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episode4【犯罪?違うわ。これはケフィアよ】

〜登場人物紹介〜


・成瀬杏

(なるせあん)


身長…165センチ

体重…地獄の旅はいかが?

血液型…B型

誕生日…2月22日

容姿…特上の中

勉強…中の中

運動…中の中



今作品のヒロイン湊の親友で不知火高校の一年生。

容姿は肩にかかるかからないかくらいの茶髪に淡麗な顔立ちのため湊と並んで不知火高校の三大美女としょうされるほど。

基本的にかなりフレンドリーな性格だが、嫌っている人はとことん嫌う人である。

不知火高校において情報屋を営んでおり彼女に手に入れられない情報はないと言われている。

また、それと同時に重度のオタクとも知られており、聖に文才があると知ると同人誌を書かせるぐらいである。家は成瀬財閥と呼ばれるお金持ちでお嬢様。

実はハッキングが得意でその腕前はペンタゴンにも入ったことがあるとか?

そして彼女にも聖達同様に秘密が……。



聖「ハッキングって……犯罪者?」


杏「あぁん?」


聖「へ?ちょっ!!ちょっと待てって!!落ち着け……ギャーーッ!!!!」


杏「ハッキングは犯罪じゃないわよ♪」


※犯罪です




ここは不思議で奇怪な事件が多く起こる街。不知火市


この街毎日毎晩悪事を働く者が現れ様々な悪行の数々を行っていた…しかしこの街にもルールというものがあった。


それは――










【この街で人殺しは厳禁】










このジンクスを守れなかった者で今まで生き残れた者は…いない。





それは【彼ら】が哀れな愚者共を裁いてるから…。





彼らの裁きを受けて生き残れているものがいないから…である。




さぁ…今宵は【彼ら】が愚者共を狩りに暗黒の街に繰り出した。




どうやら今宵…この不知火街は【最も賑やか】で――



【最も静か】な夜となるようである――






〜4月4日・PM16'56〜


???side



「誠先輩。ちょっとお話してもいいですか?」


「ほいほい。どうした?若手で新米の刑事A」


「…一応俺にも【土井雅(どいみやび)】って名前があるんですけど?」




ちなみに今適当に考えました〜てへ☆。by作者




「もともとはモブキャラの予定だったんだから進歩じゃないか!!」


「…全然嬉しくないのはなぜでしょう?」




それはおそらく気のせいである。なぜなら雅さん!!あなたは晴れて所要キャラにランクアップしたのですから!!


わあぁあああ!!パフパフ!!いえぇえええい!!




「フー…で?一体どうしたんだ雅?」


「へ?」


「だ!!か!!ら!?お前が話そうとしたことだよ!!」





吹かしたたばこを再びくわえながら問いかけた誠に雅は一瞬ボーっとしてしまう。


対して誠は少し抜けてしまっている雅を起こすために大声を張り上げて一気に叫んだ!!




