…。あとちょっとで俺は温もりを取り戻せる。


この忌まわしき契約による呪縛ともおさらばだ!!


俺はそう思ったら脚が止まらなくなった。いや。むしろ足早になってしまうぜ。




「ひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!!」




あと少し…!!あと少し…!!あと少しで…!!


俺は冷たい空間から抜け出せる!!あの寒い人生から解放されるんだ!!




――カッカッカッカッ…!!




そして俺は…ついにやつの家についたのだった。


俺は震えが止まらない。この中にいる小娘を殺すだけで俺の人生が明るくなると思ったら震えが止まらなくなった!!


そしてそれに合わせて再び笑いがこみ上げてくる…。だめだ。我慢しようと思っても我慢できない!!


俺はこみ上げてくる感情を我慢できず再び笑い声を上げるのだった。




「ひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!!」


「…急に笑い出す癖。止めたほうがいいですよ?」




不覚にも俺は自分自身の笑い声のせいで見つかってしまったのだった。




「はぁ…さっきからあとをつけてけど何回笑い出すんだよ…こいつ?」


「人の癖を悪く言ってはいけませんよホーリー?」


「いや。でもさ…お前はこいつのこんな癖を見て何とも思わないなかバーサーカー?」


「…………」


「無言は肯定と受け取るぞバーサーカー」


「もう勝手にしてください…ホーリー」




俺は慌てて振り返る。すると彼らはそこにいた。



1人は冷静に丁寧な言葉使いで受け答えをしている黒く動きやすそうなチャイナ服で銀髪の男。


もう1人は言葉使いは少し荒々しいが結構普通の反応をしているオーバーコートで黒髪の男。



どちらも背格好からまだ年も行かない子供だとわかった。


だが問題はそこじゃない…。2人はお互いに白い仮面を付けており顔を見せていなかった。


そして2人がいる場所。そこは電柱の上…。そう。2人は明らかに異色の存在だったのだ。




「…お前ら何者だ?」




2人の姿に俺は思わず唇を震わせながらそう聞く。


唇だけではなかった。体中の震えが止まらない。それはさっきまでの歓喜に震えた震えではなかった。それを俺は知っている。かつて親父に感じた感情…。



それは【恐怖】だった。




「僕達は【CROSS-ROAD】この街の秩序を正す者…」


「愚かな愚者を暗黒に引きずり込む堕天使だ」




2人の言葉一つ一つに含まれる威圧感がさらに俺を恐怖に誘うのだった…。






〜4月5日・AM0'22〜


???side



「今日こそは絶対捕まえてやるんだから!!」




そう意気込んでいるのは特殊事件捜査班係にいる女性の中で最も若い女性の橘葵である。


現在彼女は【CROSS-ROAD】を探索するためのパトカーに乗車するために特殊事件捜査班係の屈強な男達を連れて警察署内を歩いていた。




「橘刑事!!車の手配は完了しているそうです!!」




そして彼女の右隣を歩いているのは特殊事件捜査班係の新米刑事である土井雅。




「フー…たく。なんであいつらは夜中に現れるんだよ…眠くてやってられねーぜ」




左隣ではたばこを吹かしながて文句を言いつつも早足で歩いている綾瀬川誠がいた。警察署に残っている普通科の職員はこの事態に驚くかと思っていたら実際はそうでもなくただ道を譲るだけ。


それは普通の職員がこの事態に慣れてしまうほどにこのような事態が起こっていたからだ。




「じゃあ探索範囲の確認するわよ」


『『はい!!』』




緊迫した空気の中で葵が全員に声をかけると特殊事件捜査班係のメンバーはキリッとした声で返事を返す。


なぜ葵がこの場を仕切っているのか?それには実は葵の立場が関係している…。




「佐藤さん。中原さんのDチームは水無月地区と葉月地区をお願い!!」


「はいよ橘作戦部長」


「松坂さんと矢島さんのBチームは霜月地区と如月地区を!!」


「了解橘作戦部長!!」


「瀬長さんと月島さんのCチームは睦月地区と長月地区をお願い!!」


「はい!!作戦部長!!」


「そして私と誠のAチームが神無月地区と皐月地区の探索をやるは」


「うーい作戦部長」


「じゃあみんな!!発見しだい各チームに連絡すること!!これを忘れちゃだめよ!!」


『『了解作戦部長!!』』


「じゃあ行くわよ!!!!」


『『おぉおおおお!!!!』』




葵の一言で自身を奮い立たせる特殊事件捜査班係のメンバー。ここまで来れば彼女の正体が分かるだろう。


そう。彼女は現場における指揮権の全てを受け持っている作戦部長と呼ばれる役職についている。それほどまでに彼女は優秀なのだ。




「今回こそは…!!」




そして現場において最も上にいる彼女だからこそ【CROSS-ROAD】に毎回逃げられることを一番悔しがっていた。


目の前にいながら逃げられる悔しさ…。それを一番噛みしめている彼女の声だからこそ特殊事件捜査班係のメンバーは自身を奮い立たせることができるのだった…。




――カシャー!!!!




