変化
彼は思わずメッセージを落としてしまった。
「嘘だろ。場所が特定されるなんて。もしかしてここも知られてるのでは。」
彼は新しく入って来たルームメイトにはそのことを話せずにいた。ノアに電話しようとしたがつながらなかった。彼は何も持たないで外に出た。少し出た所に小さくVと言う文字が書いてあった。
「鳥の巣箱までバレてしまったらとんでもない。他に何か方法は無いんだろうか。」
彼は一人で方法を考えたが何も思い浮かばなかった。
「ノヴァ、君にすごい会いたいよ。」
彼女の名前を何度も読んだ。
「トーマス何やってるんだ。」
彼は気がついたら家の中で本を抱きしめていた。その様子をジョンは不思議そうに見ていた。
「特に何でもないよ。気にしないで。」
「お前少し変わってるな。」
そう言ってジョンは外に出た。
「トーマス、大丈夫?」
カロリーナが彼に声をかけた。
「大丈夫だよ。心配かけたな。」
「何か隠してるんじゃないの?何か一人で悩んでるような感じがするわ。私達に少し話して良いんじゃないの?」
彼女は心配そうに聞く。
「カロリーナ、俺は大丈夫だ。自分で何とか解決できるような問題だと思うから。」
「彼女のことで悩んでるじゃないの?」
「何でそう思うんだ?」
「女の勘よ。」
「そうか。」
「私が相談にのるよ。話せることは何でも話して。私ならきっと相談に乗れる。」
「心配してくれてるようだけどこの問題に君を巻き込むことはできない。僕と彼女だけの問題だから。」
「分かったわ。でも本当に困ったら私に言ってよ。力になるから。」
カロリーナはトーマスを見つめた。
その日の夜トーマスが夕ご飯を全員分作った。
「皆、ご飯が出来たぞ。」
そう言うと3人はダイニングの方にやって来た。
「お前作る料理美味しいな。」
「料理作るのが好きなんだ。」
「料理とか面倒臭くて嫌いだけどな。」
「ジョン、あんたは少しは料理作ったほうが良いわ。そんなんだと私ばかり作ることになるわ。」
ヘザーがジョンに言った。
「カロリーナはヘザーとはどんな友達なんだ?」
「よく来るバーで知り合った友達よ。話が気が合うからバー以外でもたくさん遊ぶようになったのよ。」
カロリーナが言った。
「そうなのか。前のルームメイトもバーで今の彼女と出会ったとか言ってたな。バーでお酒飲むのがそんなに楽しいことなのか?」
「あの特別な空間なのが良いのよ。」
トーマスはあまりそう言う所に行かないので不思議だった。
「ノアのやつもおめでたいものだな。」
4人はご飯を食べながら話した。
「食後の酒もどうだ?」
「飲むわ。」
「私にもちょうだい。」
「良いよ。」
食後も4人は酒を飲みながら話す。
「彼女とはどこで出会ったわけ?」
カロリーナがトーマスに聞く。
「まだ会ったことないんだ。」
「まだ会ったことないの?それって付き合ってるって言うの?」
「お互い好きなら。」
「それって結局会えないんじゃないの?」
カロリーナは言った。
「文通だけど、俺達は何も包み隠さずに全てを話しているし愛し合ってる。来週会う約束をしてるんだ。」
「顔とかも知らないんだよな?」
ジョンが聞いた。
「もちろん知らないよ。でも俺にとってはその彼女がどんな顔は重要じゃない。お互い心でつながって愛し合うことに意味があるんだ。」
「私だったらそんな恋愛しないわ。面倒臭いし。それで文通してどれくらいなの?」
ヘザーが聞いた。
「2ヶ月ちょっとくらいしてるんだ。彼女からすぐ会わずにお互いをよく知ってから会いたいと言われたんだ。だから長い期間文通をしてるんだ。」
「あんた優しすぎるわね。会って後悔しないと良いけど。」
カロリーナが彼を見て言った。
「彼女のことがとても好きだから後悔することはないよ。他の女性には興味がないし。」
「それはどうだろうな?美人が目の前に出たら目移りするんじゃないか?そうじゃないと良いけどな。」
ジョンが言った。
「ジョン、トーマスに失礼よ。そんな人じゃないわ。」
カロリーナが言った。
「ジョン、ヘザー、君達はどこで知り合ったんだ?」
「俺達は飲み屋で知り合ったんだ。最初に声かけたのは俺の方からだったけどな。」
「最初はあまり相手にしてなかったのよ。だんだん会うにつれて気になってしまったのよ。」
「そうなのか。どこか好きなんだ?」
「何だかんだセクシーな所よ。あとは身体の相性が良いことね。」
「そうだな。」
ジョンとヘザーはお互いキスをしながら笑い合った。
「文通って喧嘩とかすることあるの?」
「今までそんなことは無かったけど、返信が待ち遠しく感じる時は多々あったよ。」
ポストでやり取りしていたことは特に話さなかった。
彼は気になって鳥の巣箱を開けてみた。するとまたメッセージが入っていた。それを家に持ち帰って読んだ。
「私は知っての通りヘーゼルよ。あの女に気持ちがまだあるのが許せない。私がこんなに愛しているのに。それに何で私のメッセージに返事をしてくれないの?私はトーマスのことをずっと見ているのに。ねえ、早く返事してよ。あのノヴァと言う女からのメッセージは全部私が処分していたからさ。」
また次の日も公園の鳥の巣箱を開けると同じ女からメッセージが入っていた。またメッセージを読んだ。