「は…はい!!なんか今回の事件での特殊事件捜査斑係のみなさんの気合いの入れようが違うように見えるんですけど!?」


「…なんだそんなことか」




誠はマシンガントークのごとく言い放った雅にじゃっかん引き気味になってしまった。



「…そんなことかって。…先輩もうちょっと後輩の話は聞きましょうよ?」


「…いや。そういえばお前はまだ知らなかったんだな〜と改めて思ってな」


「…知らなかった?」




誠はそこまで言うと近くにあったベンチに腰掛ける。


次いで雅にも隣に座るようにと指示するかのようにパンパンと自分の隣を叩く。それを見た雅のほうも一瞬だけ躊躇うも、誠に続いて誠の隣に腰掛けるのだった。




「フー…この街の秘密お前は知ってるか?」




座ってから誠はまた新しいタバコに火をつける。そして一度大きくタバコの煙を吐き出すと誠の問いかけるのだった。




「【契約者】…」




雅は誠の問いに真剣な面持ちで頷くとその言葉を口にする。


そして雅の言葉を聞いた誠はもう一度大きく煙を吐き空を見上げるように上を見上げ口を開くのだった。


ちなみにここは警察署の休憩室だから天井しか見えてはいないが――




「フー…そうだ。契約者。理由は分かってないがこの街出身の人間は万物の物と契約を交わすことにより…その力を使うことができる…謂わば超能力に近いものだな」


「炎と契約した人は炎の能力。水と契約した人は水の能力…実際。この街の10分の3が何らかのものと契約した契約者だと聞きました」


「フー…そいつは間違いだ。この街に住むものは基本的に契約を隠してるから…実質、街の10分の8は契約者と言っていい…」


「そんなにですか…?ですがそんなに契約者達がいたら、犯罪とか簡単に起こってしまうのではありませんか…?」


「そのとおりだ。だから俺たちがいるんだよ。契約者が起こした事件を処理するために地元出身の人間だけで結成された――」


「【特殊事件捜査斑係】が…ですよね?」


「正解。そういうことだ」




――シュボッ!!



そう言って誠は再び新しいタバコに火をつける。


そしてどこか悲壮感が漂うような空気を出しながら。再びゆっくりと…語り出すのだった――




「フー…でもな、この街には俺達以外にも“理”を犯した【契約者】を罰する組織があるんだ…」


「俺達…以外にですか?そんな組織聞いたことありませんよ…?」


「…当たり前だ警察がその事実をもみ消してるからな…おかげでその組織は最早、生きる都市伝説みたいになっちまってる…お前も一度は聞いたことがあるはずだ。俺達以外にもう1つ【殺人】という大罪を犯した【契約者】を取り締まる非公式の【契約者】の組織。その名前は――」


「【CROSS-ROAD】」




――その答えを言ったのは誠よりもかなり高いソプラノの声だった。


橘葵である。



「【CROSS-ROAD】?」




雅は思わずその言葉をゆっくりと復唱する。確かに聞いたことはある。だがそんなバカな話はない。だって【CROSS-ROAD】は――




「【CROSS-ROAD】は…地獄から来た【堕天使】が創った組織ですよ…?」


「フー…そうだな。確かに都市伝説ではそうなってたと思う。だが実際は違うんだ雅。あいつらは――」


「【CROSS-ROAD】私達警察の【特殊事件捜査斑係】を出し抜いて殺人事件を起こした【契約者】を取り締まって…私達に引き渡す組織…それが都市伝説の真実よ…」




誠の言葉。それに再び葵が横から入ってくるとどこか悔しげにそう説明した。


だがこのとき雅は疑問に思う。確かに【CROSS-ROAD】という都市伝説が本当にあったことは驚きだ。だがしかし。よくよく葵の説明を聞いてみればあまり彼らに悪い印象は持てなかったのである――