そんな彼らが警察署の正面入り口である自動ドアをくぐる。


あとは車に乗り込みそれぞれの割り当てられた地区に行き探索を開始するだけだった。


――誰もがそう疑わなかった…。だがしかし…。








           `






「こんにちは♪特殊事件捜査班係の皆さん♪」


「ヤッホー【CROSS-ROAD】でーす」




自動ドアをくぐった瞬間に現れた真っ黒なドレスを着た赤髪の少女と黒い着物を着た茶髪の少女を見るまでは…。




「なっ!?あなた達は!?」


「おいおいまた大胆に出てきやがったな…」




葵の驚愕を表す叫び声と誠の愕然とした声が続けて聞こえてくる。




「………」




そして雅を含めた他のメンバーは彼らの驚きの行動に目を丸くしてただただ黙ることしかできなかった…。




「まさかそっちから来てくれるとはね【クローバー】【ホークアイ】」


「あら?それはあんたたちからのほめ言葉だと受け取っていいかしら?」




ホークアイはそう言うと葵達には見えてないがニヒルな笑みを浮かべた。




「フー…で?何が目的なんだ?」




特殊事件捜査班係で一番冷静な誠がクローバーとホークアイに尋ねる。


それにクローバーとホークアイはお互いに顔を見合わせるとクローバーは警察署の敷地の外に出て行きホークアイは人差し指を上に掲げるのだった。




――ピリッ!!




「まずい!!」




その瞬間静電気のような刺すような音が辺りにこだまする。


その音に唯一反応できたのは誠だった。しかし時すでに遅し。誠が動き出す前にホークアイの人差し指ね指先から大量の光が溢れ出す。





「Machine-crash-electric-wave【電磁波】!!」




――ピリッ!!ピリッ!!ピシャァアアアアアッ!!




ホークアイの一言でホークアイの指先から溢れ出してきた大量の電気が警察署にあったパトカー全てを襲う。


その輝きは見ている者全てね眼球を一時の間使い物にならなくした。


これがホークアイこと成瀬杏の契約能力【電磁】の能力である。




「…くっ!!」




特殊事件捜査班係のメンバーはその電気の影響を真正面から受けてしまった。


しかし彼らには何の影響もない。その証拠に電撃は彼らの周りを迂回してからパトカーに向かっていっていた。




――ドカッ!!ドカッ!!ドカアァアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!




辺りにパトカーが破壊されたのをあらわす爆発音がこだまする。


それと同時にホークアイの人差し指から放出されていた電撃は着々と沈静化していった…。




「ミッションコンプリート」




その場に響いたホークアイの声は彼らの移動手段が無くなったことを示していた。




「くっ!!ホークアイ!!」


「あら?あたし達はあたし達の仕事をしただけよ?」


「ふざけないで!!!!」




――カチャッ!!




葵は目の前にいる少女に拳銃を向ける。




――カチャッ!!カチャッ!!カチャッ!!カチャッ!!カチャッ!!カチャッ!!カチャッ!!カチャッ!!カチャッ!!



