15話 トントゥ
真
晴がお土産に買ってきた分厚いハンバーグを焼きながら、雪乃さんがふと尋ねた。
「初めてのソロキャンプはどうでした?」
晴子は特に疲労感も無いようで、普通に学校から帰宅したようなテンションだ。
食器棚から茶碗を出しながら返答する。
「んーまぁ良かったよ。天気良かったし。知り合いが出来たよ。」
俺は少しドキッとする。が極力平常を装った。その表情を晴子が怪訝に見ている気がした。
「ナナさんていう女性なんだけど。ソロキャンプしてて、話しかけてきてくれて。」
良かった。
リアでもユウジでも無い。
多分バレなかったのだろう。
「30代だと思うんだけど、おっきいハーレー乗ってて。かっこよかったー。四国一週してきた帰りだったんだって。」
「へぇー凄いわね。女の人一人で四国一週なんて危なく無いのかしら」
雪乃さんは意外にも興味がありそうだ。
「色々気をつけてるみたいだよ。旅館に泊まる事もあるみたい。富士宮焼きそば奢って貰っちゃった。」
ん?ハーレー乗って、旅してる30代女性、四国?ナナ、菜々?
俺は横から口を出した。
「晴。そのハーレーってタンクの色アイボリーのロードグライド?」晴は露骨にめんどくさそうに対応する。
「もー今お母さんと話してるんだけど。ロード…何?わかんないけどタンクは白っぽかったかな。」
俺はネットで検索して写真を見せる。
「んー少し違う気がするけどこんなバイク。富士宮焼きそば食べにうるおっ亭ってお店行ったんだけど」
「う、うるおっ亭?スキンヘッドの人いた?」
「いたいた。スキンヘッドのハチマキしたおじさんが焼いてくれたよ。ハーレー仲間だって言ってた。」
マジかコイツ。
まさか小説家の直木賞作家の菅原菜々さん?
自分の写真を開示していない小説家で最近四国の写真をいくつかxにポストしていた。
菅原菜々さんの小説は俺の愛読書だ。結構ガチのファンと言っていいレベル。
小説の中に時々うるおっ亭オーナー店長のスキンヘッド男性が出てくる。
「え?お前連絡先とか聞いた?そのナナさん。写真は?」
「うるさいなぁ。写真は取ってないよ。連絡先って言うかインスタとxは相互フォローになったよ。あ、人形くれたよ。トントゥって言う。」
そう言ってツーリングバッグから人形を出してきた。
あぁ、もう間違いない。
小説の人物紹介の写真に使われている人形だ。
とても大切な人形じゃ無いのだろうか。
う、羨ましい。
サイン書いてないかな?
でも自分で名乗らなかったのだから、やはり知られたく無いのだろう。
俺もあえて言わないようにしておこう。
「お前それ大事にしろよ。」
「当たり前じゃん。名前何にしよーかな」
晴はとても満足そうに人形を眺めていた。




