4話 NEWテント
晴子
ふもとっぱれのチェックインはなんとドライブスルー方式だ。
車で入場しようとすると、事前にナンバーから予約情報をチェックされ真横に行った時〇〇様ですね?と急に言われてドキッとする事になる。
今回はバイクなので予約してありますか?と、問われ名前を答える。軽い説明を受け現金で支払いをする。
チェックイン開始時刻に来ると、ここまで来るのに数十分渋滞になる事がある。
その時間に中に入ったとしても前日のキャンパーがまだ撤収していないので、良い場所は取れない事が多い。
私は何度もこのキャンプ場を経験しているので丁度良い時間に来たつもりだ。
ドライブスルーを過ぎて砂利の道を恐る恐るゆっくりと走っていく。
右にカーブすると今日は大当たりだ。
空は文字通り雲一つない晴天。
富士山がはっきりと見える。
連泊しても一度も見えない事もあるのに。
頂上付近にはまだ雪が残っていて、ため息が出るほど美しい。
だけど、富士山を眺めるのは後ででいい。
目前にとにかく広い、東京ドーム5個分の原っぱが広がる。
いつも思う事だけど、東京ドーム行ったこともないし想像も出来ないから、小学校の校庭何個分とかもう少しわかりやすい単位はないのだろうか。
とにかく本日の目的地であるライブカメラに映る範囲に向かっていく。
現場に到着すると、丁度良いタイミングで大きい車2台が出ていく所だった。
何個か大型テントやタープを張っていたのだろう。
ポッカリと良い場所が空いた。最高のタイミングだ。
私は精一杯悪ぶった顔をして呟く
「計算通り」
クックックとついついキラムーブをしたくもなる。
ライブカメラ視点からすると左側に場所をとる事が出来た。
今日の一番の懸念事項があっさりとクリア出来た。きっと日頃の行いが、良いからだな。と少しニヤニヤしてしまう。
カブのセンタースタンドを立てて荷物の一番上にあるシートを広げ、その上にテントを置く。
今日とても楽しみにしていた一つがコレだ。
初めて自分で買ったテントだ。
スノーピークのアメニティドームSの海外限定カラーアイボリーだ。
今までも某アニメで青い髪の女の子が使っているムーンライト2型を使ってはいたが、今回はソロでしかもバイクだ。
雨が降ってきた場合テントに籠るしかないのだが、ムーンライトテントは人間1人横になったら荷物を置くスペースがあるだけなので、何も出来なくなってしまう。だけど今回購入したテントならば前室をポールで立ち上げればおひとり様用タープにもなるのだ。
ツーリングキャンパーに大人気のツーリングドームと迷ったが、限定カラーのアイボリーが可愛いかったので奮発してしまった。
収納サイズは少し大きいけど、何とか積載できるレベルなので許容範囲。
スノーピークは高級なメーカーだかこのテントはリーズナブルで高校生のアルバイトで買える金額のテントだ。
「見せて貰おうか。スノーピークの性能とやらを」
一人呟きながら、テントを開封する。
実は既に自宅の駐車場で試し張りをしているので初めてでは無いのだが、かなりテンションが上がる。
2度目なのであっさりと15分程度で設営が完了する。
ふもとっぱれは強風になる事があるのでガイロープもしっかりと張った。
テントの入口部分を別売りのタープポールを立て開口すれば、雨が降ったり日差しが強くても、ここで料理したり、ゆっくりと出来る。
とにかく場所の確保が出来たので、残りの設営は後にして、お昼ご飯にする。
と、その前に富士山とテント、カブ、それに自分も入った写真をインカメラで撮影する。
後で葵と家族LINEに送るつもりだ。
貴重品は小さなポーチに入れてふもとっぱれの中にあるカフェまで歩いていく。