特殊事件捜査班係のメンバーも葵に続くようにホークアイに拳銃を向け間合いを詰めていく。




「誠先輩?」


「なんだ?」


「これってあの少女…。ホークアイを捕まえたことになるんでしょうか?」


「…いやまだだ。まだあの子を捕まえたわけではない。あの子をこんなに簡単に捕まえられたなら俺達はCROSS-ROADにここまで苦労することはなかっただろうよ」


「どうしてですか?それはどういう意味ですか?」


「…まだあの子がいる。この町において最強の防御系の契約能力を持つクローバーという少女がな」




誠の言ったことは正しかった。


特殊事件捜査班係のメンバーがホークアイに拳銃を向けているとき外野にいた彼女は――




――――――――


―――――


―――





そのころクローバーはホークアイが拳銃を向けられているところの近くで壁に寄りかかっていた。


右手には一輪の花――それを彼女は顔につけた白い仮面を僅かにずらしてから口づける。




――ハラリ…




彼女の赤く長い髪の毛がハラリと彼女の顔を覆い彼女の素顔を隠す。


そして口付けている赤いバラの花はその色をあせらせていくのだった…。




「…私は花に触れることができない。なぜなら私が花に口付けると…花はその生命力を私に吸われてしまうから…」




クローバーは手に持った花【だった】ものを地面に投げ捨てるとホークアイを助けるために歩き出す。


地面に転がった枯れた花を残して――



――――――――


―――――


―――





「【CROSS-ROAD】のメンバー【ホークアイ】公務執行妨害で現行犯逮捕します!!」



葵の凛とした声がその場の空気を震わす。


対して特殊事件捜査班係に囲まれているホークアイのほうは何も答えずにただその場に立っているだけだった。




「…さぁ勘弁しなさい」




葵はホークアイとの距離を着々と詰めていく。ホークアイのほうも葵の動きを止めることも自ら動き出すこともなくただ葵を見つめていた。


しかし彼女は諦めたのではない。彼女は信じているのだ。



彼女の無二の親友を――




「【薔薇(ROSE)】」




――パシンッ!!




そして彼女の親友は決して裏切らなかった…。


突如として葵は鞭で打たれたような感覚を拳銃を持つ右手に受ける。他のメンバーもそうだった。全員が全員で拳銃を持つ方の手に痛みを感じた瞬間には持っていた拳銃を落としてしまう。


その中でホークアイは悠々と近づいてくる彼女の親友に声をかけるのだった。




「結構遅かったじゃない?」




彼女の見つめる先にいるのは彼女の親友――トゲのついたツルを持つクローバーの姿があった…。


妖美な雰囲気をその身に纏わせ、赤い髪を靡かせる。その姿はまさしく闇夜に降り立つ堕天使のようだった――




「文句は言わないの♪」






〜4月5日・AM0'35〜


(ホーリー)side



何度も遊びに来たことがあるホークアイの住んでいる豪邸。


その目と鼻の先では俺の親友であるバーサーカーと今回のターゲットの谷口浩が非現実的な戦闘を行っていた。




「ひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!!食らえ!!!!」


「……」




浩が放ったのはソフトボールほどの大きさに固められた硫酸の塊。


バーサーカーはそれをうまく避けながら後退していく。その間ずっと無言のバーサーカー。彼を見ながら俺は息を吐いた。



――避ける必要なんてないのに…何やってんだよバーサーカーのやつ…。



バーサーカーに攻撃しているその間の浩の顔は終始笑顔だった。たぶん何かしらを企んでると思うんだけど…。


俺は必死に避けているふりをしているバーサーカーに顔を向けた。



――うん。俺達でしか分からないくらいににやけ顔をしてやがる。



だめだ。あいつ完璧遊んでやがるな…。




「ひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!!お前の実力はこんなもんかよ!!!!」


「…!!なめんなよ」




バーサーカーはそう言うと白い仮面を微妙にずらし、大きく息を吸い込んだ!!




「食らえ!!!」




――ブォオォオオオオ!!!!




口から大量の炎を吐き出すバーサーカー。




「ひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!!【炎】の契約者だったのかよ!!!!」




――ボッ!!ボッ!!ボッ!!ボッ!!ボッ!!ボッ!!ボッ!!




しかし浩は慌てることなくその攻撃に硫酸の塊を五発叩き込んだ。


バーサーカーの口から放たれた大量の炎は浩の放った五発の硫酸により消火されてしまう。



――そう【五発】の硫酸によって。





「ひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!!残念だったな!!!!そしてこれでお前も終わりだ!!!!」




浩はバーサーカーの反撃を防いだことで完全に自分のほうが有利だと悟ったようだ。彼はそのまま両手を前に出し大量の硫酸を固める。その大きさはソフトボールなんてものじゃない。


例えるなら…バスケットボール。それくらい大きな水球だった。




「ひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!!終わりだ!!!!」




浩は気球ほどまでに固めた硫酸塊を…バーサーカーに向けて放った。その一撃は普通の人間だったら一瞬にして溶けてしまうほどの代物。


おそらく一昨年な晩にバーサーカーの目の前で不良をやったのもこの一撃だったのだろう。だが――




「…どうやら俺は必要ないみたいだな」




だが――あいつにはそんなこと関係ない。あいつはこの街で【最強】の契約能力を持つ男だからな。




「我が身を守れ…」


「死ねぇえええええ!!!!」




――ブンッ!!シュ…!!