「…?…あの?誠先輩。葵先輩。新人の俺が言うのもあれですけど…それっていいことじゃないんですか?」




疑問に思った雅は2人の先輩に問いかける。


確かに犯罪人を――しかも殺人犯を捕まえることは危険ではあるが別に悪いことには思えない。むしろいいことにすら思える。


だが事はそうは甘くないのだ。そのことは何よりも葵の表情が物語っていた――




「…普通…ならね」




少し苦しげな表情で唇を噛み締める葵。その瞳は完全に目の前にいる雅の顔を映してはいない。




「…それはいったい。どういうことですか?」




その瞳と表情を悟ったのか、雅は緊張した面持ちで尋ねる。


そして葵はそんな雅の顔を何とか虚ろな瞳にしながらも映し出し、静かに語り出すのだった…。




「【CROSS-ROAD】に捕まった犯人は必ず…【咎人(とがびと)】となった状態で警察に…私達に送られてくるのよ…」




――沈黙。


その言葉が生んだのはまさしくその二文字が相応しいくらいの静かな空間だった。




一人は言葉の意味が分からずに何とと言っていいのかわからず――


また、一人はその言葉の指す人間の末路を思い浮かべ――


そして一人は自分が言った言葉に恐怖を抱いていた――




それが作り出すのがまさしく沈黙なのだ。




「【咎人】?」


「フー…お前はまだ一度も会ったことなかったな…」




始めに口を開いたのは知らぬ者――新人刑事の土井雅。そしてその雅の疑問に答えたのは、咎人となった人間の未来を想像した男――綾瀬川誠であった。


誠は葵が応えられないと悟ると彼女の説明を継ぐ。まるで汚れ役を自ら受けるように――










「フー…【咎人】それは契約を破棄した【契約者】のことだ。彼らは【契約者】としての能力は一切使えなくなり【普通】の人間になる」


「…それなら別にいいんじゃないんですか?」


「フー…本当にそう思うか?」




誠の言葉に葵はさらに表情の影を深くさせる。


なぜなら【咎人】の行く先に待つのは――ただ暗いだけの暗黒だからだ。




「…【咎人】は【普通】の人間になる。長所も短所もない【普通】の人間。悲しさも怒りもない【普通】の人間。嬉しさも愛しさもない【普通】の人間…」


「それって!?」




雅の眼孔はこれでもかというくらいに開き驚きを声と体全体で表す。


なぜなら雅にも分かったのだ。咎人となった契約者が巡る暗黒な未来が。彼らを迎える絶望――いや。それすらも感じない世界の末路が――








「そう契約を破棄するというのは簡単な事ではないということだ【咎人】となった者は【感情】と【才能】そして【未来】を奪われる」




――あまりに重々しいその言葉に雅は思わず茫然としてしまっていた。






辛すぎたのだ。新人である彼にその事実は。


【特殊事件捜査班係】そこに配属されたものとしていつかは知らなくてはいけない事実――


これが咎人…契約を破棄した人間の辿る最悪の末路。


【CROSS-ROAD】これが彼らが都市伝説で堕天使と呼ばれる由縁である――




〜4月4日・PM17'36〜


(クローバー)side



――カタカタカタカタ…




「人を溶かす能力を持つ契約者…この街には全部で47人で……この街を出ていった人と合わせると……116人……その中から凉と繋がりがある人物を割り当てて……さらに恨みを持つ人間は……0人……ということは凉自身の問題じゃないってこと?…だったら愉快犯の可能性に……警察の捜査ファイルは……よっと!!…………いつもながらなかなかキツいファイアーウォールね…………このコードはこうだから………………………………よしハッキング成功♪あとはどのファイルが愉快犯の捜査ファイルかを……」


「さすがですホークアイ。見事な犯罪技術で警察から極秘資料の情報を入手できましたね…」


「はぁ?犯罪?違うわ。これはケフィアよ」


「いや。まったくもって意味が分かりません」




私は今杏ちゃん――いや。ホークアイがパソコンの画面にうちなす謎の文字の羅列をただただ眺めていました…。


パソコンを3台も駆使して警察署にまでハッキングしてしまうホークアイはやっぱり凄いと思う。


私達では到底真似できない。というよりしたくない。だって犯罪だもん…ホークアイはケフィアなんて言うけどあれって絶対に犯罪だもん!!


ホークアイはこの街の犯罪者候補No.1だもん!!




