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白鷺の砦  作者: 浅葱恵莉
16/23

知らせと葛藤

政朝 「駿府っていうのは今でいう静岡県のことなんだって」


紗那 「あの…何で冒頭からいきなりトリビアを?」


政朝 「まあまあ、後々大事になることは早く言った方がいいじゃん」


紗那 「???」


「死んだ…だと…?」


今日になってまだ間もない明け方。薄紫色を帯びた空に一筋の光が浮かぶ。

日の出を見上げながらその人物はがっくりと膝をついた。天守閣の床が軋む。

自然と手が痙攣した。ゆっくりと後頭部を押さえる。


「バ…カな…」

荒い呼吸を繰り返しながら床を見つめた。今だに信じられない。

陽光が、顔を照らした。


視界が絶望という名の世界に染まっていく。あの者が死んだ。


――すべてが、水の泡だ。


「今まで…やったことは…一体…」

腹の底から怒りと憎しみが湧き上がる。それは頬を伝って着物に落ちた。


歯を食いしばり、拳を握りしめる。呼吸の乱れが激しさを増していく。


「おのれぇぇぇぇぇ!!」

壁にかかっている数本の刀が視界の隅に入る。手を伸ばすと、一本を乱暴に握った。

容赦なく刀を抜く。銀色に輝く刃先が光に照らされた。


「あの男は…私が殺ると…誓ったのにも関わらず…!!」

刀は空を切る。花瓶に丁寧に添えられていた百合の花が切断された。

その衝撃で、前髪がかき上げられた。瞳は血走り、眉間には何本もの皺がよっている。

ふと、眩暈が体を襲った。上半身を折る。刀は軽い音を立てて床に落ちた。

呼吸を整えると、顔を上げる。


「いや…まだ、可能性はある…神力さえ…神力さえ…手に入れれば…!!」


刃先に映ったその瞳は、濁った紅色を帯びていた。





              ・・・…☆…・・・





青い澄み渡った空に向かって聳える姫路城。その中の一廓で朝餉を取り終えた忠刻は席を立った。

障子を開けると眩しいばかりの朝日が顔を照らす。

渡り廊下を悠然とした足取りで歩くと室に入った。仕事のためである。

硯をすりさらさらと筆を紙に滑らせていると、廊下から「忠刻様」という聞きなれた声が飛んできた。


「入れ、三木之助」

筆を滑らせたまま静かに言った。すぐさま「は」と、返事が返され障子が開く。

三木之助は向かいに腰を下ろすと脇に積み重ねてある書類の束に目を通す。


いつも通りの光景だ。


ふと、三木之助が手を止める。多少気になったが仕事を続ける。

「良い天気でございますね~」


そんなことかよ、と思いながらも声には出さずにいた。一腹のため湯気が上がる茶に口をつける。


「そういえば、紗那様が来てからは天気が崩れませんな」

瞬間、忠刻は吹き出した。茶はもろに書類にかかり台無しだ。ゴホゴホとせき込む主を見て三木之助は目を丸くする。


「ど、どうなさいましたか!?」

あわてて懐からてぬぐいを取りだす。忠刻はそれを無言で受け取ると口元を拭った。


「なんでもない」

「いやいや、たった今吹き出しましたよ!?なんでもありまくりですぞ!」

三木之助の細かいつっこみに言葉を詰まらせる。何事か考えたすえ口を開いた。


「茶に塩が入っている」

「いやいやいやいやいや、わたくしも飲みましたけれど一切塩など混入していません!」


「………」

「………」


しばしの沈黙の中、うぐいすの声がやけに聞こえたのが印象的だったという。


「記憶から消去しろ」

「…努力いたします」


少し頬を紅潮させながらも忠刻は再び筆に手を伸ばす。しかし、その手は廊下から近づいてくる足音により動きを止めた。


「忠刻様!!」

いきなり家臣の一人が障子を開け放つ。息が上がっており、肩が小刻みに揺れていた。走ってきたに違いない。


「おぬし…」

三木之助が無礼を指摘する前に家臣の大喝が飛んだ。

「駿府城にて家康候息絶えたとの御報告につかまつります!」

「なに!?」

二人同時に返事をしたことにも気がつかない様子で立ち上がる。

忠刻は落ち着いて家臣に聞いた。

「病死か?」

「い…いえ…何でも鯛の天ぷらを食べられてそれで…」

「はぁ!?」


まったくの意味不明である。鯛の天ぷら? 訳が分からないので、忠刻はあえてそこは無視した。


「だが、それは由々しき事態だな…」


忠刻がそう言ったのには理由がある。彼の母は徳川家康の嫡男・松平信康と織田信長の長女・徳姫との間の次女・熊姫だからだ。

かなりややこしい関係だが、まとめると

『忠刻は家康の遠い親類』

ということになる。


こうなれば嫌でも葬儀に参加しなければならない。そむけば幕府に反抗する行為と見られ、即刻お家取りつぶしとなるからだ。

つまり葬儀は葬儀でも今後の姫路藩の行く末がかかっていると言っても過言ではない。


「して、葬儀はいつに?」

忠刻の気持ちを代弁して三木之助は家臣に問う。

「お…遅くても来月には…」


来月となれば今からでも準備しなければ間に合わない。家康が亡くなったのは駿府。なら、葬儀もそこの周辺で行うはずだ。

姫路から駿府までは馬でも三十日はかかる。最低でもあと三日後には出発しなければ。


――だが。


彼女は、どうする――?


只でさえ危険な状況だ。置いていくなどできない。ましてや昨日は怪我まで負わせてしまったからなおさらだ。


「忠刻様?」

きっと今の自分は険しい顔をしているのだろう。三木之助の心配声が耳に入る。


彼女はほおっておけない。しかし行かねば姫路の危機だ。

これほどの葛藤に悩んだことが今までにあるだろうか。


――まて。選択肢が一つだけある。


彼女を、三日以内に元の世界に返せばいい。


ゆっくりと顔を上げた。そのためには早く彼女を連れてきた下手人はんにんを見つけなければ。

きっと相手も三日以内に大きな行動に出るはずだ。家康が死んだとなれば――


そうと決まればこんな所で休んでいる場合ではない。


「行くぞ、三木之助!」

「忠刻様!?」


突然廊下に足を踏み出した忠刻の後を慌てて追う。


――波乱の三日が、幕を開けた。

すみません。いきなりですがすみません。

更新がすごく遅れました。いや~最近色々あるもので…

という世間話は置いておきますね。


さて、珍しくも(?)体調を崩しました。

本当は今日は予定があったのですが休みました。ハイ。

五月なのに風邪です。喉がとても痛いです。しかも花粉症×風邪で最悪です。


奈阿姫 「いつも馬鹿みたいに元気ですのに…一体どうしたんですの?」


しょうがないだろ!本当に色々あったんだからな!

と、いうわけで浅葱の悪夢の二日間を振りかえってみましょう。


おとつい・貧血検査に続く嫌な学校行事、運動会があった。転倒して膝から血が出た。


昨日・なぜかハイキングで山に登った。計九キロの道のりを全力ダッシュした。


政朝 「くだらな~しかも最後のナニ?山登りって…」


だまれ、口をはさむな!そのおかげでこうして更新できたんだからな!

しかも来月にはテストもある…なんて最悪なマイライフ!

と、いうわけで風邪のせいで頭が混乱しております。文中にもいくつか変な個所があるかもしれませんが風邪のせいだと思ってください。

では~

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