バーサーカーの体に当たると同時に立ち上るのは大量の煙。硫酸の契約能力が発動してバーサーカーを溶かしたのだろう…。




「はぁ…はぁ…」




浩は大量の契約能力を使用したことで息が荒れている。どこか疲れきった様子である。


でも残念だったな?お前の攻撃は無駄に終わったぜ…。


さぁこれからはバーサーカーの本領発揮だ。やつの持つ【最強】の契約能力の前に…ひれ伏すがいい…!!










「くっくっくっ!!おいおい!!まさかこんなもんだとは言わねぇよなぁあああ?」




来たか。バーサーカーがバーサーカーであるゆえん。闘いになると狂ったように相手をぶちのめす。そしてバーサーカーが不知火市で最強の不良と呼ばれている東雲凉の第二人格。その名前は――




「は!!まさかたったこんだけの力で俺達に挑んでくるとはな〜谷口浩?」


「バーサーカー。いや【竜】俺達の目的を忘れるなよ?」


「あ゛ぁ?なんだいたのかよホーリー。影薄かったから気付かなかったじゃねーかよ?」


「よく言うよ。さっしからこっちに気付いてなかったわけじゃないだろ?俺のこと何だと思ってやがったんだよ?」


「あ゛ぁん?そんなの不審者に決まってんだろ?なんだよ春先にそんな真っ暗なオーバーコートなんて着込みやがって。カッコいいとでも思ってんのか?あ゛ぁ?」


「まぁ確かに夜道を歩くときには不審者とバナナの皮に注意するべし♪ってクローバーに言われたことあるけど…俺は不審者じゃねーよ!?」


「ギャッハッハッ!!不審者!!不審者!!なんと言ってもホーリーは美人の幼馴染を毎晩調教してる変態鬼畜ヤローだからなぁ!!ギャッハッハッ!!」


「ちがぁあああう!!俺とクローバーの関係を勝手に偽装すんじゃねぇえええ!!喧嘩売ってんのか竜!!てめーの皮剥いで剥製にして売りさばくぞぉおおおお!?」


「上等だ!!その喧嘩買ったあぁあああああああ!!」




そう言ってお互いにメンチをきりあう俺とバーサーカー――竜。ふとあたりを見渡せば状況についてきてこれないのかさっきから浩は開いた口が塞がっていなかった。


まぁ最大の力で撃った一撃を受けても無事だったんだからな。あと…俺達のテンションについてこれなかったんだな…。




「…まぁ冗談はここまでにして。ホーリー!!こいつの実力はどれくらいだ!?」


「はぁ…おまえの冗談はどこまでが冗談か分からねーんだよな…俺は別の仕事があるから後は頼んだぞ。竜」


「あーつまんね。なんだよその程度かよ…期待して損しちまったじゃねーかよ」


「文句言うな竜。俺はもしも浩がおまえでも対処できなかったときのために待機してただけだから」


「ちぇ…わーたよさっさと行きやがれ…相棒」


「はいはい。俺もさっさと俺のターゲットを仕留めてくるよ。おまえも気をつけろよ…相棒」


「はん!!こんなやつに俺が遅れをとるかよ!!さっさと行け!!ホーリー!!」




まったく…バーサーカーは2人とも不器用なんだから…。


でもお前のその両腕に覆われた【黒い鱗】に傷一つついてないのを見るとな。本当にお前だけで充分そうだ――



その黒き鱗は最強の楯となり。その白き牙は最強の剣となり。その赤き肺は炎を吐き出す――



まさしくその姿は【黒竜】そう。凉…そして竜の持つ契約能力。それはファンタジーの主人公――








【竜】の契約者である。





           `


漆黒の夜はまだ続く……。


堕天使達の手は悠々と復習が完了されるのを待ち望んでいる愚者にも迫ろうとしていた……。


彼の放つ光は一体何を照らし出し何を浄化していくのか?


さぁ、今宵のパーティーもいよいよクライマックスだ。


最後に輝く【星花火】を決して見逃すな……。



†CROSS-ROAD†次回は


episode7【流れ星に出会ったら3回願いを唱えるべし!!】



次回はいよいよ主人公綾瀬川聖の出番だぜ!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