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白鷺の砦  作者: 浅葱恵莉
19/23

殺意と絶叫

静寂の空間に、突如馬の高らかな鳴き声が響き渡る。


忠刻が馬を最大限急がせるために手綱を打ったためだ。城の鉄壁の守りとも言われるいかめしい門が鈍い音を立てて開く。

家臣がこうべを垂れ、「いってらっしゃいませ」と声を懸けた時にはもうそこに忠刻の姿はない。

一陣の風が吹き終わったころ、家臣は立ち上がると門を閉めにかかる。だが、ふとその歩を止めた。

顔を少しばかり上向かせると、その目に上空の蒼色が映る。

別に変わったところはない。いつも通りの晴天だ。だが、何故だか胸騒ぎがする。


――今日は雲の流れが異様に速い。


しばらく空を見つめていた家臣だったが、門を閉めるのを忘れていたことを思い出す。


「忠刻様…どうかご無事で…」

重みと歴史を感じる姫路城の門を閉めながら、家臣はただひたすらに祈った。






「おい、大事ないか」


忠刻が投げかけた視線の先は、馬の後方でぐったりと上半身を垂れている紗那がいる。

こうして馬に相乗りするのは二回目である。だが、この感覚にはどうにも慣れない。


当初、政朝の屋敷に向かうため忠刻と馬に相乗りをすると聞いた紗那は、胸が高鳴っていた。


(馬に相乗りって…何だか恋人同士みたいじゃない!?ということは忠刻様の腰に手を回すことに…)

下手な妄想を掻き消し、不安と喜びが混ざっていた紗那だったが、いざ乗るとなると激しい揺れと流れる景色のため、酔いっぱなしである。全くと言っていいほどロマンチックの欠片もない。


(誰よ…『馬に相乗り=恋人同士』なんていう方程式を作成した奴は!!私に今すぐ謝りなさいよ!)