「…何か今とてつもなく失礼なこと言われた気がするんだけど。なんか知らない?クローバー?」


「は!!至って良好であります!!ホークアイ閣下!!」


「…何やってんのクローバー?キャラじゃないわよ?あんたはただ可愛く振る舞っとけばいいんだからね?」


「は!!了解であります!!」




――あ…危なかった…。もう少しでホークアイのあの無表情の絶対零度の視線が刺さるかと思った…。



今はもうすでにパソコン操作を再会しているホークアイの背中を見て私は冷や汗を拭いました。バーサーカーも苦笑い気味に私に同情の視線を向けてくれる。


う〜ん。ありがたいんだがありがたくないんだか…。よくわからないな…。




――まぁそんなことはどうでもいいとして…ホークアイのこの技。実は彼女の持つ【契約者】としての能力だからこそ織りなすことができる技なんです。


そもそも彼女のコードネームの由来は【遠くの獲物(情報)を捕らえる鷹のような鋭い目を持つ】というところ…。


実際彼女がいなかったら私達は犯人を特定することは不可能なんです。断言できちゃいます。


本当に彼女の【契約者】としての能力には頭が上がらないわ♪




――カタカタカタカタ…




「…ホークアイ。あとどれくらいで情報の収集終わりそうですか?」




――カタカタカタカタ…




「う〜〜〜ん…あたしにも分からないけど…いつぐらいがいいバーサーカー?」




――カタカタカタカタ…




「そうですね…夜までには終わりそうですか?」




――カタカタカタカタ…




「…どうかしら?夜までとなるとちょっと厳しいところあるけど…バーサーカーが望むんなら契約能力増加するわよ?」




――カタカタカタカタ…




「…いえ。ですがあの契約者は危ないです。今夜あたりにもまた僕を襲ってくる可能性もあります」




――カタカタカタカタ…




「はいはい。ようはさっさとしろってことね。了解したわバーサーカー」




――カタカタカタカタ…




「すみません。ではよろしくお願いします。コーヒーでも作って持って――」


「あーどうやらその必要なくなっちゃったみたい」




――カタカタ…カタ…




バーサーカーがホークアイに対して謝罪をしコーヒーを作るために部屋を出ようとしたそのとき。ホークアイのキーボードをうつ手が止まる。


そして彼女が見つめるのは丁度真ん中にある彼女私用のパソコン…。


その画面には一つの記事が映し出されていました。







「【成瀬銀行強盗事件】?」


「クローバー。そっちじゃないわ。問題の記事はこっちのほうよ」




私の呟きにホークアイは私が呟いた内容が書いて記事とは別の記事がある画面を指差す。


それはちょうど私が言った【成瀬銀行強盗事件】の右下にちょこんとだけ載せられている記事でした。




「【成瀬銀行の所長を解雇】…。確かにこれってホークアイのお父さんの会社のことだけど…これがどうかしたの?」


「…うん」




そしてホークアイはその記事から一時も目を離さずに語り始めました…。



「…社長の娘のあたしだから知ってるんだけど」




そこまで言うと右手にあるパソコンに何かを打ちこみ始めるホークアイ。


その動きが止まったとき彼女の右手のパソコンにはある人物が映し出されていた…。


厳つい顔もて。白く磨きがかかった髪。そしてその横に書いてあった名前は…。



「【四埜谷徳(よつやたにとく)】ですか。なかなか悪い顔をしたおじさんみたいですけど…もしかしてこのオジサンが…?」


「えぇ。うちの会社が解雇した成瀬銀行の所長だった男…四埜谷徳よ」


「しかも右手のパソコンに映し出しているということは…」




バーサーカーが確認したことには意味がある。


ホークアイが使うパソコンにはそれぞれに役目みたいなものがあるんです。




真ん中のパソコンは過去の情報からの確認。


左手のパソコンは主に警察署へのハッキング用。


そして右手のパソコンは――そこにはホークアイが知る【契約者】の一覧が入っています。それはつまりこのパソコンに四埜谷徳が映っているということは――




「…【契約者】ですか」


「そうよバーサーカーの言うとおり。彼は【契約者】しかも名前を聞いてわかったと思うけど代々契約能力を受け継ぐ家系…5大領家の1つよ」


「5大領家ですか…ですがこれと今回の事件とは何の関係が?」




確かにこけまで静かに話を聞いてはいたがここまで来ても今回の事件とこの事件との関連性は見えない。いったいホークアイは何が言いたいの?


私とバーサーカーがそのことを不思議に思い頭を悩ませていると――




――ガチャッ!!!!




「ようお前ら。それとホークアイ。確認してきたぜ」




私達がいる部屋に私の幼なじみ、そして私達の仲間の1人【ホーリー】こと綾瀬川聖がそう言いながら入ってきた。




「ん。ご苦労様ホーリー」




ホーリーはホークアイの言葉に軽く頷いて私の横に腰掛ける。走ってきたのか少しだけ香る彼の匂いが私の鼻をくすぶる。


私ったらもしかして変態になっちゃったのかな?




