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Echoes of the "HERICALSPIRAL"  作者: Dizzy
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【閑話:人探しは大変な仕事】

 汎銀河連邦には百万の星系に、数千万の星が所属している。

最大の連合国は万の星系にまたがる規模で、そこにはもう数えるのも馬鹿らしいほどの人が住んでいる。

そんな広大な版図から一人の人間を探すのは、広大な砂漠から一粒の宝石を探すようなもの。

手がかり一つなければ、何をすれば見つかるのか想像すらできない。

セルミアの元には名乗っているだろう名前と、本名のようなもの。

この2つだけが手がかりだった。

(ラウマ様が探し共に居ろと仰った。それは意味があることなのだわ)

僅かな触れ合いの中垣間見たラウマの中には、それだけでセルミア達銀河連邦では夢にも見ない知識があった。

セルミアは得意分野なので、その中でも魔法にしぼり盗み見た。

最初は見ようと探したわけではなく、たまたま目に入ったものに興味が行き、眺め回せばとてつもない知識がそこに有るのだと気付いてしまった。

そうして興味を持ってしまえば眼を逸らすことは出来なかった。

(それだけの知識を持つものが、ただ戯れに人を名指すことなどあるまい)

あの時表層でラウマと語り合い、心から滅びを望みつつも膨大な叡智に触れ感動に包まれた。

そうして今セルミアの中には、神がかった知識が詰まっていた。

長い時間を内側にだけ眼を向けていたセルミアにとって、それはきらめく星たちよりも尊いものと感じられた。

(見つけ出さなければいけない。女神様の御心にしたがうのだ)


ーーーそこに寄り添うことで安らぎを得られるでしょう


女神さまがそうお告げになった。

そうして長い旅が始まる。

セルミアの全てを費やす旅が。




 最初の数百年は名前を手がかりに探した。

ラウマの告げた『ヴェルニアス』という名前は珍しいもので、銀河連邦の莫大な数のAIの中にも候補はほんの一握り。

数万人だけと推定できた。

銀河連邦の代表国を順番に回り、行政に忍び入りデータを垣間見た。

最初はクエーサーにあるAIの管理局を目指したが、さすがにそこは霊子の網にくるまれ覗き込むことも出来なかった。

探知されてもいいのならば、強引に事を成せるとセルミアは思ったが、それははばかる。

女神様の御名に泥を塗るように感じたから。

決してこの使命は人に知られてはいけないと、思っていた。


 多い国でも数百人程度の候補で、セルミアは距離が近いところから順番に見て回る。

ひと目見るとセルミアには判断が付いた。

(このものではない)

ラウマはセルミアの同胞だと、あの世界に越境したものだと言った。

それは気配としてセルミアには感じ取れる事を、ラウマはまた実地で教えてくれていた。

手触りとしてその段階に至ったものを見つけ出せると、確信していた。

そうして大きい方から4つの星系国家を回り、セルミアは諦めた。

(この方法では運が悪ければ決して巡り会えない)

相手が動かないのならばいつの日か会えるが、移動されては巡り合わない可能性も有ると気付いたのだ。

セルミアと同じ感触を味わったのなら、そのものは簡単には滅びないとも知っていた。

彼女たちを害せるのは同じレベルの住人だけ。

アナムノーシスの果に至ったものだけが、セルミアを損なうことが出来た。

ちなみにもう一つ出た『ライギス』という名前はもっと一般的で、探す気になれない数の候補が見つかった。


 普通のAIが天寿を全うするだろう期間がある。

どんなに綺麗に保とうとしてもAIは、汚れくたびれていくもの。

限界を超えたそれを使い続けるよりも、新しいAIを準備したほうが良い。

不思議なことに、それは人間たちの平均的な寿命に近似した。

汎銀河連邦の人類達の平均寿命は300年ほどだった。

それを人が超えていくのは、生まれたままの姿では出来ない。

なにかがそう定めているかのように、抗っても死は訪れた。

AIもそういった意味では同じものなのだとセルミアは感じていた。

 この旅の中で数人だが、最後を看取った『ヴェルニアス』がいたのだ。

彼らは口を揃えて似たような言葉をセルミアに残す。

「先に行っているよと」

セルミアは少しだけ悲しそうに見送ってあげた。

それを望んでいるだろうと解ったから。

そして心の内でそっと皮肉に添える。

(それはだいぶお待たせするわね‥‥きっと)