それはお前だろと思うが、現在の紗那は混乱中なので指摘したところで無駄だろう。

だが、紗那が酔うのも無理はない。なぜなら、只今の馬の速度は車を超えているからだ。

しかも、紗那は馬などとは程遠い生活をしていたのでなおさら慣れない。

もっと北海道行った時に乗馬体験をしておけばよかったなどという後悔が湧き上がってくる。


そして、理由はもう一つあるのだ。

政朝の屋敷まで行くには二つのルートがある。平坦な馬向きの道と断崖絶壁の近道である。

何を思ったのか、忠刻はあえて後者の道を選んだ。そのため、紗那は震度七にともなう激しい揺れを体験する羽目となった。


「おい、本当に大事ないか?顔が白いぞ」

お前のせいだよ、お前の。と叫びかけたが慌てて言葉を飲み込む。せっかく心配してくれているのに。

両頬をぱちんと叩くと顔を上げ、わざとらしい作り笑いを浮かべた。

「だ、大丈夫よ…全然元気っ!」

「そうか、ならよい」

どこがよいのか全く不明だが、忠刻は変に納得した様子で再び馬を急がせる。

「もうしばらくで到着だ」

忠刻のその言葉にほっと胸をなで下ろす。この地獄もあとほんのちょっとの辛抱だ。

一体何時間こうして馬に振り回されていたのだろうか。感覚さえ狂ってきている。


と、急に視界が開けた。眩しいばかりに差し込んでくる陽光に思わず目を覆う。

だいぶ眩しさに慣れた所でそっと手を外すと、視界一杯に広がっているのは広大な規模の屋敷だった。

東御屋敷ほどまでの大きさではないがかなりの敷地を所有している。それは彼が権力者だということを示していた。


忠刻に手を貸してもらい馬を下りる。何時間ぶりかの大地に立ち、自然と背伸びをした。

馬を近くの木に結び終わった忠刻は振り向くと屋敷の門に向かって歩を進める。

それに気づいた様子の門番は慌てて忠刻に跪くと門に手を掛けた。


「おい」

その動作を離れた所で見つめていた紗那は突然声をかけられ正気に戻る。

「お前も来い」

「え、ええっ…でも…」

「何のためにここまで来たと思っているのだ、これはお前の問題でもあるのだぞ」

厳しい声音できっぱりと言った忠刻に言い返す言葉がない。ためらった後、しぶしぶ後に続く。

頭を下げる家臣の横を通り過ぎ、足を踏み入れると目の前に映ったのは優雅な庭園だった。

所々露出した岩に隙間なく生える青々とした苔。そしてそこから伸びるのは可憐な紅桜。


「……すごい」

意識した訳ではないが声が漏れた。だが、忠刻は見慣れているのか気にも止めず速足で廊下を進む。

「早く来い」

「は、はいっ」

今日の忠刻は何故だか機嫌が芳しくない。それもこの屋敷を訪れてからだ。不思議に思っていた紗那だが、理由はすぐに分かった。


「あれ、兄上久しぶりだね。三日ぶり…だっけ?」

来たはずの道を振り返ると、平然と腕を組んだ政朝が立っていた。その表情には全く驚いた様子がない。まるで自分達が来るのを分かっていたも同然のふるまいだ。

「お前にいつ会おうが、そんなことは関係ないだろう早く室に通せ」

「相変わらずせっかちだなぁ、怒りすぎはお肌に悪いよ」

「早く室に通せと言ったのが聞こえなかったか」

鈍い音を立てて刀が抜かれる。それが政朝に振りかかるすんでの所で紗那は二人の間に割って入った。

「とにかく!政朝に話したいことがあるの!!」

睨まれた政朝は逆に笑顔を浮かべると、まるで花でも眺めるかのように紗那を見つめた。

「久しぶり、紗那ちゃん。全然変わっていないみたいだね」

「ええ。でも、血の気の多さなら誰かさんのおかげで増えましたけどね!」

フッ、と艶麗な微笑を浮かべると、彼は軽く紗那の頬に触れた。

「さっき言ったでしょ?怒りすぎはお肌に悪いって。君って本当に可愛いよね」

「な―――!?」

突如、紗那の後方から風が駆けた。政朝はその殺意たっぷりの拳を少し身をずらしただけで避ける。


「―――調子に乗るのもいい加減にしろ。次同じ行動をすれば斬る」

「はいはい。すみませんでした、御免なさい」

ひらひらと手を振る政朝を冷徹な眼差しで睨む忠刻――この兄弟は、とてつもなく仲が悪かったのだ。

今にも殺し合いになりかねないので、紗那は本題に入ることにした。一つ咳をすると向き直る。


「政朝、神社の鍵と花瓶を返しなさい」

「は?」

「だから、鍵と花瓶を返せって言ってんの!」

政朝は、しばらく目線を上向かせて考えたのち、ポンと手を打った。

「ああ、あれね。借りっぱなしにしてた」

そう言うと何やら懐を探り始める。今度こそ『ド●エモンのポケットか』と盛大につっこんでやりたくなった紗那だが、通じないのでやめた。

しばし探し出すまで時間を要するようなので忠刻は次の話題を切り出す。

「駿府で家康候がお亡くなりになったのは知っているな」

「あー…うん。葬儀に行かなきゃならないんだよね、面倒くさー」

懐をいじりながら政朝は溜息をつく。

「別に今逝かなくてもいいのにさ。せめて紗那ちゃん元の世界に帰してからにしてほしかったな」

「あと三日だ」

「………は?」

懐を探る手が停止した。

「あと三日、つまり家康候の葬儀に出発するまでに紗那を元の世界に帰す」

「ちょっとまっ…それってかなりムチャ…」

突如、政朝の言葉の語尾が不自然に切れる。彼は何かを感じたのか、いきなり廊下を駆け出す。

「お、おい」

何事かと忠刻、そして紗那も後を追う。ふいに、重いものをこすり合わせる音が響いた。そしてぶつかる金属音――

『ぐわああああああっ!!』 

「!!」

絶叫が、辺りに響き渡った。急いで駆け付けると、政朝がかがんで誰かを起こしている。この屋敷の家臣らしき人物だ。

彼の腕から肘にかけて滴るのはくれない色を帯びたどろりとした液体。その負傷者の顔を見て、紗那は思わず息を飲んだ。


斬られていたのは、先ほど門を開けてくれた門番だった――





政朝 「はい。皆様、読んでくれてありがとう」


忠刻 「……ちょっとまて、何故我々が後書きを乗っ取っているのだ、浅葱あいつはどうした、浅葱あいつは」


…ここだよ~………


両者 (暗っ!!浅葱暗っ!!!)


政朝 「…ど、どうしたのさ、やっとテストが終わったんでしょ?」


ズーン……(空気が沈む音)


政朝 「え、えーと、僕何か言ったっけ?」


忠刻 「ははん、さてはテストの順位が悪かったな」


そうなのです。ハイ。忠刻様の言う通りでゴザイマス。浅葱、一生の不覚です。土下座しざるをえなくなりました。

いや、結構頑張ったんですよ!?でも、今回平均点が意外と良くて…


政朝 「読者に愚痴ってどうすんの」


忠刻 「言い訳にしか聞こえぬぞ」


じゃあとりあえず…


御免なさい(土下座)


両者 (…………………)


両者 (っていうかパソコン内だから土下座しても分かんね――!意味ねぇ――!)


しかも今はテスト週間中なのです。最悪です。うぅ…

今度こそやらねば、本当に浅葱は死んでしまいます。お手数ですが、応援よろしくお願いいたします。あと、更新が遅れたことを、心からお詫び申し上げます。

それでは、今度は期末テストが開けた七月にお会いしましょう。(神よ!私に奇跡をっ!!)

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