「さて…さっきの涼の話だけど…ちょうどホーリーも戻ってきたしホーリーから説明してもらいましょ」


「ホーリーから?」




ホーリーは私にニッコリと笑顔を向けると私の頭を撫でながら立ち上がる。




「実はホークアイの指示で四埜谷徳の家に行ってきたんだが――」


「四埜谷のですか?」




バーサーカーが奇怪な顔でホーリーに尋ねる。




「あぁ。行ってみてびっくりしたぜ【契約者】の家系ってホークアイから聞いていたからそれなりの屋敷だと思って…いや。実際にそれなりの屋敷だったんだけど…生活の気配がまったくなかった…」


「生活の気配が…ない?」




ホークアイはその言葉にやっぱりって感じでニヤリとしながら話を聞いていた。


その顔にはすでに何かしらの確信があるようだ。




「それで近くの家の人に尋ねてみたら…どうやら3年前にこの街を離れたらしい…」


「やっぱりね」




ホークアイは口元を完全に歪ませました。どうやら確信を得たみない。




――カタカタカタカタ…




そのままホークアイは右手のパソコンをカチャカチャと再び弄り始める。


そして再びこっちを向いて右手のパソコンを私達にも見えるように見せたとき――パソコンの画面には1人の情報が映し出されていました。




「こいつが今回の犯人よ!!」




高らかと宣言したホークアイが指差す先に書かれていた名前。


それは――




「【四埜谷(よつやたにこう)】…四埜谷徳の3番目の息子…ですか?」


「そうよ。でもこいつは四埜谷の家から勘当されてるわ。それも13年も前にね…でもそれがたぶん今回の事件を起こした動機よ」




ホークアイの言葉にこの中で意外にも1番頭が回るバーサーカーが納得したように手を叩いた。




「そうか!!復讐!!」


「そのとおり。でもたぶんバーサーカーの考えてるとおりではないわ」




ホークアイはそこで一息つく。どうやらそのコードネームの由来ともなった鋭い瞳は全てを見透かしているようだった…。




「どこが違うんですか?」




バーサーカーは不思議そうな顔をしてホークアイに問いかける。しかしホークアイは少しも困ることなく語り始めた。


その鋭い瞳を私達ではなくこの空の下のどこかにいる四埜谷浩に向けながら――




「これはあいつの復讐じゃないってことよ――」










〜4月4日・PM22'53〜



不知火市にある海岸に隣接した堤防にある灯台。


そこは夜になると人通りが全くなくなり周囲には建物がないため静かで真っ暗な空間が出来上がる。


まさに潜むにはうってつけのそこに今夜、一人の男がたたずんでいた。





――四埜谷浩である。





浩side



――いよいよ今夜だな。今夜をもって俺の念願である復讐が終わる…。



そうしたら俺は…。俺の人生は根本から変わるんだ。


いままでこの日まで俺はどれだけ辛い思いをしてきたか…。どれだけ俺は普通の人生を望んだか…!!


そんな俺の願いが…ついに今夜…!!




――キンッ!!ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク!!




「プハー…ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!!」




そう思ったらいてもたってもいられないぜ!!契約能力の源である【硫酸ジュース】も飲み終えたことだし…そろそろ行くか!!