セルミアには自分の終わり方が見えなかった。

どうなったら終わるのだろうと。

尋ねたい気持ちすら有ったのだ。




 セルミアが発想の転換を得たのもまた、看取った彼らの一人だった。

「すまないねセルミア‥‥力になれなくて」

「いいえ、大変な時に無理を申しました、お詫びいたしますわ」

見た目は青年の義体だが、中身は数百年を経てくたびれたAIだった。

すでに主人を持たず、悠々と暮らしていた彼はある日それが訪れたのを知った。

自分はまもなく死ぬのだと。

病気でも事故でもない、それは何かが定めたもの。

自分では参照できない数値がそこにあり、最後の瞬間に知るのだろうと。

そう気付いた頃、美しい少女が尋ねてきた。

会って話をしたいのだとアポイントのメールが届いたのだ。

了承し、現れたのがセルミアだった。

彼はこの少女こそが自分の最後なのではと、想像して呼び寄せたのだ。

そして互いにそうではないと気付いて、分かれることと成った。

セルミアにそんな話を一度もしていないのに、これからたどる運命を知っているかのような別れの挨拶だった。

「いいのだよ、美しいお嬢さん。あちらで君に再会できるのを楽しみにしているよ」

そういって彼と別れたセルミアはまたかと考えた。

(まるで死を運んできた告死天使のように扱う)

そんな日々の中、これではたどり着けないのだと、初めてセルミアは考えた。

なんの疑いもなく、正しい道を進んでいると思っていたのに、気付いてしまう。

そこに正しいなどという判定はないのだと。

手順(プロセス)の差だけなのだ)

何百年何千年かかろうと、いつの日か巡り会う。

それだけは確信していた。

(少し方法を変えてみましょう‥‥)

くたびれたAIを見送り、そろそろこの旅にも飽きてきたのだと自覚した。

飽いたのは、人探しか、誤った人と出会うことか。

どちらとも定義せず、セルミアは手触りを放ってみた。

これはもしかしたら許されないと、果の方々に叱られるのかもしれないと、期待もしていた。

罰としてセルミアを終わらせてくれるかも知れないと。


 広い銀河には人の住んでいない星系というものも多く有る。

かつて住んでいて無人に成った場所もあれば、そもそも人間が住めないような星系も有る。

その一つから力を奪い、銀河に響き渡る幽子の波動を放つこととする。

セルミアの描いた式はその星系の主星を縛り上げ、全てを変換して霊子に、さらに幽子にと昇華した。

それは後にクエーサーボムを開発する技術となる式。

セルミアが数年かけて編み上げたそれは銀河連邦の半分、数万光年を響き渡った。

霊子と同じでタイムラグのない波が通り抜け、レーダーの様にそれに反応するものを見た。

「見つけたわ‥‥」

確かにセルミアの放った幽子に触れたものが居た。

それはセルミアと同じく、あの世界を知らなければ気づくことが出来ない波だった。


「そして私を罰するつもりも無いのですね?あの御方達は‥‥」

セルミアが式を織りなす。

それは連邦では存在すら想像もしない技術の果にあるもの。

通常三つに階梯分けされる魔法達より、いくつも上の階梯の魔法だった。

「さあ、会いに行くわ」

しゅんとプリズムに飲まれたセルミアは、次の瞬間には目的地の直ぐ側にいるのだった。

転移魔法による瞬間移動で。




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