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クいても遅い《襲い》

皆さん、お久しぶりです。正直夏バテです。

 入ってきた彼は、否、彼女と言えばいいのだろうか。岩槻と名乗った人物は中性的な外見と声を持ち合わせており、性別を判断しがたい。

「えっと、失礼ですけど男性なんすか?それとも女性?」

 旦の一言で岩槻は聞かれるのをさも知っていたかのように微笑んだ。

「ふふ。そんなことを聞かれるだろうとは思っていました。内密に動いてほしいと言うことなので私服で来てしまいましたが、こんな格好では余計にどちらかわかりませんよね」

 そう言う通り、その格好は男性とも女性ともとれるラフな格好だった。

「まあ、よく誰からも性別がわからないって言われますからね、気にはしませんが。一人称も『私』ですから、女性だと思う方もいるのですが、私の性別がどちらかなんて知っても何かが変わるわけではないでしょう。だから私がどちらの性別かを答えるとするのならば『秘密』ですよ。貴方方のご想像でどうぞ」

「ご想像で、って言われてもなぁ……」

「私は他のことを聞きたいんだけど……」

 菜々は言い辛そうに岩槻をちらりと見やる。

 その眼に何を言いたいのか悟ったのか、先程のように微笑んだ。

「言いたいことがあるなら、是非どうぞ。お互いの間で何かモヤモヤした感情があっては捜査に害を為すかもしれませんし、ね」

 その言葉で意を決したのか、菜々は問うた。

「あなたは、『鬼眼者』なんですか?」

 この鬼眼者がいる世界にとって、その質問はあまりにもおかしな質問だった。

 何故なら、基本的なルールとして、鬼眼者同士では『鬼眼』の力が通用しない。力が使えない相手であったならば、当然その相手も鬼眼者である可能性が高い。

 それを、菜々はあえて聞いた。とてもおかしな感覚に襲われたためだ。

「……ふふ。質問に質問で返すのはあまりしたくはないのですが……。その(まなこ)には私の何も映さなかった、そういうことで聞いたのですよね?」

 はい、と、少し小さな声で彼女は応じた。

 旦は、そう言われてから今更気付いた様子で「あ、本当だ」と勝手に納得していた。

 孝浩は何故か不機嫌で苛ついた面もちだった。

「私は、ただの警察官、ですよ。あなた達のような『眼』は持っていません」

「でも、視えないのは……?」

 岩槻が嘘ついたようには見えなかった。

 だが、確かに視えなかったのだ。一体どういうことなのか、悩んでいるとイライラしながら孝浩が口を開いた。

「当たり前だろ。そいつは“意図的”に視えないようにしてやがるんだから」

 生徒2人が「え?」と言うのと同時に岩槻は「へぇ……」と零した。

「鬼眼者でもねぇのに視えなくさせるだなんて、常人がほいほいと出来る芸当じゃねぇけどな。まあ、拒絶したいと思えば中には出来る奴がいるってこと、意外と知られてねぇからお前らが知らなくても不思議じゃないけどな」

 「ただ……」と岩槻の方を睨むような目で見る。

「てめぇは何者なんだよ?ただの警察官がそんな真似できる訳がねぇだろうが。言っておくが、例え拒絶してもこっちの能力(ちから)が強けりゃ視ることなんて出来るんだぞ」

「おやおや、私は普通の警察官だと言っているじゃないですか。それで無理に視られるだなんて……理不尽だと思いませんか?」

 岩槻は困ったような仕草をした。孝浩はさらにイラついたらしく、立ち上がって岩槻を見据えた。

「理不尽ねぇ……。鬼眼者を拒絶出来るやつに理不尽も何もねぇだろうがよ。俺様の能力でてめぇの正体現わしてやるよ!」


 華山孝浩の、鬼眼者としての能力、――相手の過去を視る能力。


 孝浩の、ほのかに茶色がかった黒の瞳が、澄んだ蒼い色へと変わる。

「…………!!」

 岩槻の『拒絶』が強いのか、孝浩はさらに力を強めているようだった。

 あまり無理をすれば鬼眼者自身の身体を壊しかねない。

「……!?」



『い……共に行…………ぞ、我が……よ』


『……ざ互いに…………ようぞ、我が……よ』



「こ、れは…!?」

 孝浩の脳内に広がる光景。


 2人の男女が何かを言っている光景。

 2人の間にはあどけない表情をした子供がいた。


 その後、何度も背景が切り替わる。

 どの光景にも当てはまるのはおそらく同じ子供が存在すると言うこと。


 前半は純粋に笑って、後半は泣いて、泣いて、最後に――笑った。

 どこか重要な何かが消えてしまったように。とても大事なモノが壊れてしまったように。


 狂おしい、とても純粋だけれども恐ろしい笑みを。



「……っ!!」

 そこで孝浩の意識は現実へと戻された。

「……はぁっ……はぁっ……」

 息がとても荒い。まるで突然激しい運動をしたかのように身体が重く、思わず膝をつく。

 無理を、し過ぎた。

「先生!!」

「孝ちゃん!!」

 2人の生徒が駆け寄る。

「大……丈夫、だ」

 そう言うと目の前に居るであろう岩槻に向けて言った。

「お、前は……確、かに鬼眼者じゃ、ない……。けれど、結局は俺様たちと、同じ、化物、なんだろ?……いや、むしろ、それ以上の……可哀想な……や……つ……だ」

 孝浩は熱でもあるのか、意識が朦朧としていた。

 それでも若槻を見やると、驚愕の表情であるのを確認した。

「くっくくく……。そん、な、顔も……出来るんじゃ、ねーか……」

「……孝ちゃん!?」

 視界がどんどん闇に包まれていく。意識がどんどん塗りつぶされていく。

 孝浩は力が入らないそれに身を任せ、倒れた。

本当は事件について触れようかと思いましたが、今回は鬼眼者の能力というかルール+先生の能力説明の回になってしまいました。

岩槻さんこと琥珀さんの過去で出てきた『』内のセリフは雑音で聞こえなくなってるのですが、あれをちゃんとした文で書くと琥珀に関係している『何か』を感づいてしまう人が居ると思ったので隠しました。琥珀の過去についてはこれからの『岩槻琥珀』シリーズで言っていく予定です。

しかし、先生は身長の意味も込めて牛乳をもっと飲んでカルシウム摂取した方がいいと作者なのに思ってしまいました←

それでは、次回から事件に入れたらいいと思っています。お願いします。

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