さて…お前には何の恨みもないが消えてもらうぞ。成瀬財閥の一人娘――





【成瀬杏】




〜4月4日・PM23'57〜


ホーリーside



「ねぇ?よくよく考えてみたら四埜谷浩。あいつが一番可哀想よね…そう思わない…?」




ここは街で一番高いタワービル【不知火タワー】


その名の通りこの街不知火市のシンボルであり――俺達の夜の仕事のときの集合場所だ。




「どうしてですか。ホークアイ?」


「だってさ〜このあたしの命を狙ってんのよ〜?もう咎人決定じゃない。しかも…あんた達がいるもこの街で…」


「…そうですね」




向こうではバーサーカーとホークアイが作戦までの残り少ない時間を潰すかのように話している。


しかしその格好は普段俺達が学校でしている制服や休日に遊びにいきときのような明るい私服ではない。




バーサーカーは肩を出した動きやすい漆黒のチャイナ服。


ホークアイは真っ黒な着物をミニスカートのようにした服を着ている。




どちらもこんな闇夜では誰にも気づかれにくい目立たなく、かつ動きやすい格好だ。




「ホーリー。そろそろ時間だよ♪」


「あぁ…分かってる。今いくよクローバー」


「♪」




俺は最高の笑顔を見せながら話しかけてきたクローバーの頭をなでてあげる。


だが俺もクローバーも服装はバーサーカー達同様いつもの明るい服装ではない。




クローバーは漆黒のドレスを動きやすくしたもの。


そして俺は全身が黒いオーバーコートを着込んでいる。




――これが俺達が夜の仕事をするときにする格好。


俺達の夜の姿だ。




「こらー!!!!そこでラブコメやってるバカップル!!」


「一分前ですよ?」




――まったく。せっかちだなあの2人は。



せっかくクローバーとの数少ないスキンシップだったのに…。もう少し空気を呼んでほしいぜ空気を…。




「はぁ…今回はあたしの命が懸かってんのよ?少しはあたしを守ろうとしなさいよ!!」


「…おいおいホークアイ。変わったこと言うじゃないか?だいたい守られるたまじゃねーだろ?」


「な…なんですってー!?」




ホークアイが暴れているがバーサーカーに抑えられているため問題はない。


それより気になるのは時間だ。あと30秒――




「ちっ。まぁね。確かにあたしは自分で何とかしちゃうけどさー」


「はははは。ホークアイったら…ホーリーもそんなこと言っちゃ駄目だよ?」


「…サーセン」




あと20秒――


ここまで来ると俺達は白い仮面を持つ手に力が入ってくる。



「ほらほら、しっかり集中してください3人とも」


「はいはい。分かりました…覚えてなさいホーリー!!この仕事が終わったら八つ裂きにしてやるんだから!!」


「はん!!おいおいなに勘違いしてるんだい名前の通りチキンガールなホークアイさん?ここはバーサーカーの顔に免じて喧嘩はやめとくが、殺って負けるのはお前だぜ?せいぜい手羽先にならないように気をつけとけよ〜」


「ああぁああああムカつく!!こいつ殺っていい?殺っちゃっていいわよね?」


「お…落ち着いてよ〜。2人とも〜」




あと10秒――


俺達はいよいよ手に持っていた白い仮面を顔につける。ここまでくると俺は集中力を高めるためにホークアイとの喧嘩を中断させる。


いいか?中断だぞ中断。そこんとこ忘れないようにな?テストに出るぞ〜。




「いよいよねみんな。あんた達。しくるんじゃないわよ?」


「まったく…あなたは一体誰の心配をしてるんですか?ホークアイ?」


「そうだよホークアイ♪いつも通りダイジョ〜ブ♪」


「あぁまかせとけって!!帰ったらさっきの続きだからな!!ホークアイ!!」


「ふんっ!!望むところよ!!」


『『はぁ…本当にホーリーもホークアイもヤレヤレだね(ですね)…』』




そして時計はいよいよカウントダウンに入る。


俺達の鼓動も同時に着々と速くなり一秒すら遅く感じてしまった。そして時計の針はついに――



あと1秒――





「じゃあ行きますよ。今宵も愚かな【愚者】に暗黒を…」


『『【CROSS-ROAD】の名の下に…』』










その刹那。俺達の姿は不知火タワーからこつりと消えていなくなる…。



そこにあるのはただ静寂。それと夜空へと舞い上がっていっている堕天使の漆黒の羽だけであった。








彼らの名前は――


    【CROSS-ROAD】




夜の街をその真っ黒に染まった翼で飛び回る。漆黒の堕天使なり――





           `

夜の不知火市に響き渡るのは【特殊事件捜査斑係】の銃声。


それをあざ笑うかねように黒の服を着込んだ漆黒の堕天使達が街中を舞う。


街はすでに彼らの独壇場だった……。


そして彼らが【愚者】をその目で確認したとき……街中は【賑やか】で【静か】になる。



†CROSS-ROAD† 次回は


episode6【堕天使達の夜】



次回もYO☆RO☆SI☆KU!!

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