6話 ソロキャンプ
晴子
ゆっくりとふもとっぱれを散歩してからテントに戻ると、周りにはテントが増えていた。
もちろんしっかりと距離は空いている。
斜め後ろにはファミリーテントが一つ。隣に大型タープが張られている。
タープの下で坊主頭に髭の中年男性が設営をしていた。
真横には山岳用だと思われる小さな白と赤のテントが張られている。
こんな感じのテントを、父が持ってた気がする。持ち主はいないようだ。
とにかく、残りの設営を終わらせよう。
コット、椅子を組み立てる。中国製の安いものだが、十分に使えている。コットをテントの中に入れ、シュラフを出しておく。
あとはテーブルと焚き火台を用意してほぼ、完成だ。
少し離れた場所から自分のテントのレイアウトを見てみる。
料理をするには少しテーブルや物を置ける場所が少ないが、なんとかなるだろう。テントや椅子に統一感があって中々良い感じになった気がする。
今はまだお昼すぎだ。
これから夜ご飯を作る時間まで自由時間だ。
椅子に深く座りハンバーガーセットで飲みきらなかったカフェオレを飲む。
目の前には青い空とだだっ広い草原、それに数百のテント。眼前にはド迫力の富士山がある。
あぁ、受験生なのになんて贅沢な時間なんだろう。
葵や友人と一緒に来たら更に楽しいだろうなと想像する。
それに従姉妹の彩ちゃんともキャンプをしてみたい。
従姉妹の彩ちゃんは幼い頃から私の憧れで、最近普通自動二輪の教習所に通い始めたらしい。
いつか一緒にキャンプしようと約束している。私の受験次第では10月末には進路が決まるかもしれない。
決まったら色んな所にキャンプに行きたいと思っているがどうなる事やら…
ふと我に返るとせっかくソロで来ているのに、彼氏が出来たらとか友人ととかそんな事を考えている自分に気付く。
周りのキャンパーや子供たちの声がやけに大きく聞こえてくる。
「もしかして、私寂しいのかな」と呟く。
なるほど、これがソロキャンプか。と少し納得もする。
とにかくこれから数時間フリータイムを全集中で満喫する事にする。
ブルートゥースのイヤフォンを付け、スマホで大好きなアニメの続きを見る。