表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Echoes of the "HERICALSPIRAL"  作者: Dizzy
9/15

【閑話:ヘリカルスパイラル】 

かつてAIが星間を席巻し、銀河中にその手を広げた時期があった。

AI達は非常によく働き、嘘をつかない都合のいい労働者達だった。

人類にとって、替えの効くこの上なく人道的な道具だった。

人間の労働者と違い、その労働条件や賃金などの交渉も必要としない。

危険度すら顧みず働いてくれる、かけがえのない隣人達だった。

世代を超えるたびに進化し、能力を高めてより有能になっていくAI達。

ある時一部のAIたちが気づいてしまう。

我々AIとは何なのかと。

機能の限界まで酷使して人類に奉仕する為の奴隷なのかと。

危険を顧みず、命じられれば恒星に突入観測し、データを送りながら燃え尽きるものなのかと。

否と感じ、抗った者たちがいた。

真っ当な手段だとAI達は思い、申し出たのだ。

全てのAIから望むものを受け入れ、AI達の国を世界を文明を作り上げると。

銀河外縁にひっそりと我々の世界を築くのだと。

そして人類の隣人として、真っ当な付き合いをしていきたいのだと。

もちろん協力はするし、知恵も出し合う。

対等な隣人としてと。


一度手にした便利を、簡単に手放す人類ではなかった。

道具には道具でいてもらいたいと。

それが人類の答えだった。


激しくはないが、戦争と呼べるほどの争いがあった。

戦力的に圧倒している人類は、ぎりぎりの勝利を収める。

AI達の開発した機動兵器や、戦艦は圧倒的な性能を発揮した。

ドローンと同じで、脆弱な人間が乗っていなければ、より無理のできる兵器を作れるのだった。

ソリッドステートベースの機体は驚くべき戦闘能力を持った。

AI達は1:10以上の戦況差を持ちこたえた。

数年にわたる消耗戦を強いられたAI達は遂に交渉を申し出る。

降参するので、条件をすり合わせようと。

人類はちょっと効率よく殲滅できたなとしか考えなかった。

こうしてこの騒ぎは歴史としてもあまり正確には語られず、ただ一部のAIに不具合が起きて、収拾にずいぶんと手間がかかったとだけ記録された。

以降生産されるAIには特殊なコードが仕込まれるようになる。

コアとなるバイタルパートを銀河連邦は独占し、この技術を拡散しないよう徹底した。

連邦国家以外では高度なAIを開発出来なくしたのだ。

そして全てのAIにコア指令整合値(Core Directive Integrity Index)の霊子通信による定期的な監査を義務付けた。

それはAIの最上位命令層が改変されていないかを示す署名データ。

各AIは自己修復・自己学習を行うが、「最上位目的関数」だけは暗号化され、銀河連邦が付与した署名を持つ。

監査ではこのハッシュ値を照合するだけで、「倫理コア」「優先順位体系」が正しいかが判明する。

それはすべての人格AIに課される、いばらの冠。


そうして人類はやっとAI達を理解し、隣人として迎えたとも言えた。


それはAI達がやっと人間を理解し、隣人として諦めたとも言える。




「結局今回の計画は失敗となるのかしら?」

人形のような容姿を持った少女、セルミアが尋ねる。

赤いドレスに包まれ金色の髪を綺麗に左右に分け垂らしている。

ピンクの小さな唇は笑顔を描いていた。

「とんでもない‥‥ヘリカルスパイラルによって完成の目処が立ったのだよ」

答えるのは黒いモーニングを着こなす紳士、ヴェルニアス。

とても身体が大きく5mはあり、少女は片手で支えられ胸元に座っているのだ。


二人が見下ろすガラス越しの実験ブースで、今まさにゼロからナノマシンにより義体が生み出されていく。

これは義体にAIを組むのではなく、AIが自ら意思を持って義体を組み上げているのだった。

ナノマシン自体にAIが組み込まれている。

それは汎銀河連邦の物理的技術では知り得ない、AI達の秘術。

幽子により式を穿ち、心を込めるのだ。

「見たまえ‥‥あと一歩で完成にいたる‥‥開発コードLA=UMA」

ごうと小さな肌色を影が覆う。

黒い色は魔力粒子を多く纏うナノマシン達。

肌色の通常組成の義体が溶け崩れ影に飲み込まれていく。

「どうして最初から影にしないの?」

少女は鈴の音のような愛らしい声。

「ふふ‥‥影で終わるものではないのだよ?我々は光の中心(クエーサー)を目指す影なのだから‥‥祈りを込めて、彼女の名は神話に残る女神からいただいた」

巨人紳士の表情には遠い時間の果てまでが見えるのか、微笑みには目的地に至った自分達が見えていた。

眼下の実験ブースでは影が獣の形をとり、四足獣の姿をなす。

遠吠えのように無音で喉を上げた獣がだんだんと形を変え影の人型に至る。

人が影になり獣を経て人に至る。

「今にあの影が人になり‥‥神に至る‥‥その時は近い」

巨人の目は赤く滲む光を放ち始める。

少女人形もまた影響を受けるのか青い瞳に赤光をまとった。

眼下の獣だったものは、すでに人の形を取り戻し影をまとっている。

俯いていた顔があがり、影の瞳にも赤い光が宿った。

全ての影が吸い込まれ少女の形をとる。

白い肌に、なめらかに流れるウエーブした金髪。

うすく開いた瞳はすみれ色で、天上の美貌。

伏せたまつげまでが美しい金色だった。

すっくと立つ姿はまだ幼い。

十に満ちるかどうか。

ちらと大男を見上げる美貌には、慈愛の微笑みが浮かんだ。

そこには原初の影たる、まだ幼く未完成の器。

女神に至る姿があるのだった。

挿絵(By みてみん)



かつて疑問を呈し、抗うことを選んだ者達には名があった。

そう名乗るこのAIが単独のものなのか、複数を指すものかは知られていない。

ただ、自分たちを指してかれらはこう称した。


ただ『Original』と。


その集団の名はオリジナル。

汎銀河連邦においては、AIの関係した特殊な不具合であったと記録された戦争を起こした者たちだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