「トーマス、あなたのことをずっと見てる。あなたのことよく知ってるんだ。例えば重大な秘密とかね。どんな隠し事をしているのか知ってるんだ。」
ヘーゼルからのメッセージを見て、彼の身体は冷たくなった。
「隠し事ってまさか違うよな。」
また次の日もメッセージが入っていた。
「トーマス、今日もあなたのことを見てる。こんなに愛しているのに一通もメッセージを送らないなんて酷いね。トーマスはノヴァのような女じゃなくて私と結ばれるべきなのに。でももう良いわ。私はトーマスの秘密を知っているから。同じルームメイトを階段から突き落としてその死体をどこかに隠してることをね。」
手がかりがなかったのでトーマスは焦るばかりだった。
「どうしてだ。誰も家に入った気配なんて無いのに。この家は人の出入りが激しいのに。」
さらに彼はメッセージを声に出しながら読む。
「この前彼の養母が家に来た時すごい焦ったような感じだったわね。本当にバレそうで焦っているのね。でも大丈夫。私がいる限りはその秘密がバレることは無いから。」
彼が部屋を出ると呼び鈴が鳴った。すると警察が数人いた。
「警察です。ローガン・ニクソンさんが行方不明になった点でいくつか捜査をお願いしたいです。」
警察はトーマスを押しのけていえにあがりこんだ。
「何ですか?うちには何も手がかりなんてありませんよ。」
「行方不明になる前に何かローガン・ニクソンさんと口論することはありましたか?」
「そんなことありません。」
警察が隅々捜査するので彼の心臓はバクバクした。
「ここがローガン・ニクソンさんが使ってた部屋ですか?」
「はい。もう帰って来る気配が無いので新しいルームメイトに部屋を貸してしまいました。」
「トーマス、何で警察がいるんだ?」
「俺が聞きたいくらいだよ。」
警察は他の部屋もくまなく調べた。
「トーマス、これはどういうことだ?」
ジョンが聞いた。
「お前らがこっちに来る前に前のルームメイトの一人が行方不明になったんだよ。それで家宅捜索されてんだよ。」
「マジかよ。何でそう言うこと先に言ってくれなかったんだよ。」
「話すと不安になると思って話せなかったんだよ。」
「早く警察消えてくれないかな。」
「そうはいかないんだ。」
警察は書斎の方に向かう。
「何をそんな見てるんですか?」
トーマスは本棚を見る男性警官に言った。
「何だか気になることがあって。」
警官はずっと本棚を見た。彼の冷や汗は止まらない。
「この本棚は元々あったものですか?」
「はい。元々ここにありました。」
「分かりました。昔の本がこんなにきれいに保管されてるのにビックリしたんですよ。」
「そうでしたか。」
「良いものを見せてくれましたね。」
警官達は捜査を終えて家を出て行った。
「やっといなくなったな。」
「皆には話してなかったが、前ここのルームメイトが行方不明になったんだ。」
「え?それって大丈夫なの?」
「ノアも俺もアイツとは連絡が取れないんだ。」
「早く解決すると良いわね。」
カロリーナが言った。
彼は疲れたのでベッドの天井を眺めた。
「あんたは出来損ないなのよ。」
ヴィオラは親に毎日酷い言葉を投げかけられた。
「勉強が出来なければ私は必要のない存在なんだね。だったら楽にしてやるよ。」
彼女は父親と母親をナイフで滅多刺しにした。
「お父さん、お母さん、これで楽になれるね。これで出来損ないの面倒を見ないで天国に行けるね。」
少女は一人で運転して、血まみれの2人の死体を山に持って行った。そして大きなスコップで埋める。どんどん掘って行くと何かにぶつかる。
「ん?もう既に2人先客がいるんだ。」
彼女は既にある2つの死体の隣に両親の血だらけの死体を埋めた。
「父さんと母さんも仲間入りだね。」
どんどん土をかぶせて行く。姿は見えなくなって行く。
「じゃあね。これで私の面倒を見なくてすむよ。今までありがとう。」
彼女は土に埋まってる両親をの方を見て、大声で笑った。
「ハハハハ、もう笑いが止まらないよ。」
彼女の笑い声はどこまでも響き渡った。
「雨だわ。」
雨はどんどん強くなった。少女は家に帰宅して、家の地下に行った。両親の写真をスコップで叩きまくった。そして大声で笑う。
「トーマス起きろ!」
彼は夢を見ていた。
「何だ。夢か。」
彼は夢の中で少女になっていた。ヴィオラと言う知らない少女に。
「お前がこんなに寝るとか珍しいな。いつも早く起きてるのにな。」
ジョンがトーマスに言った。
「多分昨日警察が来て疲れたんだよ。ベッドに横たわっても中々眠りに入れなかったから。」
「俺も疲れたけどな。また連中が来ないと良いな。」
「もう来ないだろ。」
来ないほうが彼にとっては好都合だ。ローガンの死体を埋めていることがバレてしまうかもしれないから。
彼はヘーゼルを拒絶するような文章を書いて、公園の鳥の巣箱の所まで行った。するとまたメッセージが入っていた。家に帰ってそのメッセージを読む。
「私はヘーゼルよ。少し考え方が変わったの。ノヴァと言う女がいる限り私は幸せになれない。ノヴァのことは私が誘拐して監禁した。もし助けて欲しければ、私と会いに行って付き合うことよ。そしてその女を目の前で殺す。最高でしょ。」
彼はメッセージを床に落とした。




